第4話揺れる想いと孤独

第4章:揺れる想いと孤独

夜になると、僕はいつもひとりでノートを書いた。

今日の葵の様子、言葉、笑顔――全部を残すために。

けれど、記憶が消えていく彼女の姿を見るたびに、胸が締めつけられて息が苦しくなる。

「なぜ、こんなにも優しい君を、どうして僕は救えないんだろう」

自分を責める気持ちが止まらない。

僕はただ、君の手を握って、声を聞いて、そばにいることしかできない。

葵が僕の名前を呼べなくなった日、世界が静かに崩れた。

それでも僕は諦めない。

君がいなくなるその日まで、必ず一緒にいると誓ったから。

「覚えていてくれ、僕の全部を」

ノートにそう書き込み、ペンを置いた。

涙はもう枯れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る