第2話 頼もしい仲間達

 頼もしい仲間達。


 ティガーさんは異世界では勇者をしていた。

 金髪の金色の目で、異世界では物凄いイケメンだったけど、今は普通の好青年。

 理由は分からないけど、私に抱き着いてないと眠れないらしい。

 異世界では色々とあって、恋人になれて、さっき婚約。

 きゃっ、婚約よ、凄いと思わない。

 婚約が嬉しくって、泣いたらいいのか、飛び跳ねたら良いのか分からない。

 ちなみにティガーさんはブス専。


 メローネは異世界の聖女。

 異世界では超絶美人さんだった。

 今は普通の可愛い子で、銀髪で銀色の目。

 私の初めての友達で、頼りになる大親友。


 ダーリエさんは魔道具教授。

 眼鏡を掛けた賢そうな紺色の髪の女性。

 異世界と地球でほとんど変わりがない。


 女性教授の雰囲気はある。

 十人に訊いたら五人ぐらいはそう答えるかも。

 あとは会社重役とか言われそう。

 とにかくできる女性の雰囲気がある。

 そう言えば、慌てて取り乱したところをみたことがない。


 賢者のヴォルフさんは茶髪に白髪が混じっている気難しそうなお爺さん。

 私は優しいのを知っている。

 ヴォルフさんも異世界と地球でほとんど変わりがない。


 ヴォルフさんは真理の追究に余念がない。

 地球に来た半分ぐらいの理由は地球の書物が読みたかったに違いない。

 今も机の上の私の教科書を勝手に読んでいる。


 最後の人間に見える中性的な女性。

 彼女はドラゴンのレーベ。

 実は性別がない。

 精霊に近い存在みたい。

 ドラゴンの姿も人間の姿も自由自在。

 年齢さえ変えられる。

 恐らく、髪の毛の色も、目の色も変えられるはず。

 今は黒髪黒目で黄色い肌のどこから見ても日本人。

 ううん、スタイルと顔つきは西洋人に近い。

 もしかして、ハーフって訊かれることが多くなると思う。

 異世界では絶句するほどの美人だったのに、今は中性的な普通の人。


 そう言えばスキルって使えないの?

 ああ、せっかく無制約収納にダンスの映像を溜めたのに。

 楽譜もパァなの。

 ショックが大きい。


 でも、浄化スキルは聖女に必須よね。

 それが使えるなら、ひょっとして。


「【無制約収納】。なんだぁ。使えるじゃない。楽譜も入ってる」


「じじい、気が付いたか」


 ティガーはヴォルフさんをじじいと呼ぶ。


「おう、もちろんじゃい。ここはなんて魔力が濃いんじゃ」


 えっ、魔力が濃い?

 そう言えば、そうね。

 異世界の何万倍も濃いような気がする。


「たぶん、ここの文明は魔力を使わないのではありませんか。道具から魔力を全く感じませんもの」


 メローネの推察は当たっていると思う。


「ええ、私が知っている限り」


 パラレルワールドって落ちはない気がする。

 部屋の電化製品が魔道具に置き換わっていたりしてないのは、パソコンで判る。


 現状を確認しなきゃ。

 紙がヒラヒラと落ちて来た。

 きっと、女神様からね。


 簡単に言うと。

 ダンジョンが出現してるのは邪神の仕業。

 ダンジョンで人間やモンスターが殺されると負の力が邪神の力となる。

 金貨の換金は10枚までしておけ、理由は危険があるから。

 異世界の姿には【聖女変身】の言葉で変身できて、この姿なら聖女の切り札が使える。

 ただし、その姿の間は邪神に監視されるので、注意。

 聖女としての力がまだ眠っていて、それの覚醒のヒントは既にある。

 女神質問検索が使えるみたい。


 パソコンは使えるので、ネット検索。

 ほんとだ1週間ほど前にダンジョンが出現してる。


 スマホをチェック。

 あれっ、半年も経てば電池はなくなっているはずなのに、使える。

 女神様がやっておいてくれたのね。

 銀行の残高をアプリでチェック。

 うわっ、ほとんど残ってない。


 金貨10枚で、8万円ぐらいは堅いかな。

 だめ、全然足りない。

 毎月、財産を管理している会社から、毎月の生活費が振り込まれるけど、足りない。


「メローネ、この世界のお金は持っている?」

「ありませんわね」


 となると、仲間が就職するのでは全員の食費が必要。

 服も日用品も住む所も。


 もうどうせ平凡な人生は送れそうにないから、高校を退学しましょ。

 魔王を倒したら、平凡な人生が送れるかも知れないけど、いまは無理。

 なんて、ドラマチックな展開なの。


 まず、高校に電話。


「もしもし、1年B組の善地ぜんち想子そうこです。担任のかずら先生をお願いします」

「ちょっとお待ちください」


かずらだ。善地ぜんちか。留学したと聞いたが、帰って来たんだな。」

「高校を退学します。後で書類を提出しに行きますので」


「言っておくが、問題は起こすなよ。分かってるよな。あれをマスコミにタレこんだりするなよ。お前が恥をかくだけだ」


 かずら先生の冷たい声。

 そうよ、この先生も虐めの共犯。

 私の虐めを黙認してた。

 そのことは置いといて、なんと留学してたことになっている。

 異世界に行ってたけれど、正解と言えば正解。

 たしかにある意味留学よね。

 女神様がやってくれたのだと思う。

 ありがとう。


「ではまた」


 そう言って通話を切った。

 まずは身分証ね。

 これがないと、就職は無理。


「みんな、身分証はあるの?」

「ええ、女神様が用意してくれましたわ」


 メローネが代表して答えてくれた。


 みんなポケットから、免許証を出した。

 ティガーさんの名前は虎野門とらのもんいさむ

 メローネはひじり甜瓜めろん

 ダーリエさんの名前は匠師たくみし牡丹ほたん

 ヴォルフさんの名前は賢狼けんろう泰斗たいと

 レーベの名前は神竜しんりゅうれい


 日本人の名前ね。

 帰化したという設定かな。

 甜瓜めろんれいの免許証は原付ね。

 年齢が17歳と16歳になっている。

 5人の住所が一緒で、私のマンションの部屋ね。


 色々と問題はあるけど、とりあえずはオッケーみたい。

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