翼を持たない者たちへ

三三九度

プロローグ

 よく晴れた月曜の昼下がりだった。いつも島全体を覆っている分厚い霧は強風によって吹き流され、はるか向こうの水平線まで見渡すことができた。風は冷たいが、空には雲ひとつなく、うららかな春の日差しが降り注いでいた。

 誰もが退屈な授業にあくびを噛み殺し、夢と現実のはざまを行ったり来たりいていた。

 あの声が聞こえるまでは。

 その日、その時、その瞬間。島に響き渡った絶叫は、学園にいる全員を現実世界に引き戻した。

 生徒たちが教室の窓に殺到し、時計塔の下に目をやった時、ペパー・ラフィネはすでに死んでいた。

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