第19話 ギミック解除
僕達はヴェスティの拠点の捜索を再開した。先程僕が見ていた書斎は係長に担当してもらうことにした。係長はヴェスティと同じ歴史家だから、適役ということで。
僕はと言えば、拠点の隠し扉開けにいそしんでいる。先程の穴からこの拠点へと続く道。内側からはギミックなしで入れるが、拠点側からはそうはいかないらしい。扉の位置と、ギミックの位置は割れている。だが、その解除方法が分からない。
いっそのことアルタ姉さんにグリフォンの姿になってもらって壁を破ってもらおうか。いや、それはダメだ。壁を壊してしまえば、拠点のバランスが崩れ、土砂ごとこの拠点が潰れてしまうかもしれない。死ねない僕達は、呼吸を確保するまで永遠の地獄を味わうことになるかもしれない。
というわけで、僕はやはりギミックをどうにか解除するしかないようだ。リアスの記憶によれば、この目の前にある食器棚がドアになっているらしい。そして、勝手に扉が閉まる際にガラス同士が擦れる音が聞こえたとのこと。つまり、食器棚の中にある食器がカギになっているのかもしれない。
僕はカギになっている食器を見つけるべく、食器棚の中身を一度すべて取り出すことにした。カギとなる食器は棚とくっついているか、棚との接している部分に何かしらの仕掛けを目にすることができると考えたからだ。
「アズマさん、今手が空いていますけど手伝いましょうか?」
リアスにそう声を掛けられた。僕が今やろうとしていることを説明すると、食器棚から食器を出す作業を手伝ってくれることに同意してくれた。
「いえいえ、これには私にも非があることですし。閉まらないようにどうにかしてストッパーをしておけばよかった問題ですから」
「リアス、そんなに悲観的にならないでよ。誰にも想定できなかったことでしょ?」
リアスをそう言って励まそうとするも、気まずく微笑みを向けられるだけだった。
そうか。リアスも自己肯定感が低めなのか。それも、誉め言葉をすべてお世辞だと思ってしまう典型的なよくないタイプである。かく言う僕も似たようなタイプであるけれど。
彼はどのような経緯で苦しんでいるのだろうか。普段の雰囲気やヴェルスの態度から彼は優等生なのだろう。積極性に欠けるからか、ヴェルスの方が鋭い発言をしていることが多いように感じるけれど。それに、リアスはヴェルスを気にかけているみたいだし、見せ場を譲っている可能性もある。彼についても、今後どんどん内面を知れたらいいのだけど。
そして僕達はとくにこれ以上の言葉を交わすことなく、黙々と食器を取り出す作業を進めた。
「よし、これがカギだ」
残りの食器が少なくなってきたころ、僕は取り出すことのできないソーサーとその上に重ねられたカップを見つけた。ガラスが擦れる音というヒントを頼りにカップの持ち手を軽く摘まんでゆっくりと回せば、棚の奥のほうからガチャリという音が聞こえた。
「アズマさん、やりましたね!確かに私が通った道で間違いありません」
リアスは扉を開けて向こう側を確認しながら言った。
「良かった。じゃあ扉の向こう側も調べよう」
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