君しか見えない(笑)ー前世持ちの私、即離婚します♡ー

福嶋莉佳

第1話 君しか見えない(笑)~主人公覚醒~



「君しか見えない」




「まぁ♡」





誰もが憧れるセリフ、そして誰もが羨ましがる相手からの甘い言葉――



「…けどもういいでーす♡ 離婚しまーす」



王子は微笑んだまま、意味を理解できないようだった。


「え…?」



私と彼の出会いは、とあるパーティーでのことだった。


金髪に澄んだグリーンの瞳、高い鼻筋、そして微笑む顔――一瞬で心を奪われた。


地味だった私は、彼に優しくエスコートされただけで注目の的。


周囲の女性たちが嫉妬や失笑を投げても、気にならなかった。


それほど私は“幸せの絶頂”にいたから。


やがて彼はすぐにプロポーズしてきた。

私も即答で頷いた。


甘い結婚生活が始まる――はずだった。


けれど現実は、初日から寝室は別。夕食も別。

「ごめんね、仕事が忙しくて」

困った顔でそう謝られると、私は何も言えなかった。


仕方がないものだと、自分に言い聞かせていた。


パーティーではいつも別の女性と親しげに話す。

でも彼は誰にでも優しいから、そういう人だから、と納得した。


それに、私にも優しくしてくれるから――。


金遣いが荒いように見えても、王子だから仕方ない。

私がそばにいれば大丈夫だと信じていた。


ーー私は特別な力を持っている。雨を呼び寄せる力。

田舎ではそれを理由に外に出してもらえなかった。


けれど、手を差し伸べてくれたのは彼。

だからこそ、その手を決して離せないと思っていた。


――私は、幸せだった。幸せだと思い込んでいた。

――前世の記憶を取り戻すまでは。



気づいてしまったのだ。

この王子のザルさ、甘さ、そして危うさに。


私が稼いだお金は王子のポケットマネー。金はあるだけ使い、浮気相手と豪遊。


浮気相手もすぐに見分けがついた。あからさま私を馬鹿にした目で見下すし、マウントとるし。


というか、夕食どころか朝食もほとんど一緒に食べてない。朝帰りが多いからだ。


おいおい典型グズすぎる。なぜ気づかなかった今までの私。


「…あ、ダメだこれ(笑)」


以前の私なら目をつぶれた。けれど今は違う。

前世の記憶が戻った私はかなり冷静にみれるようになった。


彼の作る優しい顔の裏に潜むものしか、もう見えなくなってしまった。


そんな私は、このクソ王子を冷ややかな目で見ていた。


だが王子は全く気づいていない。


一応は結婚している身だから、簡単に離婚もできない。相手は王子だしね。


だからなるべく浮気を控えるように誘導してみたものの――結果は逆効果だった。


王子の金遣いはさらに荒くなり、浮気はむしろ増える一方。


私を甘やかしすぎたと思ったのだろう、そして私が図に乗ったと思ったのだろう。


「そんなこと言って……僕が君を嫌いになってもいいのかい?」


斜め上からの台詞を言ってきた。笑ってしまう。


――そうですか、はい。そうおっしゃるなら、あなたの望むようにしましょう。



私は離婚に向けて水面下で動いていた。


ばれないように、彼の前では以前のようにニコニコニコニコ接していた。


数日間私が従順に過ごしていたのを見て、彼は得意げに口を開いた。


「うん、君は前のように僕を受け入れてる姿が一番美しい」

「やっぱり僕は、君しか見えない…」


「まぁ♡」


かつての私なら、天にも昇る気持ちになっただろう。


だが今は違う。


「…けどもういいでーす♡ 離婚しまーす」


王子は意味を理解できないようで固まっていた。

「え…?」


「後は弁護士にお任せします♡…それでは」


最低限の荷物だけを手に、私は屋敷を出る。

殆どの荷物はすでに手配済み。王子は全く気づかなかったようだ。


背後で慌てた足音が追いかけてくるが――もう遅い。


「浮気相手とどうぞごゆっくり。」


ご自由にどうぞ。私の稼いだお金はすでに全額引き落としてますから。


浮気相手にも慰謝料請求済み、2人で仲良く頭を抱えてください。


彼女はヒステリックなのでいいリアクションしてくれると思います。


そそくさと用意していた馬車に乗る。


ついでに雨を降らせる。王子が扉を開けた瞬間雨にさらされる姿を見て思わず笑ってしまった。


盛大に降り注ぐ雨に、王子の髪も服もずぶ濡れになっていく。水も滴るいい男じゃないか(笑)


雨の音が心地よいーー

私の気持ちは晴れやかだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る