「冒険も戦闘も全部ついで」にするつもりでした〜釣りギルド新米職員の異世界フィッシング冒険譚〜
キンポー
第1話 釣りギルドからのお使いは遠すぎる
僕の名前はフィリオ・コーデン。
ここ、アルノワ王国釣りギルド所属の、入社2年目の新米職員だ。
前世ではラノベ編集者だった。
ひょんなことから異世界に転生し、
今ではこの世界で釣り新聞の取材と記事執筆をしている。
なんとも因果な話である。
転生先は、貧乏男爵家の三男。
長男が家を継ぎ、次男は役所に勤めて堅実に出世しているらしい。
剣も魔法も大した才能がない僕はというと、学園でもパッとせず、
卒業後の進路も決まらないまま、実家でふらふらしていた。
このままでは家の中で肩身が狭くなる一方だ……と焦っていた頃、
父の昔の知り合いという、なんとも頼りないツテをどうにか手繰り寄せて、
釣りギルドを紹介してもらい、なんとか就職できたというわけだ。
「おい、フィリオ。何をぶつぶつ言ってる?」
「はっ、はい! なんでしょうか、ギルドマスター!」
姿勢を正すと、カウンターの向こうには
ギルドマスターのフィルネルさんが立っていた。
見た目は若くて美しいエルフの女性
――でも、なんか苦手なんだよなぁ。
目ヂカラがありすぎて少し怖いし、なによりバリキャリのオーラが
「ゴゴゴゴ……」という効果音付きで漂っている。
それもそのはず。彼女いない歴20年の僕にとって、
あまりにも格上すぎる相手なのだ。
釣り歴は二百年近いとも噂されるが
――いや、女性の年齢を詮索するのはナンセンスだ。
前世で学んだはずじゃないか。
「お前が書いた前回の記事、『東方の湿地帯で釣れる“跳ね鱒”の攻略法』、
なかなか評判が良かったぞ」
「あ、ありがとうございます!」
前回、先輩のペーターさんと行って、「lよーしお前に任すわ!」
と言われてみたものの……。
跳ね鱒(ハネマス)
――釣り上げようとした瞬間に自爆跳躍するという、厄介な魚。
あれを5回連続で顔に食らったときは、正直もう辞めようかと思った。
「そこでだ。次回の取材なんだが……少し遠いぞ」
またしても、嫌な予感しかしない導入である。
「エレレ村という場所に、興味深い釣り師がいるらしい」
「エレレ村……? ですか。はて、どこでしょう?」
正直、聞いたこともない村の名前だった。釣り新聞の過去記事を思い返しても、該当がない。
「ここから北東へ、馬車でおおよそ十日ほど行った場所にあるそうだ」
「は、はあ……」
遠い。遠すぎる。
その距離、もはや“日帰り取材”の皮をかぶった冒険レベルである。
「取引のある商人から聞いた話だがな。十歳くらいの少年らしいが、
どうにも信じがたい話ばかりなのだ」
「少年ですか……」
「取材対象としては悪くないだろう。地方の逸材特集にも使える。どうだ?」
「いや、それはまあ……そうなんですが……」
問題はその“エレレ村”という場所だ。
地理的にも情報的にも、限りなくブラックボックスである。
「すでに護衛の手配はしてある。Cランクの冒険者パーティ『ミドル・ガード』。
真面目で手堅い連中だ。彼らと共に向かってくれ」
「えっ……もう段取りが……」
「うむ」
早い。さすがギルドマスター、フィルネルさん。
バリキャリが住まう世界の速度とは、これほどのものか……。
「3日後に出発してくれ」
「……わかりました。お引き受けします」
断る選択肢がないあたり、社会人経験者としては泣きたくなる。
こうして、僕はエレレ村へと向かうことになった。もちろん、護衛付きで。
その村に、本当に伝説級の釣り少年がいるのかどうか――
いや、正直それよりもまず……
「……道中で釣り、してもいいですかね……?」
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