ダメ兄の代わりに私がダンジョンマスター!?

大具奈いびき

第一章 突然の内定?

第1話 プロローグ

はじめまして、拙い文章ですが楽しんで頂けるようにがんばります(p`・ω・´q)

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 私こと立花芽瑠は異世界でダンジョンマスターの職(?)に従事することになってしまった。こうなった全ての原因は実の兄である立花健一にある。


 現在進行形でパニック状態の私の目の前では有無を言わさず異世界まで私を連れてきた少年がニコニコと微笑んでいる。




 ***


 大学から出た私は駅までの道を歩いていた。


 レポート間に合ってよかった…。


 数日かけて完成させたレポートを無事期限内に教授に提出することができた私の足取りは軽い。スマホの時刻表示を見ると時刻は21時半を少し過ぎたところ。帰る時間がいつもより遅くなってしまい、駅へと向かう歩みを気持ち早める。


「おっ、ラッキー!」

 ホームにたどり着いたところでタイミングよく発車時刻になる電車に乗ることができた。乗車後すぐにドアが閉まり発車。私はドアの近くの邪魔にならないスペースに体をおさめる。車内の座席はすべて埋まっているが、混雑しているというほどでもなく、乗客同士が接触しない程度の距離感で立っている。


 私はポケットからスマホを取り出す。画面には一通の未読メッセージの存在を示す表示。就活サイトからの通知か何かだろう。一旦通知を消し、ママにこれから家に帰ることを伝えるためのメッセージを作成し送信する。


 あとは電車が最寄りまで着くのを待つだけだ。


 そろそろ就活のこと考えはじめないとな。


 余裕ができたところでそんな考えが浮かぶ。


 将来やりたいことは明確には決まっていないけど、教育関係か福祉関係で何か子どもとかかわれる仕事ができたらいいなとは思う。


 そんな曖昧な自分の進路についてぼーっと考えながらなんとなしにスマホを弄っていると、突然電車が『キキッ―――』と甲高い音を立てながら停止する。バランスを取ろうと反射的に左手で近くの吊り革をつかむ。なんとか倒れるずにすみ胸を撫で下ろす。



『○○駅で非常停止ボタンが押されたため緊急停止いたしました……』


 車内に流れるアナウンスによると、復旧までしばらく時間がかかるようだ。もうすぐ最寄り駅に着くって距離だったのについてないな。急に手持無沙汰になってしまい、先ほど届いたメッセージの存在を思い出す。暇つぶしに目を通しておこうかな。


 メッセージアプリを開くと一通の未読メッセージが一番上に見つかった。どうやら届いていたのは就活サイトからではないようだ。メッセージの一番上には『立花芽瑠様へのご案内』とあり、その下には『規約により、これから異空間への転送を開始いたします。転送後は担当者の指示に従って下さい。』


 脳内にいくつも?が並ぶ。『転送』ってこれから何か送られてくるの?


 なんだか気味が悪い。覚えのない内容だしとりあえずメッセージを削除しようと操作しようとしたところ、スマホの画面が突然強い光を発しはじめる。あまりの眩しさに目を閉じた。


 次の瞬間、私を突然の浮遊感が襲う。


「きゃっ、なに!?」


 浮遊感は一瞬で、今は両足で地面の感覚を感じることが出来る。恐る恐る目を開くと、目に入ってきた景色は乗っていた電車内のものではなく、真っ白な何もない空間に変わっている。そして周囲に他の人はおらず、私は1人立っている。


「なに、これ?ここどこ?」


 状況が呑み込めずあたりをキョロキョロと見回すが、白い空間は延々と続いているようで見渡す限り何もない空間が広がっているだけ。状況が全く呑み込めない。



「タチバナメルちゃんであってますか?」


 突然背後からかけられた声に思わず「ひぃっ!」と悲鳴をあげ、声の主がいるであろう後方を恐る恐る振り返る。そこには女性の平均身長よりやや低い私より30センチほど低い背丈の少年が立っている。


 少年の姿を見て私は息を呑む。突然背後に現れたということに対する驚き以上に、その少年の容姿に目を奪われてしまった。服装は布を巻き付けただけのこれ以上ないほどシンプルな格好。それなのに粗末な印象を受けないのはその神秘的なまでの顔面の造形のせいだ。白い肌の顔には形の良いパーツがそれぞれ完璧な配置――芽瑠が思う限りであるが――で並んでいる。髪は一本一本が純金でできた糸と言われても信じてしまいそうな美しい金髪で、緩くカールしており、少年らしい長さで切りそろえられている。これまでの人生の中で対面したことのないような美しい少年に目を奪われ、ただただ立ち尽くしてしまった。


「きれい・・・。」


 無意識に言葉が出てしまっていたことに少し遅れて気づき、恥ずかしくなり顔の血流が急激によくなる。少年はそんなことは気にしていない様子で、私に話し始めた。


「タチバナケンイチくんの妹のメルちゃんであってる?」


 私が質問に対して半ば反射的に首肯すると、少年は私に向かってニコッと微笑む。


 まさに天使の微笑みと呼ぶべき光景に数秒間間抜け顔をさらしてしまうが今置かれている状況を思い出し思考を元に戻す。


 明らかに今の状況に関係していそうな目の前の美少年に私が置かれている状況について尋ねてみよう。


「ごめんね、気づいたらここにいたんだけどここはどこなの。それになんで私の名前を知っているのか教えてくれるかな?」


 私の質問を聞いて少年は「うん!」と返事を返してくれる。


「まず、突然召喚しちゃってごめんね。でも僕も健一君が急にいなくなっちゃって困っちゃったから・・・。」


 さっきから少年の言葉の中に、昨年家を出たお兄ちゃんの名前が出てくるのが気になるんだけど…。お兄ちゃん今度は何したのよ!?



