ヒカルの庭と、おむすびの穴
柊野有@ひいらぎ
第一章
01 水の中のこと。
その日、私はママに小さな声で言った。
「プール、習いに行きたい」
友だちが数日前に池に落ちて、泳げないと死んじゃうかもしれないって思ったから。
私はミチル。
小学五年のお兄ちゃんと、お父さん、お母さんと団地に住んでいる。
お兄ちゃんがいるおかげで、友だちもたくさんいるし、少し
いつも遊びに行く公園には池があって、ぐるりと
アメリカザリガニは
春になると、男の子たちはバケツと手作りの釣り道具を持って、池のまわりに集まってくる。
夏の間は、あまりの暑さで、夕方になるまでは、集まってこない。池は、誰もいないのに、じっと静かに水をたたえていた。
風が強いその日の夕方、何人も友達が集まってスルメをぶら下げた割りばしを池に
ゆらりとバランスを崩したソウタのからだが宙に浮いて、割りばしが先に
わあっと男の子たちの声が上がって、はやし立てるような声だったから安心していたけれど、視界の
ソウタ、ソウタ、と
ソウタは水に倒れ込んで、手をばたつかせていた。本当におぼれるときは、声も出せずに静かに沈んでいく。
ソウタのお母さんは、ソウタの
ソウタが口から大量の水を
「ソウタは泳げないの、泳げないから、池には行かせたくなかったのに」
お母さんが小さな声で、
私も、たぶん、
ソウタのお母さんは、ソウタを
それまで
「びっくりしたなぁ」
「お母ちゃんスゲー
「ママが来てなかったら」
「
「何もなくてよかった」
「何もなかったわけじゃないけどな」
「ソウタ次回から
お母さんが、おんぶした後ろ姿を私はじっとみていた。
ソウタは男の子たちの予想に反して、ザリガニ
私は、プールに通い始めた。
自分よりも深い、大人も泳ぐプールで
***
『私の夢』
矢田部みちる
私の夢は、ライフセーバーになることです。
あのときには、お友達をうまく助けられなかったけれど、たくさんの人を助けられる人になりたいと思う。
水でおぼれる人を、ためらわず、たすけられる人になりたいです。
水のなかは、しずかで、さわがしく、その水色の中にいる君を、私は助けに行く。
それから。
つづく。
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