第5話「遠野鈴」

20XX年4月11日17時01分。車内。


「それで、話というのは何でしょうか???」

「すいません・・・。わざわざ出してもらって。改めて私は隣の部屋に住んでる遠野鈴(とおのすず)といいます。大学生なんですが・・・。」

「はい。」

「えっと・・・。」

「あぁ、私の名前は渡辺です。」

「渡辺さん。私のことを助けていただけないでしょうか??」

「助ける???何からですか・・・。」

「えっと・・・」

「あぁ、あのみすぼらしい男からですか???」

「・・・。」

「違いましたか???」

「いえ、あってます。あの人は私の同居人なんですが、最初の方は優しかったんですが・・・。最近は・・・。」

「あぁ、DVってやつですかね???あなたの傷はあの男からですか??」

「はい・・・。」

「そうですか・・・。私は何をすればいいんですか???」

「・・・。あの男を倒してほしいんです・・・。」

「倒す???殺すとか警察に突き出すではなくてですか???」

「先日、チンピラ複数人に対して戦っている渡辺さんを見て倒してくれるかなと・・・。」

「ほう・・・。」

「だめですかね??」

「いくら出せますか??彼を倒すのに。」

「え?お金ですか・・・。お金は彼に使われてしまっていて・・・。」

「う~~ん。私はね、よその街から来た悪い人なんです。お金がないなら少し受けづらいですね。」

「・・・。私の身体で払うと言ったら・・・。どうでしょうか??」

「・・・。えっと・・・。それはどういう・・・・。」

「あの人を倒してくれるならなんだってします・・・。」

「うう~~ん。それでは私は、あなたを傷つける男になりませんか??いずれ、ほかの男に私を倒せという未来はありませんか??」

「・・・。」

「そうですよね。あなたがそういうくらいピンチなのはわかりました。が、やはり警察にでも相談をするのが手っ取り早いと私は思いますよ。」

「警察じゃダメなんです・・・。警察に相談したことがばれれば私は・・・。殺される・・・。」

「・・・。わかりました・・・。少し鍵屋行きますよ。」

「え・・・。」


それから、私の部屋と彼女の部屋のカギの合いかぎを作った。

そして、車内に戻った。


「これが私の部屋の鍵です。あなたに一つ渡しておきます。」

「え??

「またあの男にDVをされたら隣へ逃げてきてもいいです。私がいなくても。ただし、玄関までです。玄関にはいったらドアロックとチェーンをかけておいてください。おそらく、構造は一緒ですからトイレも使っていいです。」

「・・・。」

「ただし、警察は呼ばないでください。先ほど申した通り私は悪い人なので・・・。」

「わかりました・・・。ありがとうございます。」

「それと・・・。あなたの部屋の合いかぎを貰えますか??」

「さっき作った奴ですか???」

「はい。DVを受けてるときでも受けそうな時でも恐怖を感じた時で構わないので私の部屋の方の壁を2回殴ってください。そうしたら私は駆けつけます。」

「・・・。わかりました・・・。」


そういって、鍵を交換してアパートまで帰ることにした。


「すいません・・・。ここで降ろしてもらえますか。彼がもう帰ってきてるので・・・。」

「わかりました。ではお気をつけて。」

「ありがとうございます。なんかあったらお願いします。」

「はい。」


彼女を道端で降ろしてから私は近くの駐車場に車を止めて部屋へ戻った。

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