24 シラユキの消失 監視オネエサンと番犬クンの狼狽

 巫っ子『各々がた!いざ決戦の時じゃ』

 『『『おう!』』』

 巫っ子『これまでの地道な探索、ご苦労じゃった』

 『『『おう!』』』

 巫っ子『貴殿らの尽力によりて我らが道は定まった!』

 『『『おう!』』』

 巫っ子『では、主命を受け、部隊全員これより異世界ダンジョンに向かう!』

 『『『おう!』』』

 巫っ子『参る!いざ、出陣じゃあ!』

 『『『おう!』』』


 剣奈、自ら作り上げた「至高プランv2」(今回も100%千剣破プラン)を手にテンションアゲミで爆ノリである。いよいよ幽世に出陣である。


「ふんふんふん」

 

 ダンジョン探索も三度目になると余裕である。剣奈たちは吉祥寺九時発の電車に乗車した。電車とバスを乗り継いで日原鍾乳洞前バス停に降り立った。時刻は午前十一時三十分である。


 剣奈は東に向いて深く一礼した。さらに北を向いて一礼、最後に北西を向いて一礼した。それぞれ「一石山神社」、「梵天岩」、「籠岩」の方角である。


 ヒュウ


 風が優しく剣奈を撫でていった。


 剣奈は前を向き、機嫌よく「オガム所」を目指して歩いた。剣奈たちはT字の分岐を日原川沿いの道に入った。


 ザッザッザッザッ


 巫っ子『うふふふふ。この道大好き。ほんと冒険気分爆上げ』

 金狐『そうね。あっ足元に気を付けて。滑るわよ?』

 巫っ子『えへへへ。平気平気。ボク、もうこのあたりの古参みたいなもんだよ』

 白蛇『剣奈はすぐそうやって調子に乗る。ほら、滑るぞ?』


 ズルッ


「あん」


 玉藻が慌てて剣奈の肩を抱いた。


「えへへへへ。やっちゃった。てへぺろ」


 白蛇『じゃから言うたであろうに』

 巫っ子『ごめんよう。てへ』


 剣奈たちは凸凹の土混じりの細道を進んでいった。ところどころ道が崩れた跡が見えた。剣奈は上を向いていたため、うっかり窪みに足を取られたのだった。

 剣奈は今度は注意して道を進んだ。崩壊した箇所を確認しつつ歩をすすめた。

 


 ――監視オネエサンと番犬クン


「今日はずいぶん晴れやかな顔になってるわね」中川がつぶやいた。

「それにしても、いじめ首謀者の病院騒ぎには驚きましたね」風見が言った。

「通話記録によると、タチの悪い人物に連絡を取ってたみたいよ?しかも友人女児グループへの事情聴取ではイジメ動画の撮影をほのめかせていたそうよ?」中川が言った。

 

「連絡人物はレイプ前科のある半グレでしょ?ろくでもないことを考えていたんでしょうね」 

「父親によると家族会議でイジメを問い詰めたそうよ?逆にイジメられてるって言ってたそうだけど」

「あれ……、「シロ」……ですよね?実行犯……」

 

「しっ!めったなこと言わないで!デリケート案件よ?」 

「そ、そうでしたね。すいません。しかし……「シラユキ」の周りはおっかないですね。熊男を涼しい顔して吹っ飛ばす「キン」。どうやって移動したのか、暗殺者のような真似をする「シロ」。日本最高峰の知恵袋「チシツ」「レキシ」。能天気な天然ボクッ娘女児にどうしてそんな連中が付き従っているのか……」

「そうね。だけど、傍受記録から明らかだけど、全員彼女を慕ってるわ。持って生まれたカリスマ性なのかしらね……」

 

「まあ、理解しがたい行動を時々するのは確かですね。今もいきなりお辞儀三連発。意味がわかりません。不思議ちゃんってやつですかね。ただ……、一瞬にして雰囲気が変わった気がします。まあ気のせいだろうけど」

「あら?それは勉強不足よ?「一石山神社」、「梵天岩」、「籠岩」。今のお辞儀の先よ?」

「あっ!」

「神に愛されし娘ってことかしらね」

「時々とてつもなく神聖になりますからね。近寄りがたいというか、畏れ多いというか」

「そうね。あっ……今日は一番先に「オガム所」に行くみたいよ?」


「ここは監視カメラも何も無いわね……見つかると困るし……、あの岩陰に隠れましょ。ちょっと遠方からの観察になるけど仕方ないわね」

「電波も不安定ですしね。あ、対象に注意を向けすぎると滑落のリスクがあります。落石にもお気をつけてください」

「ふふ。わかってるわ。過保護ね」中川が風見に微笑み、ウインクをした。


 二人はポーチから双眼鏡を取り出し、観察対象を眺めた。


「あ、身体に水をかけだした。冷たそう」風見がつぶやいた。

「多分みそぎね。報告書にも記載があったわ。時々禊を行うの。ペットボトルの水を使うこともあるようだけど、今回は湧き水があるものね」

「おや、なにかポーズをとりだしたぞ?魔法少女アニメの変身ポーズの真似かな」

「ほんとね。一生懸命ポーズとって可愛い。でも……清らかだわ……まるで祈りを捧げる巫女のよう……」


 剣奈は右手を高く空に伸ばしていた。左手は胸を抑えていた。そのまま、剣奈は少し静止した。

 右手を下ろして胸の高さで腕を右前方にむけて伸ばした。左手は胸の前から左前方に伸ばされた。両手のひらは上に向けられた。

 一瞬の静止。そして剣奈は両掌を合わせて合掌した。瞳を閉じ、頭を垂れた。神聖な雰囲気が高まった。

 剣奈は両手を空に向かって高くつきだした。手のひらは空に向けられた。高く涼やかで朗々とした声が聞こえてきた。


吐普加美依身多女とおかみえみため

吐普加美依身多女とおかみえみため

吐普加美依身多女とおかみえみため

 来たれ! 来国光っ!


 剣奈の身体が太陽の光に包まれて輝いたように見えた。


 ヒュウウウッー


 突然の突風が二人の正面から吹き付けた。二人は双眼鏡越しに剣奈の姿をしっかりと捉えていた。


 二人は強風にあおられた。風が舞い、二人の視線が一瞬ずれた。


「おおぉ。突然の強い風。びっくりしました!」風見がつぶやいた。

「えっ???い、いない?」中川が狼狽してきょろきょろとあたりを見回した。

「まじか!見失った?」風見は双眼鏡であたりを見回した。

 

「でもこの一瞬よ?川に入った気配もないし、道に戻った気配もないわ。消えたとしか……」

「まるで神隠しのような……」

「はっ!ま、まさか!報告書の記載は比喩でも誇張でもなく?」

「報告書?あの「異世界移転を行う」ってやつですか!」


 中川と風見は顔を見合わせた。それから呆然と剣奈がさっきまでいた場所を眺めた。

 

「「……」」


 中川と風見の前には清らかな川と、やけにすがすがしく感じられる川原が広がっていた。


 ヒュウ

 

 何もない空間に、清らかな風が吹き渡っていた……


 

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