20 デート
「ふーん、はなびちゃんとデートか。湊らしくない格好だけど、一応合格かな?」
「姉ちゃん……」
今日ははなびとショッピングをする日だから俺らしくない格好をしたけど、まさか姉ちゃんにバレてしまうなんて。
てか、なんでニヤニヤしているんだろう。
はなびもそうだけど、うちの姉ちゃんも普段何を考えているのかよく分からない。
「へ、変?」
「そんなわけないでしょ?」
「そう?」
「うん。青春だね、湊」
「うるせぇよ。じゃあ、行ってくるから……」
「はいはーい」
正直はなびと一緒にショッピングをするのは初めてだから、昨夜からずっと緊張していた。幼い頃と全然違うから何を話せばいいのか、どこに行けばいいのか、そういうの全然知らないからさ。
でも、一応今日行きたいって言われたから行くしかない。心の準備が全然できてないけど、行くしかない!
せっかくだから楽しもう。
「わあっ!!!!!」
そしてドアを開けた俺は隠れていたはなびにびっくりして、そのままドアに後頭部をぶつけてしまう。
そこにいたのか。返事が遅いと思ったら、ずっとそこに隠れていたのかぁ。
「あっ! だ、大丈夫!? 湊くん」
「う、うん……。い、行こうか?」
「ご、ごめんね……」
「いや……」
すると、白い何かが視界に入ってくる。今日のはなびはワンピースか、可愛い。
それに団子頭……! 今日力入れすぎじゃない!? はなび。
やばい、見過ぎだ。
「女の子をジロジロ見ないで早く行け! 湊」
「うっ……!」
後ろにいる姉ちゃんに頭を叩かれた。
「ふふふっ」
……
「今日の湊くん、いいね!」
そう言いながらさりげなく手を繋ぐはなび。
「そ、そう? ありがとう」
「カッコいい! えへへっ」
「あ、ありがとう」
てか、はなびと手を繋ぐのは当たり前のことになってしまったな。
そうしない方がむしろおかしいと思われるほど、何気なく俺の手を握るはなびだった。そしてこうやって一緒に外出するのは何年ぶりだろう。すごく懐かしい。俺がはなびとデートをするなんて。
「そうだ! 湊くん」
「うん?」
「先週、風邪ひいた私に好きって言った気がするけど、気のせいかな? ちゃんと好きって言ってた気がする」
「多分、夢だと思う。はなびすぐ寝たからさ」
「そうかな……」
「うん……」
小さい声で話したのに、それにあの時ちゃんと寝ているのをこの目で見たのに。
まさか、好きって言ったのを覚えているとは……。怖い。
実は俺も肯定したいけど……、心の準備が全然できてないから無理だ。はなびの前でそんなことを言うのは無理だ。好きだなんて。
「今日、洋服買うよね?」
「そうそうそう! それに下着も買いたい!」
「それは友達と一緒に来た時に買ってくれ」
「せっかくここまで来たから湊くんが選んで!」
「んなことできるわけねぇだろ!? はなび!」
「えへへっ、冗談でーす。うふふっ」
「まったく……」
そういえば女の子と洋服を買いに来た俺はここで何をすればいいんだ? 分からない。当たり前か、男の俺が女の子洋服に詳しいわけないから……。
そのままでかいショッピングモールに着いた俺たちはすぐあるお店に入った。
「こういうのはどー? 可愛くない?」
「それ短い」
「そう……? 可愛いのに……」
「ダメ」
「じゃあ……! これは? これ可愛いよね? 凪沙ちゃんがよくこんな服を着るから私も———」
「オフショルは露出度が高い、ダメ」
「ええ……」
できれば目立たない服にしてほしいけど、全部露出度が高い服だからダメって言っていた。彼氏でもない俺がこんなことを言ってもいいのか分からないけど、一応俺に聞いたから全部ダメって言った。
確かに佐藤と菊池はあんな感じで着るかもしれない。
でも、はなびはダメだ。短いスカートや肩が見えるオフショルはダメ……。
「むっ……! 全部ダメダメ! じゃあ、私は何を着ればいいの?」
「ううん……。俺はジーパンの方がいいと思う」
「あっ! それ月さんがよく着るよね」
「そう。はなびは可愛いから何を着ても似合うと思うけど、短いのはダメだ。とにかくダメ」
「むっ! 可愛いの着たい! スカート! スカートがいいの!」
「そんなにスカートが好きなのか?」
「そうだよ! それに……」
ちらっと周りを確認した後、耳打ちをするはなび。
その話を聞いて、すぐ彼女と距離を取った。
そしてショックを受けた俺はしばらくその場でじっとする。いくらなんでも何気なくあんなことを口にするとは思わなかったからさ。一体なんだろう、さっきのは。
「うん?」
可愛い顔をして首を傾げるな!
