未来編 第3話 ガチェポン/忍法と罠
ガチェポンとは最新の上級魔法
ガチャから排出される武器にはレアリティがあり
冒険者の
A級の武器は希少性が高く性能も高いハイクラスなブランド物の武器も中にはある
BやC級の武器には魔法がかけられており長持ちしたり稀に属性を纏っていたりする
DまたはE級の武器は剣や盾ですらなく先頭に使用できるのかが曖昧で粗雑に作られていたりする
---------------------------------------------------------------------
まだ太れる男、ギガスはガチャガチャの機械を前にしてピコハンを構え考える
(E級の冒険者の俺は周りからすればハズレくじ...
一緒にクエストに行くヤツが一向に現れない訳だ...
魔王を倒すのにも金が掛かる...どうしたものか...)
アンナ・ギルバートは童心に帰って屈んではガチャガチャのツマミを回しては出てきたカプセルを開く
「またE級の武器だね...コレは使い捨てにすらならない...プラスチックの剣だ...バルーン剣よりはマシだけどさ」
「そんなにガチャガチャって面白いか?近くに武器屋もあるだろうに...そこなら確実に使える武器を買う事ができるよ」
「もぉ...ギガスさぁ...このまま私の機嫌が悪くなったら晩御飯のローストビーフはナシになるんだよ?
働き口もない行く宛てもない君を見かねて育ててる優しい
ドライな態度はナシよりのナシじゃない?
ガラにも無くロマンが無いことを言って悩んでないで...試しにガチェポンデビューしてみな?」
「正論を言われたし、ガチャ引くわ」
ギガスはポケットから取り出した小銭を機械の中に入れてツマミを回していく
(ハンマー出ろ...ハンマー出ろ...ハンマー出ろ...)
出てきたカプセルを開けると透明な刀身とSFチックな花の花弁のようなデザインの
「ハンマー?くそっ!!くそっ!!ハンマーじゃねぇ!?ハンマー出ないやん!!ハンマァァァ!!」
「そりゃ剣が折れた変な玩具みたいな武器をカッコイイと思う人達は居ないからねぇ」
「なんでや...大魔王の角を叩き折った俺の勇姿が文献に載っていないだけではなく...世界からハンマーの存在までもが抹消されているとは...」
「単純にヘンテコだからでしょ?折れた剣で満足する輩はアイスをドロドロに溶かしてから食べ始めるヤツより少ないよ」
ギガスはピコピコハンマーを取り出すと軽く回して構えてみせる
「こんなにカッコよくて単純に使い易い武器は他には無いのにな...このディア王国の民度も下がったものよ...」
「ギガスの頭が調子に乗って上昇し続けてるだけでしょ...上がり続けるのは国の税率だけで勘弁だから」
視線の端に裏路地から顔を出している忍び姿のポニーテール髪の女が居た
口元をマスクで隠しているが酒場でアラスと揉めていた女に違いない
(あの女は...んにゃろ...この前の決闘はアラスがギリギリで気絶したから事なきを得た物を...ん?)
ガチェポンをアンナに渡すと走り出す
「ちょっと向こうの方を見てくるわー...ガチャガチャ回して待ってて下さいよ...」
「ほーい」
紳士服に杖を着いた老人がアンナの肩に手を置いて諭す
「大人が長時間ガチャガチャをし続けるもんじゃないよ...子供に譲ってあげなさい...パルドゥン」
アンナは周りを見渡している
「えーっと...近くに子供は...居ないけど?」
「なら君が子供になるんだよ...パードゥーン」
老人が手に持っている不明なガチェポンを目にした途端、アンナの目の前の景色が黄と黒の縞模様に歪む
---------------------------------------------------------------------
裏路地を駆け回るギガスは仕掛けられたワイヤーの罠につまづくと勢いよく転倒する
ビルの隙間と隙間の壁に張り付いて此方を伺うクノイチが話し出す
「あの...なんのようですか...評議会の刺客でも無さそうなので殺しはしませんけど...」
「オマエを貴族の騎士から救った男じゃい...少し聞きたいことがあってな...この世界の歴史のこと...
