犬飼さんは目立ちます!
猫踏み三年
第一章 犬飼さんは目立ちます!
第1話 犬飼さんは話したい
犬飼凛は絶賛ボッチである。
春の風が少しぬるく感じる五月の日、犬飼凛は高校の教室で一人でいた。
それは口下手のせいもあるが、昔学校で起きたある事件のせいでもある。
そのせいで事実を知らない人には凛は怖い人と思われている。
それを訂正できるほど、人と話せるコミュ強では無かったのだ。
元々中間一貫校であり、少なからず同学年の友達は居たのだが、高校を境にクラス替えが行われてしまった。
先生たちのありがた迷惑により、仲の良い友達は1人もクラスメイトにいなかった。
しかし、休憩の時間などに話に行けば良いものを、元来頑固な性格な凛は
これを機にクラスメイトと話せるようになり、友人以外に話しかけないこの性格を治す。
そう考えていたが、考えるのと実行するのは別であり、一月も経とうとしているのに、会話といえば家族と、友人とのLINEだけである。
クラスメイトとの関わり方がわからない、もっといえばどう話しかければいいのかさっぱりである凛は一つの言論に出た。
スマホで聞こう
スマホを開いて文字を打ち込む、
友人 作り方 話しかける方法を検索すると色々出てきた。
その中で一つ、凛のビビッときたサイトを見つけた。
同じ趣味なら会話をしやすい。他人との共通点が見つかれば親近感を覚える。
当然と言われれば当然の回答であるが、凛は痛く気に入ってしまった。
凛の趣味は料理、そして犬などの動物が大好きでよく動画を見ている。
料理を高校生ながら趣味としている人はクラスメイトでは聞いたことがない、故に動物好きを探そう、もしくは別の趣味を見つける。
その中で少しはしたなくも、簡単にクラスメイトの趣味を知る方法をやってみた。聞き耳を立てる。
「あんさー?この後ど?」
「あり。」
「よっしゃ」
ひどく短く、そして内容が凛には到底理解できなかった。
この後何をするのだろうか、中身はわからない。
それで別の人を聞いてみた。問題児のゲーマー男子である。
学校を遅刻ばかりしてゲームをしている人だが、友達の一人も遅刻こそはしないが、かなりのやり込みをしているため遊びに行ったことがない友人を思い出した。
「そういえば、あのゲームはマジだった。」
「マジってなんだよ。語彙力どこいった?」
「いやいや。やればわかるんだよ。もう勇気と凪とこのゲームばっか話してる。」
「エボアドだっけ?VRMMOも今はもう珍しくないからよ。何が凄いんだよ。」
・
・
・
「ということでよ?お前もやってみるべ。」
「あー、必要なスペックも足りるな。手助け求む。」
「当然。あとで通話な。」
エボアドと呼ばれるゲームをしている、そしておすすめされて友達と一緒にやる約束をしていた。
ここで凛はゲームに興味が出てきた。
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異世界に新しいあなたで冒険しよう。
サイトを開くと、まずは動画が流れてくる。
草原の真ん中で、大きなサイが突進をする。それを鎧で固めた1人の男が身長程の大きな盾でサイを受け止める。後方から魔法使いの服を着た女が火の魔法を飛ばし、サイの行動を封じた。そして騎士のような格好をした男が剣でサイを切り伏せた。
場面が変わり、小さなドワーフが滝汗をかきながら必死にハンマーを振り下ろし、かっこいい剣を作り出した。
場面が変わり、森の中を鹿が歩いている。それを木の上に居たエルフの女性が弓を引きダメージを与える。エルフが口笛を吹くと、犬が飛び出し鹿を倒した。
次は海の画面になり、大きな船に乗る海賊と、海軍が戦闘をしていた。銃みたいなものを撃ちながら、激しい戦闘をしていた。
海面から出てきたクラーケンが両方の船を壊した。
凛は綺麗なゲーム画面をまじまじと見ていたが、やってみたいと思う気持ちはなかった。
凛はゲーマーではない。
子供の頃から読書家ではあるが、ゲームをやってみたのは高校生、詳しくいうと先月のことなのだ。
高校入学の祝いとしてVR機を祖父母から頂いた。
頭に装着するだけでゲームの世界に行けると驚いたが、ゲーム音痴の彼女は有名ゲームではなく、もふもふの動物たちと触れあえるゲームをたまにやる程度である。
VRMMOなどやったことが無いのだ、戦いに魅力を感じずらい。
やはり別の趣味がいいのかと彼女は思いながらも、最後まで動画を見続けた。
最後に一つの大きな畑を遠くからタイムラプス方式で流すものであった。
近くの町から大勢の人が歩いている。それぞれの場所で土を耕し、野菜の種を蒔き、井戸から水を汲み、撒いていく。
その日が何日も続いていき、芽が出て、葉がどんどん出てきて、実がなった。
まるで日本の農家の一年を流していたかのような、しかし確かにゲームであったがリアリティがあった。
あなたの想像以上のリアルなNPCを実装。人との境目は感じない住民との関わりも楽しめます。
最後に町の住民たちのたくさんの画像と共に動画は終わった。
動画を見終わった時、凛は購入を固く決意していた。
口下手な私でも友達を作る練習ができるかもしれない。このゲームにいる人たちはみんなゲームが大好きだから、知らない他人だけど親近感はあるはず。
それにゲームの住民たちもリアルの人と変わらない、つまりはお話をして友達になれるのだ。
私はゲームで友達を作ることにした。
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