それに脱がせやすいとか、女の子がそんな恥ずかしいことをさりげなく口にするなよ!!! はなび———。と大声を出したかったけど、周りに人がたくさんいるからそれは無理だった。
どうして俺にこんな試練を……。
そもそもはなびはなんのために俺をここまで連れてきたんだ!?
「ダメ〜?」
「す、好きにしろ……。もうどうでもいい……」
「もしあの時が来たらジーパンを脱がすことよりこうやっ———」
すぐ口を塞いだ。そんなことよりこんなところで堂々と手本見せるなよぉ。
そんなこと知りたくねぇから。
「それ以上話さないで……」
「ううっ! うっ!」
「何!?」
「ううっ!」
「あっ、ごめん」
「ふぅ……。ひどーい! 湊くん」
「ごめん……。でも、はなびが変なことを言うから」
「私たちもう高校生だからね!」
「それと関係あるのか?」
「うん! 私、このスカートとオフショル着てみたい!」
「はいはい……」
そしてはなびが試着している間、俺は少し落ち着くことにした。
さっき受けたショックのせいか、頭の中に変なやつが入っているような気がする。
エロいこと考えるなよ! 湊。相手は幼馴染だ、相手は……幼い頃からずっと一緒だった幼馴染! てか、脱がせやすいとか、もしあの時が来たらとか! なんなんだよ。助けてくれ、姉ちゃん。
俺の幼馴染が変態になってしまった……。
「ど!」
「びっくりしたぁ。いきなり大声出すなよ……」
「ど!」
「短い!」
「感想それだけ!?」
「か、可愛い……」
チア服を着た時もそうだったけど、やっぱり可愛すぎる。
でも、他の男が見るのは嫌だからさ。怒りたいけど、怒れない。
「ぎゅっとして」
「嫌だ」
「チッ……」
「それが気に入ったら、行こう……。もうここにいられない。店員さんがずっとこっちを見ている……」
「エッチ……」
「ちげぇよ!」
……
「ああ……、疲れてしまった。何もしてないのに」
「もう疲れちゃったの? ダメだよ。下着買いに行こう!」
「…………」
「どうしたの?」
「俺、ベンチで待つから下着ははなびが適当に好きなものを選んで。てか、女の子の下着だから俺が一緒に行かなくてもいいだろ?」
「でも、湊くんに見せたいからね? 好み教えて!」
「…………」
そのまま持っていたショッピングバッグを落としてしまった。
どうしたんだろう、今日……何かあったのか!? なんであんなに積極的なんだ? よく分からない。マジで分からない。
一体なんなんだ……?! この状況は。
「えっ、あっ、うん……? い、いいよ! 俺はなんでも好きだから!」
変なことを言った自覚はある。でも、仕方がなかった。
いきなり好みとか聞くなよぉ。
「おっ! はなびちゃんだ」
その時、向こうから聞こえてくる菊池の声。
「おお! 菊池! 会いたかったぁ!!!!!」
「偶然だね」
「はなびショッピングしていたのか」
「おお、佐藤じゃん。ちょうどいいタイミング! あのさ!」
「へえ、今日可愛いね。はなび」
しかと!?
「何してたの? はなびちゃん」
「今から湊くんと下着を買う予定!」
「ちょっと! はなび!」
「ふーん」
いや、佐藤そんな顔するな。俺何もしてないから……。
「えっと、男子と下着を買うの……? 誰の下着?」
「私の!」
堂々と言わないでぇ。はなび……。
「ああ、そうなんだ! そういうことか」
全然納得してない顔で納得したように言うなぁ! 菊池!
「えっと、俺の話を少し聞いてくれませんか? みなさん……」
「よろしい、変態くん」
「俺はここにあるベンチで待つから下着は女子同士で……、買ってください。俺、そんなお店入れないからぁ……」
「でも、恋人同士で普通に行くと思うけど」
俺たちは友達だよぉ!!! はなび!!!
「確かに青柳くんにはまだ早いかもしれないね。顔、真っ赤になってるし」
「そんなこと言うな、佐藤」
「つまり! はなびちゃんは勝負下着が買いたいってことだよね?」
ふと浮かんだことだけど、俺はここにいてもいいのか?
なんか邪魔になってるような気がする。
「仕方ないね。じゃあ、湊くん! 私、二人とちょっと行ってくるからここで待ってて」
「あっ、うん」
「一緒に行きたいなら来てもいいよ」
「行きません……」
「ひん……。じゃあ、寂しくなったら電話して! すぐ来るからね!」
「子供かよ、一応分かった……」
そして耳元で囁くはなび。
「可愛いの買ってくるから期待……してもいいよ」
「んなことするわけないだろぉ!!! 早くはなびを連れて行ってくれぇ、佐藤! 菊池!」
「ふふっ♡」
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