【おまけdua】 犯してバラバラに……
古瀬刑事の車は山奥へ向かっていた。
病院周辺を捜索していたが、不審な車を見たという目撃情報を得た。それが山の方面だった。
事件に巻き込まれているとしたら、その車が怪しい――と、古瀬刑事は言った。言い切った。
プロの勘を俺は信じたい。
「……宮藤先生とはね」
「え、古瀬さん知ってるんです?」
俺が聞くと、古瀬さんはうなずいた。
「ああ、幼馴染なんだ」
「「ええっ!?」」
俺も小雨さんも驚いた。ま、まさか幼馴染なんて……そんな偶然があるのかよ。
「なんてことだ。まさか事件に巻き込まれるなんて信じられない」
「俺のせいだ。俺が溝口なんかと関わったばかりに」
「いや、悪いのは犯罪者だ」
古瀬さんはそう断言して車を加速させていく。
どんどん山道に入って路面も悪くなっている。ガタガタと揺れる車体。振動も激しくなっていた。
……う、酔いそうだ。
そんな中でも俺と小雨さんは外を見つめた。……といっても、暗闇すぎてなにも見えない。けど、不審者がどこかに停まっているはずだ。
蟻一匹も見逃すわけにはいかない。
闇が続く中。
急に音が響いた。
こ、これはスマホの着信音か。
俺ではない。となると小雨さんが古瀬刑事ものだ。
「あ、あたしじゃないよ?」
小雨さんではない。
ということは、古瀬刑事!
「……っ!」
急ブレーキで停まる古瀬刑事。俺たちは反動で飛ばされそうになるほどだった。……急になんだ!?
「どうしたんですか!?」
「すまない。今……宮藤からラインが届いた」
「え?」
「メッセージによると、目を覚ましたら山らしき場所にいたらしく……今隙を見て逃げていると。助けて欲しいと言っている」
まさにSOSのメッセージ!
というか、こんな山奥でも電波が届いているんだな。最近は普通か。
そしてやっぱり、宮藤先生は拉致されていたんだ。たぶん、溝口かその関係者に!
「そんな……早く見つけださないと!」
小雨さんの言う通りだ。
「古瀬刑事、急いで!」
「そうだな。近くにいるはずだ」
車は再び動き出す。
そんな中で俺は冷静に考えた。ふと思った。
……そうだ!
電波が届いているのなら、位置情報だって使えるハズ!
「古瀬刑事! 位置情報を送ってもらうんですよ!」
「……!! そうか、相良くん。名案だ!」
再び車を停める古瀬刑事は、メッセージを送り返していた。位置情報を送るようにと。
これで宮藤先生の位置が分かるはずだ!
……しばらく待つと。
返事が返ってきた。
位置情報だけの内容が。
「かなり近いぞ!! 相良くん、小雨さん掴まっていてくれ!」
急発進する古瀬刑事。この先らしい。
ぶぉんと加速する車は、その位置情報まで走っていく。やがて見えてきたスマホの明かり。あれはまさしく宮藤先生!!
「あ、先生だ!」
小雨さんもハッキリ捉えていた。
すぐに車を降りようとしたが、背後からも何者かが迫っていた。……ヤツが宮藤先生を拉致った犯人か!
その瞬間、宮藤先生はスタンガンらしきもので気絶させられていた。
「……このアマァ!! 逃げ出しやがって!! 犯してバラバラにしてやるつもりがよォ!!」
乱暴な声が響く。
……男の声だ。
しかもこの声はまさか……!
【つづく?】
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