生きるor死んで
「残念ながら、午前2時40分御臨終です我々も手を尽くしたのですが残念な結果になってしまいました。申し訳ございません」
「そう、ですか。今までありがとうございました」
優夜が死んだ。"僕"が中学に入る前に持病で亡くなった。悲しかった。たった一人の親友で幼馴染みだった優夜が。
分かってた。まだ安静にしているだけで、通院で、良かった時は、家で出来るだけ動かずに楽しめるために沢山工夫した。でも、いつしか入院生活が始まった。毎日会いに行った。"僕"の家からは、1時間程かかる距離にある病院で優夜が寂しくないように毎日毎日通った。
ある日、"僕"が帰る直前で優夜が言ったんだ。
『もし俺が死んじゃったらさ____』
あぁ。なんだったかな。何て言ってたんだっけ?
そうだ...
『____その分生きてくれよ"俺の親友"』
生きろって言われたんだ。
□■□■□■
ピピピピピピッ...
「おはよう、優夜。今日久しぶりにお前が亡くなったときの記憶を夢で見たんだ。悪夢だったよ」
あれから数年がたった。社会人になり、経営者となった。優夜の死がショック過ぎて、何度も何度も自殺を図ったがすべて止められた。今思うと、優夜に生きろって言われたのに死のうとしたんだなぁって。反抗も1ヶ月くらいで終わってそれからは、平凡に生きた。人間関係は、そこそこに。成績も中の上ぐらいを維持。つらない人生を生きてる自覚がある。それでも生きた。優夜の言葉が茨のごとく"俺"の体に巻き付いて。
「今日、帰り遅くなるかも...じゃあいってきます」
□■□■□■
今日は、中学の同級生とサシで飲んでいた。
「そう言えばさ、陽って中学の時死にたいって言ってたじゃん」
「ん?あぁそんなことも言ったな」
「今は、どうなん?」
「ん~...今は、生きる。生きたいって思ってる」
突然の話題に驚く事は、なかった。何人かにも同じことを言われたからだ。
「心境変化。何があった」
「"俺"が死にたいって言ったのは、幼馴染みが病気で帰らぬ人となったから後を追いたかったんだ。寂しくないようにって」
「へぇ~。それで?」
「でも、ソイツから生きろって言われたから生きなきゃって思って生きてる」
「良い奴だな...」
少し気まずくなったのか沈黙が続いた。話題を振ってきたのは、そっちなのにな。
□■□■□■
解散して、少し寄り道をしていた。星がよく見える崖のベンチに座って星見をしていた。
「優夜...僕、生きるよ。優夜が見れなかった景色を沢山見ていろんなものを食べて死んだら自慢しに行くんだ。優夜、待っててね」
(僕、死にたい。早く、はやく、死にたい。早く死んで優夜のもとに行きたい。優夜、ゆうや...)
いつの間にか流れていた涙を拭って家への帰路につこうとした。
[ごめんな、俺のせいで...。苦しい思いをさせちまって、本当にごめん]
「...優夜が謝ることじゃないし、優夜のほうがずっとずっと苦しかったんだからこんなの平気だよ」
[それは、お前の命だ。好きにして良いんだぞ。俺の言葉なんか気にしなくて良い]
「優夜が...生きてって言ったんだよ。僕の最初で最後の親友の優夜が。僕は、守りたいよ」
(本当に良いの?もう、良いの?僕は、もう死にたい)
[泣くほど辛かったんだな。すぐに言いに来れなくてごめんな。もう、生きなくて良いんだぞ。陽の本音は、全部聴こえてるから]
「優夜...ゆうやぁ」
[そこの崖から一緒に落ちよう。俺が居るからな怖がらなくて良い。大丈夫だぞ]
「うん、ゔん。逝く。そっちに逝く」
[あぁ一緒に逝こうな陽]
(陽、違うんだ。本当に俺が言ったのは、『もし俺が死んじゃったらさ、その時は、追いかけて来てくれるか?俺の親友』って言ったんだよ。それなのに錯乱して勘違いして。居もしない俺に毎日声をかけて。とんだ勘違い野郎だな陽は。でも、やっとあっちでも寂しくなくなる。あっちでのこれからが楽しみだ)
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