第21話 【下へ・1】


 東雲家との食事会の翌日、俺は第三層に改めて降りて来て探索を始めた。

 装備は鉄心さんに作ってもらった物を付けている。

 瑠衣と話をして、死への恐怖心をちゃんと持とうと思って装備はこのままいく事にした。


「階層を降りる毎に新たな魔物が出で来るって感じか、新しい魔物はスライムみたいだな」


 ぷるぷるとした体を持つ魔物、スライム。

 魔法を放つ個体が多く、その見た目通り物理に対する耐性が高い。

 しかし、スライムの倒し方は簡単で半透明の体の中心部にある核を壊せば倒す事が出来る。


「一番難しい難易度だし、そりゃ魔法は使ってくるか」


 発見したスライムに近づくと、スライムは俺に向かって【水属性魔法】を放ってきた。

 その威力はかなりあり、普通に食らえば以前までの装備なら即死だっただろう。

 そして二発目の準備をしているスライムに対し、俺は一気に走り出し核に向かって剣を突き刺した。

 スライムの体に剣が当たると、剣は弾かれる事は無くスッとそのまま刺さり核は壊れた。


「いけるとは思ってたけど、スライムの体も弾く事は無かったな……」


 その後、俺は三層の探索を始めた。

 予想通り、ゴブリンやウルフといった以前の階層に居た魔物も道中発見した。

 強さは三層基準になっており、一層のゴブリンに比べたらここのゴブリンの方が少し強い気がした。


「二層から薬草が出たから、ここにも何かあると思ったんだけどな……」


 三層の探索を始めて二時間が経ち、俺は少し気持ちが落ち込んでいた。

 二層で薬草が採れる事を知った俺は、三層も何かしら素材が採れるかなと想像していた。

 鉱石系だったら、嬉しいなと思ってたが未だに見つかっていない。


「ま、まあ薬草だけでも東雲家は喜んでくれたし……」


 そう俺は考えるようにして探索を続けていると、何やら強い気配を感じ取った。

 これまで一層目ではハイゴブリン、二層目ではフォレストウルフと戦って来た俺はこれがこの階のボス級魔物だと判断した。

 俺はそいつの気配に近づいていき、姿を確認した。

 スライムよりも数倍大きな体をしたスライムが、複数のスライムを従えて洞窟内を移動していた。


「ジャイアントスライムか、ランク上がり過ぎだろ……」


 ジャイアントスライム。

 普通のスライムの数倍の大きさを持ち、自らが作り出したスライムと共に襲ってくる。

 普通のスライムよりも魔法に慣れており、また魔力も高いので長期戦になればかなりきつい。

 またこいつのランクは、Cランクではじめて俺はそのランクの魔物と戦う。

 ちなみにハイゴブリンとフォレストウルフは、共にDランクの魔物として図鑑に載っていた。


「ジャイアントスライムもスライム同様に体の中心部にある核を壊せば倒せるが……体が大きすぎて、一撃で核を狙うのは難しいだろうな」


 ジャイアントスライムはスライムの何倍も大きく、核も体に合わせて少し大きくなっている。

 しかし、体が大きいせいで剣で突き刺す程度では核を壊す事は出来ない。


「まあ、一度で駄目なら何度も剣を振れば核に届くだろう」


 作戦は至ってシンプル。

 俺は洞窟の壁にピッタリと引っ付き、ジャイアントスライムが近くに来るまで待機した。

 そして俺の前の通路をジャイアントスライムが通ろうとした瞬間、俺は足で壁を蹴ってジャイアントスライムに奇襲を仕掛けた。

 俺の存在に気付いていなかったのか、奇襲は成功してジャイアントスライムの一部が剣によって削がれた。


「ッ!」


「行き成り攻撃されて怒ってるな。まあ、当然か」


 奇襲された事にジャイアントスライムは怒り、従えてるスライムと同時に魔法を放ってきた。

 水や風、土系の魔法に俺は剣と盾を上手く使って躱しきった。

 何発も魔法を放ってくるスライム達だが、ジャイアントスライム以外のスライムは魔力も少ない。

 何発も放ってる間にジャイアントスライム以外は、魔法を放てなくなり俺は剣で処理をして一対一に持ち込んだ。


「ッ!」


 ジャイアントスライムは部下を倒され、更に怒ってその巨体で俺を踏みつぶそうとしてきた。

 だが体が大きく、逆に隙だらけのジャイアントスライム。

 ジャンプした瞬間、核が動いて表面側に移動したのを見ていた俺は、地面を蹴り俺もジャンプしてジャイアントスライムを切り裂いた。

 核に刃が届き、核は砕けてジャイアントスライムは倒れた。


「んへぇ、粘っこい……」


 倒した際、丁度俺はジャイアントスライムの下に居た為、スライムの粘液が体にドバッと掛かった。

 討伐報酬でもある魔石と今回もスキルオーブを拾い、取り合えずこのまま過ごしたくないので風呂に入りに現実世界に戻った。

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