第7話

「と、取り敢えず着替えるから! あんたは外で待ってなさい!」


 ベッドから降りることもなく、アリアナは勢いよくそう言ってきた。


「体を好きにしてよろしいのでは?」


 だからこそ、反発したくなってしまった。


「っ、こ、こんな朝からはダメに決まってるでしょ! こ、この発情悪魔!」


「酷いですね。私はアリアナ様の体をいつでもどこでも好きにしていいという条件で契約したのですが」


「い、いつでもどこでもなんて​──」


「言われていませんが、この時間帯はダメ、だったり、この場所ではダメ、などの条件は言われていませんよ?」


 顔を真っ赤にして、鯉のように口をパクパクとさせ、アリアナは黙りこくってしまった。

 ……こいつ、反応が本当に面白いんだよな。

 これも悪魔になって何千年と退屈な場所で生きた弊害かな。

 人間時代だったら……転生してすぐの頃なら、間違いなくこんな遊び方はしなかったと思うし。


「ふふっ、冗談ですよ」


 正直今までは悪魔の世界から見ることしか出来なかった学園の方が今は気になるから、俺は適当にそう言って最初に言われた通り部屋を出てあげた。

 

「ッ〜〜〜!」


 その瞬間、アリアナの声にならないような悲鳴が聞こえてきた。

 ほんと、面白いなぁ。


 内心でアリアナの反応に満足しつつ、俺はさっき言われた使い魔のことを考える。

 

 自分の半身……一体どういう原理なんだろうな。

 俺の使う魔法で再現出来るものなのかな。

 いや、そもそも、そういえばアリアナは人間なら誰でも、と言っていたな。

 ということは、人間以外の種族には使い魔というものは召喚できなかったりするのか?

 出来たとしても、かなり才能がいるとか……?

 仮にそうだとしたら、そのことがアリアナが白い目で見られる理由に更に拍車をかけているんだろうな。


 立場のある人間っぽいし、表立っては言われてないみたいだけど、陰ではアリアナ……どころか、あー、アリアナの家名ってなんだっけ。……まぁとにかく、アリアナの家の人間すらも実は人間じゃないのでは……? なんて疑われて家族ごと白い目で見られている可能性すらあるのか。

 なんとなくのイメージだけど、貴族は家の評判を死ぬ程大事にするっていうイメージが俺の中にあるから、俺の考えが合っていた場合、アリアナは家族からすらも白い目で見られている可能性もあるのか。


 ……まぁ、色々考えたけど、別にどうでもいいか。

 どっちにしろ、アリアナの発言的に俺が戦うことになるのは間違いないっぽいし、俺はただ楽しむことだけを考えよう。

 せっかく自由になったんだからな。


 そう思ったところで扉が勢いよく開いた……と同時に、アリアナが俺のことを殴りかかろうとしてきているのが見えた。

 ……貴族の令嬢がそんなんでいいのかよ。

 それに今どき暴力系ヒロインなんて人気でないぞ。……いや、別にこいつは俺のヒロインなんかじゃないし、いいんだけどさ。


「な、なんで避けるのよ!」


「全くこれっぽっちも、本当に驚くくらい痛くはなさそうでしたが、当たってしまうとアリアナ様の手が痛くなってしまうと思ったので、避けさせて頂きました」

 

 まぁとはいえ、当たってやる理由もない。

 アリアナの拳を避けた俺は、笑顔を浮かべながらそう言った。


「ッ、この、バカ悪魔! 発情悪魔! 早く行くわよ!」


 今更だが、罵倒されるのも何千年かぶりでいいな。

 悪魔の世界での俺は1度あいつらを分からせてからはずっと恐れられていて、罵倒をされたことなんて1度も無かったからな。


「な、何笑ってんのよ! 変態! さっさとついてきなさい! 役に立たなかったら、許さないんだから!」


 変態……そんなことを言われるのは心外だが、罵倒されるのだったりを心地良いと感じてしまうあたり、あながち間違っていないのが微妙なところだな。

 人間時代は全くこんなこと無かったから、何千年と生きた弊害であることは間違いないんだが……アリアナにこんなことを言ったところでって感じだよな。


「もちろん、ついて行きますよ」


 使い魔ってのが気になるし、ついて行かないはずがなかった。

 そんな存在が無くたって学園なんて面白そうな存在、今の俺が見逃すはずが無いんだけどな。





​───────​───────​──────

あとがき。

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