【おまけsepuluh】 独学ってスゲーや!

 ラストに近づいてきた。

 小雨さんはここまで掠りもしていない。

 が、かなり良いところまで来ているように思える。

 最初の頃に比べるとバットの振り方が様になっているというか、上手くいけば当てられそうな気配がしていた。


 ……まさかな。


 たぶん、あと二球というところだろうか。

 見守っていると、超スピードの球がモンスターマシーンから放たれ0.2秒で到達――お?



『バシッ』



 そんな風を切り裂くような音がした。ボールがほんの僅かに触れていたんだ。



「おぉ、小雨さん! あの300km/hのボールに触れたっぽいぞ!」

「う、うん! 偶然かもだけど!」



 これなら次は打てるかもしれない。

 ホームランは不可能だとしても、ヒットすれば十分すぎる。



「がんばれ、小雨さん!」

「たぶん、これがラスト。打ってみせるよ……!」



 またプレイ料金を払えば挑戦できるのだが、そういう問題ではない。このラストで打ててこそだ……!


 祈るようにして見守っていると、ボールが放たれた。

 相変わらず目にも止まらぬ弾丸ボール!



 小雨さんはバットを振る!



 これはいけるか!?




「てやっ!!」




 本気でバットを振る小雨さん。


 次の瞬間……



『……キィィィィン!』



 ボールが高く舞っていた。おっ、ヒット!

 ホームランとはいかなかったが、まさかの300km/hを打ちやがった!


 す、凄いぞ!!



「おぉ、あのギャル姉ちゃん、300km/hを打った」「やるなぁ!」「あんな細腕なのに」「すげえ~」「かっけなぁ」「300km/hって打てるものなの!?」「マジで凄い。天才」



 と、周囲の客たちも絶賛していた。

 ああ、確かにあのバケモノみたいな大砲ボールをよく打てたものだと思う。たぶん、小雨さんはなにかで鍛えていたんだな。



「やったな!」

「うん、奇跡的に打てた」

「実力さ」

「そうかなぁ」

「そうだよ。小雨さんの実力だよ」


「最近、ヨーチューブで体の鍛え方とか独学で習っていたんだよね。それで力がついたのかも」



 まさかの独学!?

 てっきり、ジムとか通っているのかと思ったが……金がかかるよな。確かに、ヨーチューブなら格闘講座やらタダで見れるし。しかも、プロが投稿していることも多い。

 そりゃ、独学の方が安上がりでいい。

 俺もそうしようかな。



「驚いたよ。そんな方法があったとはね」

「霜くんもヨーチューブで学ぶといいよ!」

「ああ、そうするよ」



 独学なら、300km/hも打てるってことを学んだ。いいね、俺も動画で知識や体力をつけていくか。


 バッティングセンターを去り、そのままゲーセンに寄った。

 ついでに遊んでいけるのは助かるぜ。


 ここからはクレーンゲームでもやるか。

 いろいろ取って小雨さんにいいところを見せてやるさ。ここからが本当の戦いだ。

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