第6話消えゆく記憶の中で

第6章:消えゆく記憶の中で

夕暮れの公園。落ち葉がカサカサと音を立てる中、僕たちはベンチに座っていた。

「昔、ここでたくさん笑ったよね」と僕が言うと、葵は小さく頷いた。

でもその瞳はどこか遠くを見ているようだった。

「どうして私、こんなに忘れちゃうんだろう……」

彼女の声が震えた。

僕は手を握り返し、必死に言葉を紡いだ。

「忘れても、僕たちの思い出はここにある。心の中にある。消えたりしないよ」

けれど僕もわかっていた。

どんなに願っても、彼女の記憶は確実に失われていくことを。

その夜、僕はひとり涙をこらえながら、彼女との日々を書き続けた。

記憶を失っても、僕の心だけは彼女を忘れない――そんな約束を胸に。

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