中年“召喚士”やってます――現代ダンジョン攻略人生

高木喜高

プロローグ

二十一世紀の幕開けと共に、人類は想像を超える災厄に見舞われた。

突如として大地に口を開いた「ダンジョン」から、異形の怪物が姿を現したのだ。

当初は子供ほどの背丈の緑の怪物――後に「ゴブリン」と呼ばれる存在だけが確認されていた。


しかしそれは序章にすぎずやがて陸に、海に、空にまで魔物があふれ出し世界は暗黒時代へと沈んでいった。混乱の最中、地球に満ちる「魔素」の濃度は静かに高まり、一部の人類に異能を芽生えさせた。


彼らは常人を超えた力を手にしながらも恐れと差別の対象となり、収監され、監視されやがて反乱を起こす。

血と炎に塗れた戦乱の果て、異能者たちは徹底的に管理され、ダンジョン探索という名の最前線に送り込まれる存在となった。


異能者は大きく2つに分けられる。

生まれながらに魔素と共鳴し、幼少のうちに覚醒する者――ファーストコード。

成長してから後天的に覚醒し、波のように押し寄せる魔素に呑まれた者――セカンドウェイブ。


公式にはそう呼ばれるが、一般の人々は彼らを畏怖と嫌悪を込めてこう呼んだ。

「コード持ち」「ウェイブ落ち」と。


やがて、怪物を討った際に残される魔石が新たなエネルギー資源として利用され始め、人類はようやく再建の道を歩み出す。


ダンジョンを中心に築かれた街――ダンジョン街。

探索者を統括する組織――探索者ギルド。

ダンジョンはもはや、恐怖と同時に人類の生活を支える基盤となった。


ダンジョン発生から六十余年。

人類は二世代を超えてなお、異能者を使い潰しながら、かろうじて文明を維持している。そしてこの世界で、ひとりの探索者の物語が始まろうとしていた。

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