第31話 【耐え・3】
その後、六層の探索を進めたがゴブリンの集団とウルフの集団以外は見かけなかった。
二層の強化版みたいな感じだなと、六層の探索を終えてそう感じた。
「さてと、行きたくはないが行くか……」
六層での探索をしながら数日過ごした俺は、遂に実家に顔を出す日になった。
東雲家に送ってもらうと、要らぬ誤解を生むのでタクシーで向かった。
東条家の本家は福岡の山奥にあり、九州全域に活動拠点を伸ばしている。
しかし、今はその活動拠点も徐々に小さくなっているらしい。
「子供の頃は思わなかったけど、こうみると東条家は見栄っ張りな家だよな……」
そもそも本家と分家が数人なのに対して、使用人を数十人と雇ってこんな家に住んでる。
東雲家も同じく大きな家だけど、こんな風な家は持っていない。
「一様、おかえりなさいませ」
「無理に様付けで呼ばなくていいよ。どうせ今日中にまた追い出されるんだから」
門番から〝様〟付けで呼ばれた俺は、そう言い返して敷地内に入った。
案内役が出て来て、俺はそのまま
「何故、覚醒した事を伝えなかった?」
部屋に入った瞬間、俺の父親——
「捨てられてるのに教える必要はありましたか? そもそも、こちらからの連絡は取らないと出て行かされる時に言われていたので」
「ふっ、言い訳だな。それで、特殊技能の一つでも目覚めたのか?」
「いいえ、覚醒して手に入ったのは【剣術】だけだったので低ランクの迷宮に偶に行ってるだけですね」
「ちっ、覚醒も遅ければ使えもしないのか。態々呼んだ意味がないなッ」
ゴミを見るかのような視線を俺に向けながら、戸籍上はまだ父親はそう言い切った。
そんな奴のその近くで見ていたブランド物の服に身を包んだ母——
「そもそも一が使えるなんて思う方が貴方の誤算よ。こんな年齢まで覚醒出来なかったのよ? 使える筈がないでしょ」
「儂の血が少しでも入ってるから期待をしたんだがな、期待外れだな……いつまで居るつもりだ? さっさと出て行かんか」
「……」
ここで言い返せば下手に目を付けられる。
俺は唇を噛み何とか耐え、その部屋から出た。
帰り際、出迎えた際は〝様〟付けで呼んできた奴等は俺の事を父親と同じような目で見て来た。
そんな奴等に構う事無く、俺は家の門から外に出た。
「自分達が呼んだ癖に会って数分で帰すって、本当に嫌な家だな」
俺は愚痴を言いながらスマホを取り出し、大輝さんに連絡を入れた。
「一君。よく耐えたよ。頑張ったね」
「マジで気分が悪いです。今日はもう徹夜で迷宮に潜って暴れてこようと思います」
電話に出た大輝さんに対し、どんな事を言われたか聞かれたので言われた事を教えると、大輝さんから労いの言葉を掛けられた。
そして電話をしながら、帰りのタクシーが来るのを待っていると東条家の車が目の前を通り、そのまま俺の直ぐ近くで止まった。
「誰かと思ったら、捨てられた元兄じゃないですか」
「はぁ、会わなくて済んだと思ったのにな……」
「酷いですよ? 弟に向かってそんな事を言うなんて……また怪我しちゃいますよ?」
手に雷を宿しながら笑みを浮かべる男——
幼少期に覚醒し、魔法系の覚醒者として活動をしている。
「まあ、いいですよ。今日は機嫌がいいので見逃してあげますよ。さっさと東条家の敷地から出て行ってくださいね?」
態々、俺の前で降りた癖にまた車に乗った信二はそう言って去っていった。
「マジであんな奴等と血の繋がってる事自体が嫌だけど、俺もああなっていた可能性があるんだよな……実家の奴等を見ると、本当に東雲家に対する恩が大きく感じるよ」
それから少しして、タクシーが来たので俺は東条家から去っていった。
帰宅後、俺は直ぐに迷宮に入ろうとしたのだが、アパートの前に瑠衣が車で待っていた。
「一。ご飯食べに行きましょう」
「いや、飯ってこれから迷宮に行こうと思ってたんだけど……」
「良いから! 今日は嫌な人達に会って疲れたでしょ? 好きな物を沢山食べて元気になりましょう」
瑠衣は俺の腕を引っ張りながらそう言うと、車の乗せられて俺は昔から瑠衣の家族とよく来ていた焼肉屋連れてこられた。
瑠衣から車から出されると、既に予約していたのか部屋に案内された。
「瑠衣。ありがとな、気使ってくれて」
「当たり前じゃない。一は大事な私の婚約者なんだから」
「破棄されてはいるけどな……よしっ、今日はとことん食べるぞ!」
「食べるぞ~」
そうして瑠衣に励まされた俺は、気持ちを切り替えて焼肉を楽しむ事にした。
肉食べて米食べて、サラダも麵も食べた俺はお腹いっぱいになって実家での嫌な気持ちもいつの間にか消えた。
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