第9話
春になり俺たちも進級した。
春休みでしばらく学校に行っていなかったせいか登校するのがなんとなくかったるい。それに今日からまた新しい環境になるっていうのも億劫に感じる理由にもなる。環境の変化とはストレスでもあるんだよ。
「雅史、何をグズグズしているの? 早く用意して、学校に行こうよ」
「どこからのそのやる気が湧いてくるのさ。俺はもう一日くらいは寝て過ごしたい」
「毎日ゲームばっかりして過ごしていたくせに何言っているのよ。さっさとしなさい!」
「へーい」
真希との間は更に気易くなった気がする。距離が縮まったって言うのかな。もちろん母さんともとてもいい関係を築けている感じ。母さんの表情も明るくなっている。
一方、これが義兄妹の正しい距離感なのかはまったくわからん。7年も空白期間があるとなにをどうすればいいのかなんて分かりっこないしよ。
周りの友人にも妹がいるやつがいるけれど、実妹のやつばかりなので参考にならない。それだってシスコンかってっくらい溺愛しているやつもいれば、顔も見たくないってやつまでいる。もうそれぞれとしか言いようがない。
「ま、他人は他人で俺等は俺等だしどうでもいいとは思うけどな」
そもそも一般的な義兄妹っていうのもサンプル数が少なそうだし、考えるだけ無駄だろう。それなら俺たちオリジナルで行動したほうが無理なく出来そうだよな。
「さて、真希に本格的に怒られる前に支度をしっかりしておこう……」
高校までは家から駅まで10分歩き、電車で約30分。そこからまた徒歩で10分も歩けば高校に着く。
この間真希はなんだかんだずっと喋りっぱなしだ。昨夜見たテレビや動画チェンネルの話や学校で見たり聞いたりした話。スーパーのチラシから車窓から見えたなにかまでよく話をする。
昔は1ヶ月間一言も俺と言葉を交わすこと無く過ごしたことさえあったのにこの変わり様と言ったらどう説明したらいいのか分からんほどだ。
だからといって嫌だとはこれっぽちも思わない。これはずっと真希と仲良くしたいと思っていたのだから当たり前。2時間でも3時間でも話を聞いてやるし、俺からも話をしようと考えている。
高校に入ってからも真希は可愛いと評判だった。ただ、俺に対してだけあのつっけんどんな態度をしているならまだしも、学校でも同じような感じだったので人気があったかまでは良くわからない。
それでも何人かが告白を敢行したなんて話は伝わってきていた。兄として面白くない話だが、彼女の交友関係が良くなるならという思いも少しだけあったのは付け加えておく。
目立つけどさしたる人気者でなかった真希がここのところ良く笑い表情も明るくなっている。そうなると当然のように人気が上がってきてしまう。俺のところにも真希を紹介しろという話がいくつか来た。もちろん全部無視してやったがな。
真希の周りに人が増えるってことは喜ばしいことなのだけど、なんとなく面白くないっていうのは何なのだろう。俺って少し変なのかな……。
いろいろ話したり考えたりしている間に高校についた。真希と一緒だと一瞬でついたような気持ちになるから不思議なものだ。
「さて、クラス分けはどうなっているかなぁ~。2年生は雅史と一緒だったらいいのになぁ~」
「そんなにうまくいくか? ってか真希は俺と一緒でいいのか?」
「そりゃそうだよ。一緒がいいに決まっているじゃん」
「決まっているんだ」
よくわからないが、真希的には俺と一緒のクラスがいいらしい。一応、以前に担任を通じて我が家の事情などは考慮してもらえると助かるって旨は伝えてあったので、うまくすれば同クラもありえなくもないって思ってる。
あの時は真希も荒れていたので考慮されることもあったかもしれないが、今の彼女はごく一般的な女子高生でしかないので依怙贔屓はしてもらえない可能性は高いだろう。
そもそも俺としては隣同士のクラス程度でも御の字だと思っているんだけどな。ただ、できれば一番近くで真希を見ておきたいっていうのは俺のエゴでしかないのだろうか。
とにかく一つの空間にいることさえも毛嫌いしていた真希が一緒いにたいなんて言ってくれるようになるなんてお兄ちゃん冥利に尽きるってことには変わりはない。妙に可愛いんだよな、真希のやつ。
「甘えてる、ってのとは違うよな」
「なにか言った?」
「なんでもない。おっと、クラス分けの表はあそこみたいだな」
「楽しみ~」
クラスは全部で6組。1から3組には俺たちどちらの名前もなかった。で、4組。
「あった。雅史と一緒だよ。ほら、高嶋真希、高嶋雅史って並んで書いてある」
「お、本当だ。兄妹で同じクラスなんかあるんだな」
「よかったぁ」
真希は本当に嬉しそうにする。さっきも言っていたが、俺と一緒なのかそんなにも良いのかね。
確かに心細いことはなくなるとは思うけど、そこまで喜ぶことなのかは俺は良く分からん。たしかに俺だって真希と別々よりは同じクラスのほうが良いとは思っているけどな。それは間違いなく。
「よっしゃ、教室行くか」
「うん!」
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