第1話 幼馴染
ーーー真っ白な画用紙を開く
「てめぇの天下もこれまでよ……!」
ガタイの良い茶髪、身長2mに達そうかという巨躯の男は目の前に立つ男にそう言った
ーーー手元には画材、今は軽く描くだけなのでパステルでいいかな
「俺がいつ天下をとったと言った……?」
相対する男も茶髪の大男までとはいかないが身長は高い
髪は色素の抜けたグレー、肌も白い
これだけ聞けば温室育ちと思えるがその体は日々鍛錬の賜物
無駄のない鍛え方をした芸術品と呼べる程の逸材だ
「俺も鍛えに鍛えたぜ……!」
対する大男、太い腕に力を入れる!
するとはち切れんばかりに筋肉が盛り上がり力瘤を作り出した!
「てめぇと俺は生涯のライバル!
そんなテメェが“高校最強”なんてものを掲げられちゃ捨ておけねぇだろうが!」
「全く……
俺が個人の部を優勝したからといって……
少し灸を据えねばならんようだな」
二人とも僕の幼馴染だ
大男の方が
身長に関しては触れたけど、体を鍛えるのが趣味で身体は筋肉でできていると言っても過言じゃないね
2mに達するその高身長はバスケにバレーに何でも蓮司を無条件で高みに連れていくのだ
スポーツと名のつくもので蓮司の右に出る者はそうそういない
そして高校最強の異名を持つ僕の二人目の幼馴染
嫌味のないイケメンで中学の時はファンが沢山いた
家が古武道の道場をしていて、その流れで空手部に入部したらあれよあれよと中学高校共に大会で優勝する程だ
そう、僕の幼馴染は天才なのだ
「何をしてるんだ?」
僕の後ろから1人の女生徒が声をかけてくる
「絵を描いてるんだよ」
その光景を見ながらパステルを画用紙に走らせる
「あいつらのか?」
「そ」
「課題じゃないのに、変なやつだな」
長い赤茶の髪の毛、それを長く伸ばして大きなポニーテールにしている小柄な女子
彼女が最後の幼馴染、僕らの紅一点
周囲にはどこから拾ってきたのか猫の群れがいる
「描きたい時に描く
絵描きの鉄則だよ」
「ふーん」
興味なさげに夏梅は猫の中の一匹を抱き寄せて隣に座る
過剰に構われるのを嫌がる印象がある猫だが夏梅に対してはその限りじゃなかった
喉を常にゴロゴロと言わせて夏梅に擦り寄っている
夏梅はどんな動物にも好かれていた
近所の有名な吠える犬にも
初対面の黒猫でも
雀や烏でも……
夏梅の手にかかればほぼ全ての動物が魅了される
それはある種魔法のような光景だ
「ずーっと描いてるな、ひじりは」
ひじり、それが僕の名前だ
「そりゃ、これで食べてく為に芸術科に入ったからね」
おがみ、もなんだか小さいっぽい名前だし
ひじりなんていうのも男らしい名前とは思えない
加えて顔も中性的ときたものだ
蓮司、劔岳、夏梅
才能溢れるこの三人に対して僕はと言うと……
こうして芸術科
取り分け絵画を専攻にしてる僕
だけど輝かしい履歴がある訳でもなかった
かすりもしなかった入賞
思い通りに描けない絵
華々しい三人に対して
僕は泥にまみれていた、と言っても過言じゃないだろう
「面白い顔をしてるぞ」
上から夏梅が体重をかけてくる
夏梅の頭に乗っていた猫が流れて僕の顔にへばりつく
「
「あはは、ばかだ」
そう言いながらケラケラと笑い転げる夏梅を見て僕も少し微笑む
3人と居る空間は大好きだ
だから僕は3人が行くと言った新羅を死に物狂いで勉強してどうにか合格した
3人は推薦だったけど……ね
「はっ!やるな劔岳!!」
「お前こそ一撃で倒れないのは褒めてやる!」
遠くでまだ戦って(?)いる2人を見て
ふとスマホに目をやる
「おお、予鈴3分前だ」
「教室までかなりここ距離あるよね……」
僕らは急いで2人を止めて教室にダッシュした……
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