(3)

「何で、生きてる一般人を、私らでも防御魔法かけなきゃ迂闊に入れねえような場所に放置プレイするんだよ⁉ あんた、自治会長と市会議員を、死ぬ方が、まだマシな目に遭わせる気か⁉ あんた、あの2人に何の怨みが有るんだ⁉ あいつらに親でも殺されたのか⁉ それとも恋人でも寝取られらのか⁉」

 とりあえず、ラビット・パンダの爺さんと交渉を終えたアイーシャに事の経緯を説明すると……数瞬だけ唖然とした表情になり……段々と「悪魔さえ恐れる怒りの戦神」のよ〜な表情へと変わり……そして……飛んで来たのは罵声。

「仕方ねえだろ、途中で……あいつに出喰でくわわしちまったんだから……」

「カマルのあねさんの事?」

 この町の冒険者ギルドのメンバーは、例え自分が齢上であっても、聖女騎士カマルの事を「あねさん」と呼ぶ事が多い。

 実力に対する敬意リスペクトと……の2つの理由で……。

 いや、あの聖女騎士サマは良いヤツだ。どんな聖人君子でも、どんな極悪人でも、本人を知ってる奴なら、良いヤツだって言う筈だ。天使と魔性だって、あの女が良いヤツだって事に関しては意見が一致する筈だ。

 ただ、って、たった1つだがムチャクチャ重大な問題が有るだけで……。

「マズいよ。あのあねさんが、この件に絡んだら……何が起きるか知れたモノじゃない……」

「ああ、そうだな……」

 ところが、何故か、今度はサファルが「アチャ〜」って表情になり、顔に手を当て……。

「あの、町で情報を集めてきましたけど……」

 その時、ジブリルの声。

「どうだった?」

「クロちゃんの目撃例なしです」

「ああ、畜生……」

「ただ、変なんですよ……」

「だから、どこが、どう変なんだよ? お前の言い方は、いつも、まわりくどいんだよッ‼」

。人目に付く所でやったんなら、普通は噂になっても、おかしくないし、第一、官憲にも捜索願いとか出てないみたいなんですよ……クロちゃんは、いつ、どこで、どんな状況で、あの2人を誘拐したんですかねぇ?」

「クロちゃんを探す話と何の関係が有るんだよ、それ? 気になるなら、クロちゃんを見付けてから本人に聞きゃいいだろうがッ‼」

「はぁ……」

 畜生……。

 どいつも、こいつも……腹の底では俺を阿呆だと思ってやがる。見下してやがる。パーティーのリーダーの筈の俺の事を「担ぐ神輿は軽い方がいい」ぐらいに思ってやがる。

 クソ……。何とか、この件を……俺が、逆に、こいつらを見下せるような形で解決出来ねえものか……。

「あのさ……あたし、クロちゃんが、どこに行ったかの心当りは無いけど……クロちゃんが、どこに行ったか心当りが有るかも知れない人なら……心当りが有るよ」

 突然、サファルが、そんな事を言い出した。

「おい、何で、最初に、それを言わねえッ‼」

「ってか、みんな薄々気付いてると思ってたんだけど……」

「わかんねえよッ‼ 誰だよ、それッ?」

「聞いたら後悔すると思うけど、いい?」

「あのな、すげ〜金になる依頼を解決する情報を聞いて、ど〜して後悔するんだよ⁉」

 サファルは……自分の心を落ち着けるように、目を閉じて……深呼吸。

「仕事が無い時に、クロちゃんって、誰と一緒に遊びに行く事が多いか知ってる?」

 ……えっ?

 ……いや……待て……まさか……?

 ああああ……。『言いたい事が有るんなら、はっきり言いやがれ、このメスガキっ‼』と叫びたいのに……俺の中の何かが邪魔をしている。

「カマルのあねさん」

 馬鹿野郎ッ‼ 心の準備が出来る前に正解を言うんじゃねえッ‼

 くどいようだが、この町の冒険者ギルドのメンバーは、例え自分が齢上であっても、聖女騎士カマルの事を「あねさん」と呼ぶ事が多い。

 くどいようだが、実力に対する敬意リスペクトと……恐怖の2つの理由で……。

 だが……1人だけ例外が居る。いや、1人と言うよりも、1竜と言うべきか……。

 脳天気さに関しても、この冒険者ギルドのメンバーの中では有数のクロちゃんは……聖女騎士カマルの事を「カマルちゃん」と呼んで……妙になついていやがった。

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