最強チート、需要ゼロのニッチモンスターと魔王討伐へ!

黒羽 透矢

第1話 転生したら「最強(ただし???)」でした

 俺の名前は篠原カケル、二十三歳、社畜。

 残業百時間オーバーの帰り道、トラックに撥ねられて──気づけば、謎の空間に立っていた。


 目の前には女神さま。なぜかリードを持っていて、先にはミミズみたいなヘビが首輪付きで絡まっている。


「……ペット?」

「違います♡」


 変な女神だ。でも──。


「異世界に勇者として転生させてあげます! 特典として“チートスキル”をプレゼント!」


 キラキラ笑顔でそう言われた瞬間、俺の脳内はテンプレ展開で満たされた。

 よっしゃ来た! 勇者無双コース!


「ただし条件付き! ちなみに、発動条件は秘密です♡」

「いや言えよ!」


 ツッコむ間もなく、光に包まれて転生完了。


 頭の中にスキル名が表示される。


【最強(ただし???)】


「説明文ゼロかよ!」


 ──目を開ければ、草原。


 剣も盾もない丸腰の俺の前に、いかにも雑魚そうなスライムがぷるぷると近づいてくる。最初の敵なら、まあこんなもんだろ。


「よし、テストだ! 最強スキル発動ッ!」


 思い切り殴った──。

 ゴッ!

 ……手応えが、石。


「痛ってえぇぇぇ!!」


 拳が真っ赤。スライムは元気にぷるぷる。


「いや硬すぎだろ……最強とは?」


 泣きそうになりながら、岩陰に腰掛ける。


 その時、足元にカサリと動く気配。

 よく見ると、紫色のハムスターみたいなモンスターがこちらを見上げていた。


 誰得なレア種族【ナユタマウス】。図鑑的には空気。生態不明。遭遇率0.01%の無駄レア。


「なんでこんなとこに……」


 目が合った瞬間──体の奥から力があふれ出す。


 全身が光に包まれ、筋肉が爆発的に膨れ上がる。

 気づけば、さっき殴っても倒せなかったスライムを片手で粉砕していた。


「え、ちょっと待て。これって……ナユタマウスが近くにいる時だけ最強?」


 ──判明。

 俺のスキル【最強(ただし???)】は、需要ゼロのニッチモンスターと一緒のときだけ“最強”だった。


 ……こんなスキルでどうやって生き残るかって? 俺にもわかんねぇよ。

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