第12話 泥棒さんは働きたい
泥棒さんが家に入り込んでから次の日
あったことをそのまま楓花ちゃんに伝えた
「つまり泥棒してたのは、セキュリティ強化のためってこと?そんな悪役ヒーローみたいなの現実にいるんだね〜」
風船ガムを膨らませながら
椅子にもたれる
悪役ヒーロー、響きかっこいいな!
「そんなヒーローだなんて照れちゃうな〜」
後ろから声がして
私はビクッ!と震え、楓花ちゃんは風船ガムが破裂する
「な、なんでここにいんの……泥棒」
振り向いた先には
何故か本屋の制服を着てる泥棒さん……
琴音さんがいた
「なんでって、あたしも店員だからにきまってるじゃーん?」
クルッと一回転して決めポーズをする琴音さん
「はぁあぁああああ?」と楓花ちゃんが少し声を荒らげる
私もスマホで『なんで!?どうして!?ホワイ!?』と打つ
「楓花っちのママンにお願いしたらすぐ入れてくれたよ〜☆今日からよろしくね2人とも!」
「いや、それでなんでうちの店員になるんだよ!」
「決まってんじゃ〜ん、柊奈っちのこと気に入ったからだよ」
私の後ろからハグをして軽く頬ずりをしてくる
き、気に入ったって、文字通りの意味?
そんな気に入られるようなことしたっけ…?
「尚更意味わかんねぇ…」
「このあたしを2度も捕まえたのなんて柊奈っちしかいないからね!だから気に入ったの!」
「あーそーゆー……ってか、柊奈から離れろ」
グイッと手を引っ張られ
楓花ちゃんの方に座ると
琴音さんは無言でグイッと私を引っ張り
またハグをしてくる
な、なんかやけに密着してくる……?
こんなに近いと少しドキドキしちゃうな
と私がオドオドしてると
明らかにイライラしてる楓花ちゃんはまた私を引っ張ろうとする
「はっはーん?なになに、もしかしてそーゆー?」
「……………なにが?」
「あっはは!わっかりやすーい!ここ来て良かったかも〜!」
何が何だか分からず
交互に2人を見てると
「……まあ、母さんが認めたならうちに拒否権ないか……悪いことしたらしばくからね」
「だいっじょーぶ!こう見えて根は真面目だからさ☆」
「それ自分で言うことじゃないでしょ」
喧嘩しそうだったけど仲直りしたっぽい?
なんで私を1回取り合ったのかは謎だけど
賑やかになるなら私は大歓迎だ
『よろしくね琴音さん!』
にこにこ顔でスマホを向けると
琴音さんは「ほんと君面白いね」と笑った
琴音さんの仕事っぷりは
フランクに「推理小説?ならあっちにあるよ!取ってこよっか?」と接客をしたかと思えば
子供達には無邪気に「本屋で追いかけっこする悪い子はおしおきだー!」とはしゃいでいる
本屋としてあんまりよろしくはないかもしれないけど
これはこれで面白くて楽しい本屋になってるきがする
「上手くて腹立つ……」
『凄いね琴音さん!』
「ふっふーん、でしょ?」
「んま、真面目にしてくれることだけは分かったよ」
ドヤ顔の琴音さんが可愛くて
私は思わず琴音さんの頭を撫でてしまう
「え、なに?どったの柊奈っち」
『あ、ごめんなさい、可愛いなって思ってつい……』
「……あー……楓花っちの気持ち分かる気がしてきた」
「でしょ」
『??なにが???』
「なんでもないよ、おませさん」
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