特に俺の持ってる武器や異世界転生に関連すること...聞いても答えてくれるヤツが居なくてな.....」
「他の人に聞いて下さいよ...アナタは
(この女...俺を警戒しているのか殺気を隠そうともしないな...だが俺の歴戦の勘が言ってる)
ギガスはピコハンを構えて戦闘態勢に入る
「オマエは怪しいと...俺の中の俺が告げている俺のな...俺が力づくで聞き出すしか無いようだな...」
「俺俺うっせーなコイツ...オレオレ詐欺か?」
クノイチは舌打ちをすると手の平のガチェポンを起動させてからギガスの方に投げつける
数本のナイフが回転しながら飛んでくる
「ピコハン乱舞!!」
ギガスはピコハンを駆使して正確かつ俊敏にナイフを弾き落として凌ぐ
その動きはJapaneseオタ芸に近い
ナイフは地面に落ちるが気分は上がっていく
クノイチは忍び服の紐を引くと光学迷彩の様な技術で全身を周囲の風景に紛れ込ませ潜伏する
周囲に仕掛けられていたスプレー缶の罠から視界を制限する煙が噴出される
(しまった...相手は異世界とはいえ忍者...様々な狡猾な罠を張り巡らせて...俺を誘導していたのか...)
霧の先から飛んでくる円盤型のカッターはギガスの腕を斬りつけて向かい側のビルの壁に当たって割れる
「何個も...小さくした武器を携帯しているのか...無数の武器は何処から飛んでくるか分からない...」
ギガスは深く深呼吸すると目を瞑ってピコハンを振り回して周囲の煙を風圧で退ける
(静かなる《サイレント》ピコハン乱舞!!
この派手な動きはブラフ...本当の狙いは敵が何処に居るかを感知して仕留めること...俺も罠を張る)
霧の中から忍者服を着た女が飛び出してくる
「そこだ!!」勢いよくピコハンを女の額に直撃させると風船が破裂する音が聞こえる
(バルーンのダミー人形か!?)
背後から迫っていたクノイチは手に持ったクナイと手裏剣も無茶苦茶にギガスの背中に突き刺すと
再び、霧の中に消える
想定外のダメージの量にギガスは膝を着いて項垂れた声を上げる
「くそっ...NINJAが...ここまでやるとは...舐めていたな...もっと対策を立てるべきだったぜ...」
足に数本のクナイが刺さりギガスは身動きが取れなくなっていく
「今更、遅いんですよ...不思議な武器を使う転生者さん...アナタは知りすぎた上に我々に近づきすぎた...既に騎士との戦いからアナタの行動のパターンを計算した結果...
全ての感覚を研ぎ澄ませることでアナタの攻撃の起点は完全に読まれ避けられる...アナタの攻撃は...
私に当たることは無い...それが敗因なのです...」
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
ギガスは闇雲にハンマーを振り回すも
振り向くと目の前から刀身が電飾によって光り輝く忍者刀を持ったクノイチが飛びかかってくる
「コレで終わりです!!」
「ふ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ゙あ゙あ゙あ゙あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
ギガスは悪鬼の様な表情になると肺活量を活かした不気味な大声を上げる
街中に不愉快な成人男性の本気の鳴き声が響く
クノイチは耳を塞いで苦しむと
ギガスは逆手持ちをしたピコピコハンマーをアッパーの様に振り上げて目の前の女の顎に容赦なく直撃させる
新技ハンマーアッパーの衝撃によりクノイチの骨が砕ける鈍い音とピコハンから間抜けなピーという音が聞こえる
シャチホコの様に反り返ったクノイチは地面に頭をぶつけると泡を吹いて痙攣する
勝ち誇るギガスは倒れたクノイチを見下ろす
「悪いな...こちとら48回目の異世界転生...命懸けの状況なら...とっくに”対策済み”なんだよ...」
バタバタと足を動かしていたクノイチは白目を剥くと動かなくなった
ギガスは思う
(普通に負けそうだったからヤケクソで大声を出したら勝てたわ...ラッキーだったぜ...)
ギガスは背中と足のクナイをスポスポと抜いていくと傷口からボタボタと血が地面に垂れていく
「いって〜w結局ウォークライハンマー使わなかったし...余力を傷の再生に回すか...ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙」
ギガスは再生の激しい痛みからか荒い声を上げる
傷口が塞がり血が止まり肩を回すとゴキゴキと戦いで凝り固まった筋肉や骨の間からから子気味のいい音が鳴る
「これさ死ぬより辛いけど便利だからヤっちゃうのよね」
突然の耳鳴りに気を失って倒れるとギガスは動けなくなった
「あ...これ...力の共振だ...」
波乱のSF異世界転生...ギガスの冒険は続く...
---------------------------------------------------------------------
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます