声をなくした私と驚かせたい幽霊さん達のハーレム同居生活
六道 傑
第1話 幽霊さんは驚かせたい
田舎の隅っこにある一軒家
そこには、自殺をして怨念のある幽霊が出るという噂がある
「ほ、本当に来ていいのかよ?」
「ビビってんのか?こんなのでまかせだって!」
二人の男が、夜中懐中電灯を照らし一軒家に入ろうとする
「あ?空いてんじゃん、幽霊いますか〜?」
「なんだよその問いかけ!それで出たらどうすんのって……」
【誰だ……】
「ん?お前なんか喋った?」「は?お前じゃねえの?」
【出ていけ……】
男達の顔が青ざめる
目の前には白装束の女がいたのだから
【出ていけ!!!!】
「「ほ、ほんとにでたぁ〜〜!!!」」
男たちはビビり、地面の石に足を滑らせながら全力疾走した
【………フフフ・・…クスクス((( *艸))クスクス】
その日から、噂はどんどん広まった……
……その数日後。
「本当に住むの?職業柄、あんまり言いたくないけどさ、安いとはいえオススメできないよ」
眼鏡をかけた不動産屋が不機嫌そうにそういった
それもそのはず、興味本位で来た人達は
ことごとく一日でリタイヤするのだから
それでもーーー私は頷いた
「そう?言っとくけど、明日来てもいないからね?本当にいいんだね?」
激しく首を縦に振る
「じゃあ……ここにサインして」
高津柊奈(たかづひな)。紙にそう書いて提出した
家賃半額のたった2万円!
そんなありえないレベルの魅力ある話に惹かれて
一人暮らしを始めた
不動産屋さんから一軒家はバスで1時間かけて着いた
窓から見る景色はほとんど田んぼと草で
のどかな所なのだと自覚する
幽霊が出る一軒家か……
私は幽霊なんて信じてないけど
多分…大丈夫だろう
バスから降りても10分ほど歩き
伸びきって垂れ下がった草達を掻い潜ってようやく着いた
今度外出る時はバス停表を貰わなきゃ……
4時間に1本って本当なのかな……
そんな考え事をしながら
ガラガラと、古びた引き戸が嫌な音を立てる
中はかなりスッキリしている
入ってすぐ右にはトイレとお風呂一緒の部屋
ちょっとした廊下を進んで
広々とした畳のある和室……以上
間取りは教えて貰ってたけど
思ったより狭い…けど仕方ないよね
キャリーケースを開けてまず最初に日本人形を取り出す
子供の頃から大好きな相棒だ
この子の着替えや髪を梳かすのが大好き
とりあえず敷布団を敷いて枕元に寝かせておこう
必要最低限の着替えもカラーボックス3つに分けて
あとは明日、業者から机とテレビを持ってきてくれるのを待つだけ
長旅で疲れちゃったし……ちょっと寝ちゃおうかな……
【……け】
なにか聞こえて目を覚ます
やば……もう夜中だ……
寝過ごしてしまった、また寝れるかな
【……ていけ】
気のせいじゃない
誰かいる
ま、まさか本当に幽霊……?
【出ていけ!!!】
激しい物音と共に白装束の女の子が私の目の前に現れた
ほ、本当に出たぁ〜〜〜!!!!
驚きのあまり、ポカンと口を開けて見つめてしまう
髪が乱れてるけど、顔立ちは妙に……
……あれ、この子
可愛い……
【……おい、なぜ驚かない?】
え、あ、驚いてたつもりなんです……
どう伝えようか迷ってたら
【まさか耐性があるのか?】
私はすかさずスマホを取り出し
『驚いてはいました!びっくりです!』という文を幽霊さんに見せる
【なんだお前、口というものがあるのだから喋ればいいだろう】
……それは出来ない
『ごめんなさい。私、喋れないんです』
これが
声をなくした私と驚かせたい幽霊さんの
不思議な同居生活……
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