第5話「沈めてしまえ」

プロローグ


首相官邸、深夜。


「支持率が30%を切りました」


官房長官が青い顔で報告した。


「核兵器疑惑の影響です」


「このままでは政権が持たない」


首相が頭を抱えた。


そのとき、誰かが小さくつぶやいた。


「沈めてしまえばいいんじゃないですか?」


会議室が静まり返った。


そして、全員が同時に理解した。


---


1. 天才的なひらめき


「そうだ…沈めてしまえば」


首相の目が輝いた。


「沈めてしまえば、最初から存在しなかったことになる」


「でも、2000億円が…」


「海に沈んだ金に価値はない」


官房長官が頷いた。


「問題そのものが消える」


「素晴らしい!」


外務大臣が手を叩いた。


「なぜ今まで気づかなかったんだ」


「日本的解決法の真骨頂ですね」


全員が興奮していた。


---


2. 作戦立案


翌朝、防衛省極秘会議室。


「作戦名『オペレーション・レーテー』」


防衛大臣が発表した。


「HMS ヴァンガードを事故に見せかけて沈没させる」


「記録は?」


「すべて機密扱いで処分」


「海自の協力は?」


「国家機密として命令する」


「完璧ですね」


参謀たちが満足そうに頷いた。


---


3. 英国への打診


外務省から英国大使館へ極秘連絡。


「実は、HMS ヴァンガードを沈めたいのですが」


英国側担当官が驚いた。


「沈める?なぜです?」


「色々と…問題が生じまして」


「ああ、例の件ですね」


英国側が理解した。


「構いません。我々も困っていたところです」


「ただし、証拠は残さないでください」


「もちろんです」


「では、海難事故ということで」


両国の利害が完全に一致した。


---


4. 各省庁の準備


外務省。


「英国には『訓練中の事故』で説明します」


環境省。


「放射能汚染は『想定外の事態』として」


経産省。


「2000億円の損失は『不可抗力』で」


財務省。


「予算上は『研究費』として処理済み」


すべての省庁が責任回避に動いていた。


---


5. 海自への極秘命令


海上自衛隊幹部会議。


「HMS ヴァンガードを沈めろ」


統合幕僚長が命令した。


「ちょ、沈めるって…」


現場指揮官が困惑した。


「理由は?」


「理由など要らん。国家機密だ」


「でも、2000億円の…」


「金の問題ではない。国家の威信だ」


「わ、分かりました…」


現場は混乱していた。


---


6. 研究者への通告


HMS ヴァンガード、田中教授の研究室。


「先生、研究は中止です」


防衛省の官僚が告げた。


「なぜですか?まだ始まったばかりなのに」


「HMS ヴァンガードは明日、性能テストに出港します」


「性能テスト?」


「詳細は機密です」


山田助手が不安そうに聞いた。


「いつ戻ってくるんですか?」


官僚が目を逸らした。


「それは…分からないですね」


---


7. 最終決定会議


首相官邸、地下会議室。


「すべての準備が整いました」


官房長官が報告した。


「海に沈めれば、責任も一緒に沈む」


首相が満足そうに言った。


「記録も証拠も、すべて海の底」


「素晴らしい作戦だ」


防衛大臣が賞賛した。


「これで政権も安泰」


「日本の危機管理能力を世界に示せますね」


全員が拍手した。


---


8. 英国乗組員の帰国


横須賀港、HMS ヴァンガード。


「明日で我々の任務は終了だ」


船長が乗組員に告げた。


「帰国命令が出た」


「研究はどうなるんですか?」


「日本側が引き継ぐそうだ」


乗組員たちが荷造りを始めた。


「長い間、お疲れ様でした」


日本側スタッフが見送りに来た。


「良い研究素材でした」


皮肉にまみれた別れだった。


---


9. 国民への最後の嘘


NNKニュースX。


「HMS ヴァンガード、明日性能テストのため出港」


キャスターが報じた。


「2000億円の研究がいよいよ本格始動します」


街頭インタビュー。


「楽しみですね、どんな成果が出るか」


「日本の技術力を世界に示してほしい」


国民の期待とは裏腹に、沈没作戦が進行していた。


究極の皮肉だった。


---


10. 沈没作戦開始


深夜、相模湾沖。


「オペレーション・レーテ、開始」


海自指揮官が命令した。


HMS ヴァンガードが最後の航海に向かう。


「これで日本の恥が消える」


「核兵器問題も解決だ」


しかし、その時—。


「司令、上空に米軍偵察衛星が…」


「何だと?」


「すべて撮影されています」


指揮官の顔が青ざめた。


---


エピローグ


米軍横田基地、情報分析室。


「日本が何か隠そうとしてるな」


分析官がモニターを見つめていた。


「HMS ヴァンガード、沈没作戦を準備中」


「なぜ沈める?」


「さあ…でも全部記録してある」


「CIAに報告しよう」


「隠蔽はバレる、しかも同盟国に」


日本の完全犯罪は、開始前から破綻していた。


沈められるのは船ではなく、日本の面子かもしれない。


---


次回「沈められない鉄くず」


「隠したいことは、たいていアメリカの衛星が一番よく知っている。」


完全犯罪のはずが、すべて筒抜け!?


日英の隠蔽工作 vs アメリカの監視眼!


---


この物語はフィクションです。沈む責任は実在しません。

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