 大学卒業後、定職にも就かず、両親にもほとんど連絡をよこさないお兄ちゃんが何か関係しているのは間違いなさそう。


「私のお兄ちゃんがどうかしたの?」

 できる限りお兄ちゃんに対する苛立ちを隠すように、優しい口調を心がけて尋ねる。


「うん、健一君ダンジョンマスターになってくれるって言ったのに放り出してダンジョンから出てっちゃったんだ。だから代わりにメルちゃんにダンジョンマスターになってもらわなきゃいけないの!」


 少年の話を聞き、なんとなくではあるが状況がつかめてきた。兄はこの少年とごっこ遊びのようなことをしていたのだろう。ダンジョンマスターという言葉は私でもラノベ作品なんかに出てくる用語だということは知っている。そういえばライトノベル作家になると常日頃から言っていたっけ。まあ、これまで実際に書いているという話は全く聞いたことないんだけどね。


 それにしてもこんな子どもを放っていなくなるなんてお兄ちゃんはいったい何考えているのよ。だらしないと前々から思っていたけど家に帰ったら電話して一度きちんと文句を言ってやろう。


 現在時刻は電車に乗った時間から考えると22時を過ぎている。こんな時間に外にいたら何があるかわからない。大学生とはいえ一応成人済みの大人としてはきちんと彼を家まで送り届けなきゃだよね。


「ごめんね、でももう夜遅いから今日は遊べないね。お兄ちゃんのことは私がきつーく怒っておくから今日はおうちに帰ろう。お姉ちゃんがお家まで送って行ってあげるから、お家はここから近いのかな?」


 少年の家らしき建物はないかとあたりを見回そうとして、私は謎の白い空間にいるのだということを思い出した。それに、兄は関西の大学に進学し、そのまま向こうで暮らしているはずだ。こっちに帰って来ていたらさすがに両親を経由して私も知ってるはずだし。そうなると、この少年の口からお兄ちゃんの名前が出たのはいったいどういうことなの?


 状況がさらにわからなくなり頭を抱えていると少年は頬を膨らましいかにも怒ってますという顔になる。何その顔、めっちゃかわいい!!!写真撮っていいかな?


「もうとにかく行くよ!」


 少年はそう言うと私の左手をとり、両手で包み込むように握りしめる。次の瞬間、渡すの視界は再び真っ白な光で包まれた。


 目を開けるとと、そこには先ほどまで立っていた真っ白な空間でも、乗っていた電車の車内でもない景色が広がっている。


 ソファーやベッドなどの家具が置かれた生活感のある洋室だ。なんとなくこの部屋の住人は若い男だろうなと想像できる。広さは自宅のリビングとキッチンを合わせたくらいの大きさかな。


「えっと、ここは君のお家?どうやってきたの?東京なの?私帰れるのよね?」

 状況の変化についていくことが出来ず、少年の肩を掴み、いくつもの質問を投げかけてしまう。少年は部屋を自慢するように両手を広げた。


「ここは僕のダンジョンのコアルームだよ。僕のお家っていうより僕自身って言ったほうが正しいかな~。あと、ここはメルちゃんの住んでた地球とは違う世界だよ。もちろん東京でもないしね!ここに来たときケンイチくんは『異世界転移だー』ってものすごく喜んでたよ。地球で異世界転移とか異世界転生が流行ってるんでしょ?メルちゃんもやっぱり嬉しい?」


 少年は私の顔を覗き込みながら尋ねてくる。


 少年の言葉を必死に理解し、私は思わず膝から床に崩れ落ちた。床に敷かれた毛足の長い絨毯が私を受け止めてくれる。絨毯の肌触りの良さをリアルに感じられることで、この状況は夢ではないのだというとがわかってしまう。


 私もお兄ちゃんほどではなくても、異世界転移・転生を扱ったラノベやアニメに触れたことがあり知識はある。でも、それらはあくまでも娯楽としての創作物で、その世界に本気で行ってみたいなんて思ったことはなかった。それなのに……。


「これからよろしくねメルちゃん。改めまして、僕の名前はダンジョンコアNo.108です。ケンイチ君は呼びにくいからトウヤって呼んでたよ。メルちゃんもそう呼んでくれると嬉しいな。」


 私の気持ちなんてお構い無しに少年は笑顔で私に自己紹介をしてくる。さっきまで普通の女子大生として進路に悩んでいたのに、気づけばお兄ちゃんによって強制的に就職先を決められてしまったらしい。【就職先:異世界のダンジョン】【職業:ダンジョンマスター】おまけに美少年の同僚(?)付きだ。


 私は今まで堪えていた兄への怒りがついに限界に達した。


「お兄ちゃんのバカーーーー!!!ふっざけんなぁーーーーー!!!









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本日5話まで公開します。明日以降ストックが尽きるまで毎日更新継続!

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