Dossier de voyage jusqu'à 18 ans 〜終わりのない水平線〜
翠野とをの
第1話 旅立ち
「それでは出港っー!!」
あたしはノゾミ! 今日初めて出航したボン・ヴォヤージュ号の船長! 乗組員は2人。女の人の船員のハーハと男の人の船員トサンだ。
「船長。先ず最初は近くの島のお宝を探しに行くよ。いいかい?」
「うん!」
これから自分だけの航海が始まると思うとわくわくする。
「それじゃあその島に向けてしゅっぱーつ!」
「「アイアイサー!」」
トサンが帆を張りハーハが舵を切っていよいよボン・ヴォヤージュ号が進み出した。
あたしはキラキラした目でその進路を眺めていた。
──────
「あほら、その生き物は危ないから触っちゃいけないからね」
「うん」
無事島に着いたあたしたちはお宝があるらしい遺跡までの道をゆっくり進んでいた。
「船長、遺跡に入ったら約束して欲しいことがあるんだけどいいかしら?」
「なあに? ハーハ」
「実はね偶に遺跡の中にある変なスイッチがあるの。それは絶対押しちゃ駄目よ? それと私とトサンがいいよって言ったものしか取っちゃだめ」
「えーなんで?」
「遺跡にはねお宝を守っているこわーい仕掛けがあるの。だからね押してはいけないの。わかった?」
「はーい」
「いい子ねー」
ハーハにわしゃわしゃ頭を撫でられた。
あたしハーハに頭を撫でられるの好き!
「足元に気をつけて入るんだぞ」
「トサンに離れず着いて行ってね」
トサンが松明を持って先導してくれる。
遺跡の中は暗くて怖いけど2人がいるからへーきだもんね。
「ほら船長、これが宝箱だぞ」
周りに誰もいないことを確認したトサンが木でできた四角い箱を渡してくれた。ちなみに周りに誰もいないことを確認するのは横取りをしないためだそうだ。
……確かに狙ってたもの取られたりしたら嫌だよね。
「わぁーすごい! 開けてもいい?」
「んーここだと松明灯しても暗いし危ないから船に帰ったらにしようか。それまで賢い船長なら我慢できるよね?」
「もちろん!!」
「さすが船長だ!」
トサンに抱っこされてほっぺをスリスリさせられる。お髭が痛いけど嫌いじゃない。
「きゃーお髭いたいー」
───記念すべき第1回目の宝探しは無事に終わると思われた。しかし事件は帰りに起こった。
「少しここで休憩しよう」
トサンとハーハが開けた場所で休憩をとる準備をし始めていた。
その間に何かがあることに気づいた。
「あれ、来る時こんなスイッチあったっけ?」
ここに来る時にはなかった気がする。初めてスイッチ見たけどこれがそのこわーいスイッチかな。
……そういえばこわーい仕掛けってなんだろ? こわいって言ってるけど何が起こるんだろ? うーん気になる! ダメって言われたけどちょっとだけ押すなら大丈夫だよね!
ポチっ。
ゴゴゴゴゴォッ!
「大変だ、岩が転がってきた! みんな早くこっちへ!!」
トサンが叫んだ。
「船長、急いで!」
「きゃー!!」
「なんで岩が……」
それまで静かだったハーハがあたしに聞いた。
「船長、もしかしてスイッチ押しちゃった?」
あ絶対怒られる!!
「ううん、やってない」
「本当? 嘘ついた人は地獄に連れていかれて舌を抜かれちゃうのよ」
痛いのやだ!
「……だってこんなことが起きるなんてわからなかったんだもん!」
「こらっ! 駄目だって言ったのにやったのか!」
「うわーん!!」
間一髪! あたし達は遺跡から出ることに成功したがあたしの目の前には怒ったトサンが仁王立ちしていた。
「なんで駄目って言われたことをやったんだ」
優しいトサンが今まで見たことない顔してる。これ以上嘘はついちゃいけない。そしたらもっと怒られる。
「こわーい仕掛けがあるって言われたけどどんなことが起きるのかなって気になっちゃって……。でもこんな危ないなんて思ってなくて……」
「だからってやったのか?」
「うっぐ……ひっく」
泣いているあたしににハーハが優しく声をかけてくれた。
「悪いことしちゃった時はね『ごめんなさい』ってお顔見て言うのよ。そしたらトサンも許してくれるわ」
「ほんと?」
「うん。やってごらんなさい」
トサンに向き合って、怖いけど顔を見上げる。変わらずカンカンに怒ってた。
「大丈夫。ほら言ってみましょ」
「駄目って言われたことしてごめんなさい」
「トサン、私からもお願い。私もこういう事が起こるから危ないからって説明してなかったわ。私の説明不足が招いた結果よ。予想できた事なのにしなかった私も悪いわ。ごめんなさい」
あたしとハーハに謝られたトサンはひとつため息を吐いた後、
「僕らが駄目って言ったことには必ず理由があるんだ。だからこれからちゃんと守って欲しい」
「うん。……許してくれる?」
「じゃあ、仲直りと約束をこれから守るように指切りげんまんしようか」
「なあにそれ」
「約束守る時のおまじないさ。ほらこうやって……」
トサンの小指とあたしの小指と絡めて不思議なリズムの歌を唱えた。
「さっ、これで仲直り。船に乗って宝箱でも開けようか」
「うん!」
トサンの機嫌が直って良かった! それと、
「ハーハも助けてくれてありがとう」
「どういたしまして。次からはお互い気をつけましょう」
船に帰って開けた宝箱にはちょっとオレンジっぽい宝石のネックレスが入ってた。
トサン曰くアンダルサイトって宝石みたい。
初めてのお宝として記念にあたしが貰うことになって、今日の色々な思い出としてずーっと身に着けていこうって決めた。
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