王位継承権の無い僕は、なんやかんやあって騎士団に入団して、無敵でクールな女騎士に恋をする
るーく
第1話 王位継承権のない王子
僕の名前はクルト。15才。
女王制の国、バーンライルで生まれた王子。中肉中背。特に特技も特徴もない。
母は女王のディアナ。聡明で平等で威厳があり、その美しい美貌はとても二人の子供を産んだとは思えない。
父は女王を守る騎士団の団長であるゲオルグ。背が高くていかつくて筋肉モリモリ。パッと見は山賊にしか見えない、と誰かが言っていたが、女王である母の婿を決める剣術大会で優勝した、一騎当千の剣技とリーダーシップと男らしさはとても誇らしい。
2才下の妹はソフィア。黒髪で前髪ぱっつんのロングヘアーで、背は小さい。
まだまだ遊びたい盛りの時期なのに、次期女王になるのは自分だからと毎日勉強に作法に学ぶのに忙しい。責任感のあるところは母似だが、兄としてはもうちょっと子供らしくしてもいいんじゃないかと思うところはある。
僕はどうあがいてもこの国では王にはなれないので、王子だとしても特に教育とかを施されたりはしない。
最低限の読み書きや計算、護身術くらいで、10才以降は何もない。あとは自由。
無駄に広い城内をウロウロ散歩したり、中庭の日が差す芝生で昼寝をしたりして時間を潰す。
たまに城内の図書館で本を読んだりもするが、継承権のない王子が読める本には制限がある。
自分の部屋も父や母や妹たち家族の部屋からは離されているし、狭い。王族らしい飾りや壺や絵などもない。机、椅子、ベッド、本棚、それだけだ。
食べるものも家族に比べたら使用人が食べる料理と同じで質素。時間になったら部屋の前に置かれ、食べ終わったら食器を部屋の前に出しておくといつの間にか回収されてる。
息苦しいかと言われれば、そうかもしれないけど、もう諦めてるし、小さい頃から何も感じない。
さきほど冒頭で母は平等だと評価したが、この国の元老院、つまりは国を運営する組織があり、そこで決定したことは女王の母でも従うしかない。
女王の権力だけでは覆せない決まり事も多い。
元老院は助言機関といいつつ、裏で国の政治を操っているといっても過言ではない。
実際に元老院の人たちを見たことはないが、見たことある人の方が少ないらしい謎。
その中でも、僕にとって人生を左右する一番重要な決まりといえば・・・
「兄上ではないか」
ボーっと考え事をしながら歩いていると、前から妹のソフィアが声をかけてきた。
我が妹ながら今日も可愛い。僕はシスコンではない。ないはず。
だがその声色は低く、僕を見る目は鋭くて、軽蔑していて、心に刺さる。
僕は努めて冷静に返事をした。
「やあ、ソフィア。今は休憩時間かな?」
「ふん、継承権のない出来損ないの兄上には関係ないであろう」
「・・・ごめん」
「言い返しもできないのか!腑抜けが!あと3年も待たずにさっさと城を去るがよかろう!」
ソフィアはしかめっ面で、そのまま僕の横を通り過ぎて行った。
お付きのメイドが口元を手で隠しながら、嘲笑しているのが分かった。
ふう。心の中でため息をつく。
もういつものことで慣れたはずだけど、大好きな妹に罵られるのはしんどい。
そして妹が言っていたこと。
3年後、つまりは18才になったら僕は王族では無くなり、この国から出ていかなくてはならない。追放だ。
この国の王族に生まれた王子は、昔からそういう決まりがある。
別の国に行き、世間知らずの僕は一体どうなってしまうのだろう。
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