自称魔法使い×借金まみれ青年の同居生活【3-3】魔法使いの告白と、甘美な口の試練

とツバサが教えると、


「お前。さっき、アレクのことを魔法使いみたいなもんだと言った奴だな」


「お前じゃなくツバサ」


「そうか、ツバサという名か。くくくっ。アレクの奴、だから」


「え?」


「まあ、飲もう。ツバサ」


マクシミリアンが日本酒を進めてくる。


「マッさん。自分の酒みたいに、バッサーに勧めているけれど元々、それ俺の酒だから」


と大野が突っ込み、鳥越が笑った。


二人目の魔法使いは、再びドライイチジクを口にして、たっぷり味わう。


「こんなの、どんな高級な店でも食べたことのない味わいだ。それをアレクが手作りするなんて。あいつのことを馬鹿にしすぎたようだ。明日、謝らねば」


なんて、素直。


王位継承権十位、アレクセイが王国を去って繰り上がって九位となった従兄弟は育ちが大層いいらしい。


ツバサだったらここで意地を張りまくるところだ。


部屋に戻ると、飲み会に参加しなかったアレクセイが写真立てを開いていた。


そこには、初老の男性が写っていて、よく見ようとツバサはアレクセイの側に座る。


「オヤジか」


「今日は龍三郎の月命日なものでな。何か作って備えようと思ったのだが、マクシー来襲のせいで頭から抜けてしまって、謝っていたところだ。まだ龍三郎が亡くなって三か月だというのに。こうやって忘れていくものなんだろうな」


アレクセイと喋るのは久しぶりだ。


きっかけを作ってくれたマクシミリアンに感謝すべきなのかもしれない。


居間からは笑い声がかすかに聞こえてくる。


「この距離で聞こえてくるということは、相当盛り上がっているみたいだな」


「そのようだ」


「オヤジは俺の記憶の中では賑やかなのが好きだった人だから、今のアールハウスの状況を喜んでるんじゃないかな?」


「マクシーは迷惑をかけてないか?」


「もうここの住人みたいに馴染んでいるよ。マッさん、ああ見えて酒、弱いのな。大野さんと向井さんにガンガンに飲まされてた。あ、鳥越は明日も部活だから部屋に戻った。さっき篠さんも帰ってきて、昔からの知り合いみたいにするっと飲み会に溶け込んだ。普段は大野さんと向井さんと話もしないのに酒の力って凄いよなあ」


「そうか」


「ドライイチジクが美味いって、マッさん、しきりに褒めてたぞ」


アレクセイが手を合わせた後、父親の写真をしまう。


そして、ツバサの肩にコツンと額を乗せてきた。


「前、触れたのはいつだったか」


「誰かさんが、話すべきことを話さないから。⋯⋯あれ?言い返してこない。珍しすぎ?どうした??」


ツバサは手を伸ばして、ぎこちなくアレクセイの頭を撫でた。


「立場逆転だな」


「そうか。動揺してんのか。そりゃ、そうだよな。いきなり異界から従弟がやってきて、帰るぞって言われたら、そりゃ誰だって動揺する。⋯⋯いいのか。帰らなくて。滅多にない機会なんだろ?」


「帰ったって幸せになれないと言ったのはツバサでは?」


「そうだけど。でも、故郷だろ」


「元故郷だ」


「アレクセイ。適応障害ってさ、ストレスの元から離れると治るんだってさ。変なドキドキも少なくなってきたから、俺にはこの土地での生活が合っているみたい。心配をかけた。今までありがとう」


すると、顔を上げた実は本当に魔法使いだった男がツバサの両肩を掴んだ。


「いきなり何だ。ツバサこそ、どこかに行くのか?」


「行かないよ。もう大丈夫だって言いたかっただけ。ああでも、いい機会だから言っちゃおうかなあ」


「何だ?」


「十二月から小湊さんの部屋を俺に貸してくれない?もちろん家賃は払う。はい。これ、返済計画」


ツバサは携帯のメモ欄に書いた月の稼ぎの目標と、どんな仕事で稼ぐか箇条書きにしたものを見せる。


「面倒見られてばっかは、嫌だからさ。対等になりたいっ。⋯⋯その⋯⋯男として。なんでもできるアレクセイみたいに俺もなりたいんだよ」


「十年前の私を見たら、引くと思うが」


「マッさんの言葉でなんとなく想像はついた。でも、実物のアレクセイと会ってみたかったな。きっと仲良くなれたよ。あんた、根がいい人だもの。いいなあ、オヤジ、その頃のアレクセイを知っていて」


