サンライト王国の修道女たち

 司祭館からしばらく歩くと、木造の修道院にたどり着く。薄い緑色の修道院で、横に幅広い長方形の建物に、三角屋根が付いているという構造だ。

 男性と女性はそれぞれ別の建物で暮らし、寝泊まりや学習をする。

 メリッサは安堵の溜め息を吐いた。


「ここに来ると落ち着きます」


 懐かしさが込み上げる。

 自分でも何かできる事を見つけたくて、両親に元気に暮らすと約束して、修道院に入った。規律が厳しく、友人と普通に会話をするのさえ時と場所を選んだ。

 掃除や洗濯など基本的な生活をする能力は、ここで磨かれた。パンを作って配るなどの奉仕活動が報われて、小さな子供から元気よくありがとうと言われた時には、メリッサの笑顔も綻んだ。

 誰かを救ったという実感が沸いた時には、本当に嬉しかった。


「……今はもう、そんな活動はできないでしょうけど」


 瓦礫の山と化した城下町を思い出す。


 ダークとエリックを中心にした闇の眷属が攻め込んで、サンライト王国を一変させてしまった。

 メリッサは両手を合わせて、静かに祈りを捧げる。

 戦争で命を落とした人々の魂が安らぐ事、サンライト王国の未来が明るい事、そして闇の眷属が二度と戦争をしない事を祈っていた。

 そんなメリッサに恐る恐る近づく複数の人影がある。緑色のローブを着た女性たちだ。サンライト王国の修道女たちである。

「もしかして、メリッサ?」

 声を掛けられて、メリッサは振り向いた。

 懐かしい顔ぶれに、メリッサの笑顔が輝く。

「皆様、元気でしたか?」

「私たちは何とか暮らしていました。魔王に囚われて大変でしたね」

 友人同士なのに敬語になるのは、いつもの癖だ。

 メリッサは思わず笑ってしまう。


「私は大丈夫です。魔王はとても優しい人です」


「ダーク・スカイが!? 嘘でしょう!? 聖女たちを殺した憎き魔王が!?」


 修道女たちは両目を丸くして、一斉にしゃべりだす。

「金髪アフロの性悪なオヤジだと聞いています!」

「世の中は金だといつも言っていて、財力に任せて男女問わずハーレムにしている変態らしいですよ」

「顔からはみ出た派手なサングラスを付けているというし、メリッサの事は本当に心配で心配で……」


 修道女たちはなぜか嗚咽を漏らしていた。


 メリッサは苦笑する。


「ダークはそんな人ではありません」

「本当ですか!? 証拠は!?」

 修道女たちが詰め寄ってくる。ダークに対する信頼は地の底のようだ。

 メリッサは両腕を組んで考え込んだ。


「証拠は出せませんが……城下町に本人がいるので、会ってみますか?」


「い、いいですよ。相手が魔王だろうとメリッサのためなら!」


 修道女は声を上ずらせながら、握りこぶしを振り上げた。

 メリッサは両目をパチクリさせた。

「そこまで気合いを入れる事はないと思いますが……」

「打倒、魔王! 打倒、ダーク・スカイ!」

 修道女たちは勇み足で城下町に向かう。

 メリッサはその後を、苦笑してついていくのだった。

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