第6話 ハンバーグ1
どうしよう。
実にどうしよう。
全くどうしよう。
俺は今、JKの部屋の前にいる。
そう、今日は家庭教師の日なのだ。
一歩踏み出すべきか…。
踏み出さず帰るべきか…。
こんなに迷っているのにも理由がある。
半田さんの奥さんが、
「今日は、町内会の集まりで家を留守にするから花子をよろしくお願いしまーす」
とか言ったからだ!
ったく町内会より娘優先しろよな。
だから、半田家には俺とJKの2人きり…。
しかし奥さん
「じゃあ、お願いします。あ、変なことしたら警察呼びますんで」
とか言ってたくせにこの仕打ちかよ…。
まあ、俺はゲームの主人公ほど変態ではないから大丈夫だがな!!
変態じゃないからな!
大丈夫だからな!!!
ということで、失礼しよう。
コンコン。
「家庭教師の幸村です。本日はよろしくお願います」
とドアの手前で言うと部屋の中から小さくか細い声が聞こえてくる。
「入って…」
それじゃあ失礼するか…。
「失礼します」
部屋に入ると、ピンク色のパジャマ姿のJKが勉強机の前の椅子に座っていた。
ちょっと乱れた髪が、どこか寝ぼけたような印象を与えている。
部屋は意外にも片付いていて、勉強机に本棚、カーペットの上に小さいテーブル、ベッドと簡素な部屋だった。
勉強机の前で構えている。
やる気はあるな…。
もしかして、勉強は結構できるのかな?
俺は、座っているJKに近づき話しかける。
「この間のテストは解きましたか?」
JKは無言で顔を縦に振り、俺が作ったデジタルリマスター版テストを手で差し出した。
解いたのかー!
なんか、最初は勉強できなさそうな印象だったけどそんなこともないのかもな!
感動だ!
「じゃあ、採点するから。その間このプリントやっておいてください」
・・・
すげー感動だ!
感動だ!
全部間違っている!!!
俺はこのチェックだらけのテストを2度と忘れないだろう。
そう、机に突っ伏しているコイツのことも2度と忘れないだろう。
いや、しかしどっから手をつければいいのかわからん!
何せ0点なのだからな!
こんな、アルバイト押し付けやがって改めて親父恨むぞ!
どうすればいいんだ、俺…。
いや、でも答案は真っ白ではない!
この答案からヒントを得よう。
いや、ヒントを得ようとしても的外れな回答ばかりだ!
りんごをorangeと書くぐらい的外れだ!
意を決して俺はJKに話しかける。
「君は何か好きなものとかあるの?」
JKは数秒沈黙していたが、コクリと頷いた。
「何が好きなの?」
「ハンバーグ…」
とJK小声で呟く。
ハ、ハンバーグ?
俺は拍子抜けしてしまった。
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