「ツバサ。まだ言っていなかったことを思い出した」


アレクセイが布団の上に優しく押し倒してきた。


「Mポイントのことだが、金関係と性的なことはポイントにはならない。だから、初めて会った日に抱いてしまったのは、純粋に願われたから純粋に叶えてやりたかったからで」


ツバサはアレクセイを抱きしめる。


「それ、早く言えよ」


なんとなく、まぐわいが始まった。


ツバサの身体をまず心ゆくまで撫でまわすのがアレクセイの恒例なのだが、今は性急だ。


「今日、何か、変だぞ」


布団の中で足を大股開きにされて、男として一番感じる部分の口淫を受けながら聞く。


すると、アレクセイがもぞもぞとツバサの身体の上を這い上がってきた。


「ツバサにとって、私は魔法を使わなくとも魔法使いだと言ったが、あれはどういう意味だ?」


「突然、やってきて命を救ってくれたろ?そこからいろいろ面倒を見て、俺の心と身体を回復させてくれた。魔法使いじゃなきゃ何だって言うんだ」


ツバサは今度は逆にアレクセイを寝かせ、下半身の付け根まで下がった。


雄を咥えると、「は、あっ」とアレクセイが吐息を漏らした。


アレクセイには何度もしてもらっている。だが、ツバサ自身は初めての口淫だ。


固くなりかけているアレクセイのあそこが、急激に硬度を増し、ツバサの口蓋にゴツゴツ当たって刺激してくる。


「ツバサ。ツバサ」とあまりにもセクシーにアレクセイが喘ぐので、喉奥まで咥えたくなる。


「んふっ⋯⋯」


えづくような感覚もまた気持ちがいい。


少ししょっぱい味もしてくる。


長さがあるので、全部はとても咥えられない。


頭を捕まれ、顔を上げさせられた。


「そんなことされたら、持たない」


今度はツバサがうつ伏せにさせられた。腰を持たれてシャクトリムシみたいな格好にさせられる。


尻を割られた。


今日は指じゃないものが入ってくる予感がある。


「ここ、可愛がっていいか?」


「みんな、まだ、飲み会中だって」


「でも、したい」


「子供か」


「なあ。頼む。お願い。ツバサ」


「それ、ずるいから」


と言いつつ、ツバサは頷いている。


程なくして温かい舌がすぼまりを押すようにして這い回り始めた。


「あ、⋯⋯ん」


枕に顔を埋めて、必死に声を我慢する。


舌の蹂躙は長く続いた。


腰を振って逃れようとすると、ツバサの雄にまずコンドームが装着される。


「俺じゃないだろ」


「おもらし防止のためだ。ツバサはよく布団を濡らす」


そう言われて、装着途中のが物凄く固くなった。


皺のすべてが舐められる行為が終わる頃には、そこが緩んだことが分かる。


器官じゃなく性器に変わった証拠。


いや、変えられたんだ。


そう思うと、全身が熱くなる。


アレクの尖らせた舌は、閉じられていたツバサのすぼまりにまで入ってきて、強烈な羞恥と甘やかな刺激を与えてくる。


続いて、指。


通販で届いた潤滑液がたっぷり付けられ、広げられていく。


前立腺いじめも忘れない。


トントントントン、触って叩いて、たまに撫でて。


ツバサを何度も悶えさせる。


声がもう我慢できなくなると、ようやくアレクセイが大きな手で塞いでくれる。


「入れるぞ」という前に「入れてくれ」と強請っていた。


彼の下半身の付け根から生えている硬い突起が、アレクセイの舌と手と潤滑液の力を借りて蜜壺に変わったツバサの穴に押し付けられる。


「ん、んんっ」


塞がれていても声は漏れてしまう。


入口付近で、いや、正式にはそこは出口なのだろうが、ツバサの器官を驚かせないよう慎重に行きつ戻りつしながら、アレクセイは腰を進めてくる。


馴染んでくると、女のような襞もない寸胴みたいな直腸を擦り上げ、前立腺を刺激。もっとツバサを泣かせようとする。


最後には腰を突き立てて、今現在のツバサの最奥を撫でるように触ってくる。


かすかな痛みとともに蕩けるような刺激。射精感が増してくる。


それをアレクセイが見過ごすはずもなく、双球を大きな手で揉みしだいてきて、やがてそこから手を放すと、ツバサを大きな身体で押しつぶしてきた。


そのせいで、アレクセイの雄がぐぐっと行き着くところまで入ってきて、同時にツバサは射精する。


意図しないコンドームの使い方に背徳感が増す。


まぐわいなら結構したが、セックスは東京の夜も入れて二回目だ。


アレクセイの愛撫や、囁く声、身体を揺らされる行為に初めての夜を断片的に思い出す。


その夜も満たされていたことを確認して、さらに身体が高ぶってくる。


なのに頭の隅はどこか冷静で。


それは、アレクセイがマクシミリアンに「やり残したことがある」と告げたせい。


それが終われば、アレクセイはどうするつもりなのだろう?


***


十二月一日になり、ツバサは正式にシェアハウスの住人になった。


荷物をアレクセイの部屋から引き上げる時、


「寂しい」


と彼から素直に言われて、顔が上げられない。


「同じ家の端から端に部屋を移るだけだって」


そう答えると、抱きしめてくる。


ツバサの腹のあたりに、アレクセイの下半身の付け根が当たって昂りをしっかり感じる。


昨晩も散々したばかりだ。


別れのような熱烈なキスを受けた後、


「ツバサ。聞きたいことがある。なぜ、マクシミリアンのことをマッさんと呼び、私はアレクセイのままなのか?」


「それは、なんとなく、ニックネームを呼びそびれて」


すると、アレクセイが王子様みたいに、ツバサの手の甲に口づけてくる。


いや、そういえばこいつは魔法の国の本物の王子様だった。


アレクセイはツバサの目を見つめ、


「ツバサもアレクと呼んで欲しい。いや、ツバサこそアレクと」


「お、おう。分かった。呼べたら呼ぶ」


本当はツバサもフランクにアレクと呼んでみたかった。

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