変身シーンは撮らないで! ~追放された最強TS魔法少女の俺、ダウナーなお姉さんに脅されてダンジョン配信はじめました。~
ヤニスウ・クセアリス
序 忍び寄る影
1 お前にはこのパーティを抜けてもらうぜ
「えっ!? 追放? 俺が?」
「ああそうだ、アムト。お前にはこのパーティを抜けてもらうぜ」
「突然で悪いが」
「決まったことなんだ」
いつも通り学校の部室に来た俺に、信じられない言葉が浴びせられる。
4人パーティの俺以外……小中高と共に過ごしてきた3人の親友が、よそよそしい態度で俺を突き放した。
冗談じゃない。俺も食ってかかる。
「追放って! どうしていきなりそんな!?」
「決まってるだろ…………そんなの」
3人はおもむろに俯く。マジな感じ。
深刻さがこちらにまで伝わってくる。
そこまで彼らに迷惑をかけてしまったのか。無理を強いてしまっていたのか。
そう考えていたら、咄嗟に言葉が溢れ出してきた。
「みんな、ごめ――」
「――アミコちゃんに加入してもらいたいからだよ!!!!」
「は?」
3人が顔を上げると、頭にはピンクのハチマキが。『アミコちゃん♡』と文字が入っている。♡ってなんだよ♡って。彼らが上着を脱ぎ捨てると、下に着ていた法被があらわに。
それどころじゃない。ペンライト、ペンライト、ペンライト、ペンライト。片手に4本のペンライトを、それを腕2つ、それを3人。
計24本のペンライトが俺の視界を真っ白に染め上げる。光の暴力だ。
「うおっまぶし――」
「アミコちゃんにパーティに入ってもらうために、アムト、貴様をこのパーティから追放するうううううううう!!!!!!!!」
「ぐああああああ!!!!」
ヲタ芸が生み出す風圧のあまりの強さに、俺は部室の壁に背中を打ち付ける。
俺たち『
しかし、棚に飾っていた他の物たち――アミコちゃんフィギュア、アミコちゃんアクスタ、アミコちゃん缶バッジをぎっしり飾ったコルクボード……。
そういったアミコちゃんのファングッズは厳重に固定されて倒れなかった。
「アミコちゃん……か」
――彼らが連呼する『アミコちゃん』とは、ダンジョンの探索者たちを救うため、日夜モンスターと激闘を繰り広げる魔法少女。
彼女はライセンスも有していないため、探索者ランキングには集計されてはいない。しかし、その実力は日本のTOP20に入ると評判。
人気も凄まじい。アミコちゃんが出没したダンジョン配信はファンの情報網で共有され、急上昇ランキングに必ず入る。
国民的アイドル――その人気の高さとは裏腹に、いまだ正体不明の存在。
彼女はプライベート情報を一切明かさないのだ。
――そんなアミコちゃんを、パーティに?
それだけでもバカらしいのに、彼らは俺を追い出すつもりでいる。
「冗談よせよ……。そういうドッキリは寒いだけだって、ついこの前話したばっかだろ?」
「俺達は大マジだ! さあ、出てった出てった!!」
「風邪ひくなよ!」
「歯ァ磨けよ!」
「うおッ!? 押すな!! 押すなってば!!」
俺は問答無用でポーンと部室の外まで蹴飛ばされる。為す術なし。
勢いよく閉められた扉の向こうからアミコちゃん!アミコちゃん!と声が漏れてきた。
「いててて。まったく……アイツら何のつもりだよ…………」
ドアを開けようとしたが、内側から鍵がかけられている。俺は締め出されていた。
「おい! 開けろよ! おい!!」
ドアを叩いてみても反応はない。思わず力が抜ける。扉の前で座り込んでしまった。
追放、その単語が頭の中で何重にも繰り返される。
彼らのやってることはむちゃくちゃだ。
むちゃくちゃすぎて、絶対の〝秘密〟を口に出したくなる。口に出してしまった。
「――――アミコちゃんの正体は俺なのに」
誰にも聞かれていないと思っていた。
背後から女の人の声がするまでは。
「ふぅン? 興味深い。少年、君があのアミコちゃんだと言うのかい?」
思えば、これが全ての始まりだった。
扉の向こうで〝秘密〟を打ち明けられていたなら。彼女に〝秘密〟を聞かれていなかったら。
部室棟の廊下。
夜が人の形に顕現したかのように暗い――紫髪のダウナーなお姉さんが、俺に妖しく微笑みかけてきていた。
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