第39話

「き、き、今日も! ま、まだ、ダメだからね!」


 という言葉と共に、アリアナが布団に潜り込み、眠りについていった。

 一応、俺がその気なら、いつでもアリアナの体を好きにすることは最初に対価として貰っている以上、出来るんだが……まぁいいか。

 それより、今日も夜の自由時間になった訳だが……外に出る前に、まずは昨日貰ったアリアナ暗殺の証拠品でも改めて見てみるか。

 よく見てなかったしな。


​───────​───────​───────


 そして、読んでみた結果……ぶっちゃけ読む必要なんて無かったことに気がついた。

 そもそも、ロードリオ家なんて言われても俺はその家がどこかなんて当然知らないし、誰かっていうのも当然……ん? そういえば、学園でなんかその名前を聞いたような​──まぁいいか。どうせ考えたって、俺は興味の無いことを覚えられるタイプじゃないし、無駄だ。思い出すことなんてほぼ無いだろ。

 

「スリープ」


 今日もアリアナの眠りを深くした。

 ただ、そのまま外に出れば昨日の二の舞になってしまう可能性がある。俺はアリアナと違ってちゃんと学習する悪魔なんだ。

 だからこそ​──


「悪魔召喚、ソー……あー、ケルベロス」


 ソールでも良かったんだが、あいつは人間……というか、俺たち悪魔以外に対して過激だからな。

 俺が命令したら平気だろうが、昨日みたいに誰かがここに来たら事故に見せ掛けてアリアナを殺したりしそうな可能性が少しでもある以上、やめておいた。

 ケルベロスなら、ちゃんと俺に対して怯えているし、犬だからな。命令をしっかり守りそうだ。

 いや、別にソールが俺に対して恐怖心を持ってないって訳では無いんだけどさ。まぁ、念の為だ。


「ッッッ!?」


 ケルベロスが俺の目の前に召喚されるなり、慌てた様子で起き上がり、頭を下げてきた。

 犬だから、伏せの体勢だな。


「なんだ? 寝てたのか?」


「は、はい。す、少しだけ……昨日、貴方様に名前を付けて頂いたお陰で、お、俺……わ、私の方から喧嘩を売らない限り、他の悪魔が殺し合いを仕掛けてくることが無くなったので、す、睡眠を取ってました。も、申し訳ありません」


「それ自体は別にいいんだが、悪魔だろ? 眠れるのか?」


「は、はい。俺……わ、私はこの形態故か、す、睡眠を取れるんです、よ」


 犬だからかね?


「そうか。まぁ、必要なわけじゃないんだろう?」


「は、はい」


「なら、今から俺は外に出かけるから、こいつを守っておけ。もしもこいつに何かあったら……分かるよな?」


「ッ」


 こくこくと全ての頭で素直に頷いてくれるケルベロス。

 

「こいつがもしも目を覚ましそうになったら、姿を隠せ。お前が何の属性魔法を得意としているかは知らないが、それくらいは出来るだろう?」


「は、はい。お、お任せ下さい」


「俺が帰ったら元の世界に戻してやる。頼んだぞ」


「は、はい!」


 よし、これで多少は安全になったな。

 後は俺の魔法もあるし、アリアナが殺されることはまず無いだろう。


 そう思いつつ、俺は寮を出た。

 

 とはいえ、今日は特にやることも無いし……昨日、俺が跡形もなく消し飛ばした跡地にでも行ってみるか。暇だし。

 犯人は現場に戻るっていうしな。


 転移で行けば一瞬だが、俺は人間の姿に見た目を変えてから、歩いて昨日の場所へと向かっていた。

 また歩いてたら悪意をぶつけてくれる良い奴がいるかもしれないからな。

 

「あ、あの!」


 そうして歩いていると、突然声をかけられ、肩を掴まれた。

 ただ、悪意は感じないから、つまらない要件なのは聞くまでもないこと……って、昨日もこんなことがあったな?

 なんなら、この声​──


「あなたは……確か昨日の方、ですよね?」


 ​──振り向くと、やっぱり昨日の男がいた。


「は、はい。や、やっぱり、ララドさんのことを知ってるんじゃないかと思って……」


 ララド……恐らく俺が一番最初に悪魔の世界に送った男、だよな?

 なんでこいつはそんなにもあの男を気にするんだよ。

 慕われるような男には見えなかったがな。


 ……ん?

 よく見ると、この男、瞳に狂気を宿してるな。

 ……ちょっと興味が湧いてきた。


「昨日も言いましたが、私はそんな方知りませんよ。ただ、今日は特に急ぎの用がある訳では無いので聞くのですが、何故その……ララド? さんを探しているのですか?」


「ぇ、えっと……お、お礼がしたいから、です」


 お礼……?

 ふむ。お礼か。どういう意味でのお礼なんだろうな。シンプルな意味なのか?

 ……まぁ、なんであれ、どうせもうそいつは生きてないから、無理な話なんだけどな。


「そうですか。……私も、もしもララドさんという方を見かけたら、あなたが探していたということを伝えておきますね」


「は、はい、よろしくお願いします」


 そこでその男と別れた。

 少し興味が湧いていたとはいえ……もうララドがこの世に居ない以上、狂気の理由を見ることも出来んだろうしな。

 知ることは出来るだろうけど……そこまでの価値は感じないわ。

 

 それより、平和だなぁ。

 裏通りの方では、昨日あんなことがあったっていうのに……ここら辺では騒ぎになったりしないのかね。

 別に俺としてはなんでもいいんだけどさ。

 それはそれで、面白いことがやりやすいって事だし。

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