無限迷宮で鍛えていたらいつの間にか英雄になっていた件

霜月雹花

第一章

第1話 【覚醒した日・1】


 世界に迷宮ダンジョンが現れ始め、100年が経ち人類はその世界に慣れていった。

 覚醒した者にはステータスと迷宮に入れる権利が与えられ、非覚醒者と覚醒者の差がある世界となった。


「……まさか俺も覚醒者になるなんてな」


 俺の名前は東条とうじょう はじめ、高校三年生の18歳。

 非覚醒者として過ごし、卒業後の進路に悩む生活を送っていた。

 だが誕生日を迎えた日、俺は覚醒者となった。


「これが覚醒者だけが見えるステータス。本当にゲームみたいなだな……」


 覚醒者だけの特権の一つ、ステータスを俺は表示させた。


名 前:東条とうじょう はじめ

性 別:男

年 齢:18

レベル:1

体 力:16

魔 力:12

筋 力:20

知 力:17

敏 捷:20

器 用:20

〝才能〟

【剣術:1】【身体強化:1】

〝特殊技能〟

【無限迷宮】

〝加護〟


「レベル1にしては能力値は高い方だな……」


 レベル1の能力は、大体10から20の間で決まる。

 それまでの人生でどれを頑張ったのか、どんな能力に秀でているのかで決まるらしい。

 俺の場合、筋力・敏捷・器用の3つが最大値。


「別に筋トレとか頑張ってたつもりは無いけど、器用に関しては昔から裁縫とかしてたからか?」


 幼少期はそこそこ大きな家に住んでいたが、とある理由から中学生の頃から一人暮らしをしている。

 最低限の金は与えられていたが、無駄遣いは出来ない為、日々節約をして過ごしていた。

 特に肌着は見えないから、多少破れても修繕して着続けていた。


「特殊技能もあるみたいだけど、名前を見ても特に分からないな……」


 才能と特殊技能の二つの差、それは習得の難易度である。

 才能は日々の訓練や、迷宮で偶に手に入る〝才能の球スキルオーブ〟で習得が可能。

 特殊技能は訓練やスキルオーブでは習得が不可能。

 未だ習得方法は明確化されておらず、覚醒時に与えられるか神々からの加護によって得られるかの二つしか知らされていない。


「名前からして迷宮に関係してそうだが、まずは覚醒者として登録を済ませないとな」


 幸いな事に今は、高校三年の最後の夏休み。

 バイトも今日は誕生日だからと休みにしていたおかげか、今日は自由に過ごせる。

 それから俺は、出かける用の服装に着替えて自転車に乗って駅に向かった。

 そして駅から都心に移動し、覚醒者協会福岡支部前に到着した。

 

「すみません。今朝起きたら覚醒したんですけど、受付はここであってますか?」


「はい。合っていますよ。覚醒者さんですね。ではこちらの用紙に必要事項に記入してお待ちください」


 協会の中に入った俺は受付に並び、登録用紙を受け取った。

 それからその用紙に記入して、10分程待つと受付の人がやって来て別室に案内された。

 案内された部屋に入ると、用紙を基準に登録テストを行うと伝えられた。


「戦士タイプですので、身体能力テストを行いますが体調の方は大丈夫でしょうか?」


 受付の方からの質問に対し、俺は「大丈夫です」と答えテストが始まった。

 テストは簡単で身体測定に近く、ジャンプ測定や反射神経テストが加わった簡単なものだった。

 その後、身体能力テストが終わると更に別室へと通され、今度は対魔物を意識した機械との戦闘を行うと伝えられた。


「武器に関しまして、あちらに取り揃えておりますので好きな武器を一つ持って中にお入り下さい」


 剣や短剣、弓や槍と様々な武器が置いてあった。

 授業で少し習っただけだが、才能として現れた【剣術】を信用して剣を使う事にした。

 軽く剣を振って動きを確認した俺は、テスト開始のボタンを押して戦闘を始めた。


「キキッ!」


「ッ早いな」


 人型の機械はかなり早い動きで襲い掛かって来た。

 しかし、反射神経も覚醒したおかげで高くなっていたおかげでダメージを負う事無く回避出来た。

 俺はそのまま体をグルッと回転させ、機械に向かって剣を振り下ろした。


「キッ!」


 俺とは違って機械は真面にその剣を受け、重心がブレて俺はその隙を見逃さず更に追い打ちした。

 そうして機械をボコボコにすると、終了の合図が鳴り動きを止めた。


「お見事です。覚醒したばかりでこれ程の戦いを出来る方は少ないですよ」


「ありがとうございます。授業で剣術を習っておいて良かったです」


 受付の人にそう言った後、俺は剣を元の場所に戻して別室に移動した。

 最後は簡単な質問が行われ、無事に俺は覚醒者登録証を受け取った。

 覚醒者はランク付けされており、強さは勿論の事、迷宮での活躍度によってランクが付けられる。

 下から〝F、E、D、C、B、A、S〟というランクが付けられる。

 またSランクはほぼ上限な為、その同ランクでも強さが違う覚醒者も多い。


「俺がSランクになれるかどうかは、ほぼこの未知の特殊技能に掛かってるか」


 登録を終えた俺は、真っ直ぐ家に戻らず家から30分程自転車で移動した先の森の中に居た。

 ここは知り合いの土地で、この時期は人も少ないから自由に訓練に使っても良いと許可されている。


「さてと、どう使うのか正しいか分からないな……」


 特殊技能の使い方は人それぞれな為、俺は色んなやり方で起動しようとした。

 しかし、どうやっても起動する事が出来ず、悩みに悩んだ末にステータスの【無限迷宮】をタップした。

 すると新たな画面が表示された。

 俺はこんなにも簡単だったのかと、この数十分間の格闘が無駄に感じながら画面を確認した。

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