第382話 クリスマスイルミネーションを観に行った理由🎄

 クリスマスイルミネーションを観に行った日、私は些細なことで父と喧嘩し、散歩してくる、夕食は其々で!!と、感情に任せて家を飛び出した。


 スマホと財布、家の鍵だけを持って少し歩き、一番家から近い喫茶に入ろうとした。が、その喫茶は夕方六時閉店の、ラストオーダー夕方五時半の店だった……。ラストオーダーの時間を過ぎてしまっていることをスマホで確認した私は、更に駅の方まで歩いた。


 昔懐かしい幼稚園の前まで来ると、通りの向かい側にもう一軒喫茶店がある。道路を渡り、店の張り紙を確認したがラストオーダーと閉店の時間が書いてなかったので、ついまだやっていると思い込み、入り口の硝子の引き戸を開けた……。


「お客様、申し訳ありません」

「ラストオーダー過ぎてます」


「……あぁ……そうですか」

「それならしょうがない……」


 私はすごすごと引き戸を閉めた……。


 心のなかで舌打ちすると私はそのまま駅に向かい、線路の向こう側に渡るとそのままショッピングモールに向かった……。


 ショッピングモールの広場を歩いていると、そこにはライトアップされた大きなクリスマスツリーが飾られていて、周りの暗闇を明るく照らしていた……。


 食事を済ませたら後でゆっくりと見ようと思い、私はそのまま広場を突っ切って奥へと進み、ペットホテルの隣に併設されていたマックに入った……。


 元よりやけ食いするつもりはない。食べ物に無駄にお金を掛けたくないので


『ハンバーガーのバリューセット』

且つ、『ポテトにガーリックバター風味』


をつけて、カクヨムの作品を見るなどして過ごす……。


 ちょっと周りを見渡せば、宿題や受験勉強をする人、学生同士でワイワイ談笑する人達、小さな子供を連れた保育園帰りと思しき母親・父親、デートに来ていちゃつくカップル、パソコンを広げてハンバーガーや珈琲をお供に仕事をする人、バイト帰りと思しき若者たちが飲み物と、Sサイズのマックフライポテトを二人でシェアし、気分転換にお喋りしているの、或いはテイクアウトを待っている疲れた人達……。


 そこに集まった人達が様々な人生のワンシーンを私に観せてくれていた。しかも、全く意図せずに!!


 私はカクヨムを読みつつ、様々な人達をひたすら観察した……。




 食事も終わりブラックのアイス珈琲を飲み干すと、私は店を出て先程通り過ぎた広場へと戻る……。


 寒いからベンチに長く座る人もおらず、しかし、まだそんなに遅い時間でもないから、帰り道の人達が思い思いにクリスマスイルミネーションに魅入っていた……。


 私もイルミネーションに魅入った一人として一番手近なベンチに腰を降ろし、ライトアップされたクリスマスツリーやテラスモール湘南の装飾ライトをぐるりと見渡す……。


 ……嗚呼、やっぱり何度見ても綺麗だなぁ。


 そうして座り始めてから暫く経つと、不意にクリスマスツリーのスピーカーから音楽が流れて、再生されている音楽に合わせてツリーのLEDライトが様々な『光のダンス』を私に観せてくれた……。


 私はその『光のダンス』の一瞬を捉えようと思わずスマホのカメラを向けた……。


 ……うん、よく撮れてる!


 私はしばしの時間『光のダンス』を楽しんだ。そして三分〜五分位でダンスが終わると、ツリーは再び静かに静止されたライトアップに戻り、音楽もパタリと止んだ……。


 『光のダンス』の後の余韻にしばらく浸っていた私だが、いい加減寒くなって身体が冷えてきた。


 もう気は済んだだろう?

私は途中、父への申し訳のつもりで駅前ローソンで『クイニーアマン』を一つ購入し、温かい玄米茶を少しずつ飲みながら身体を温めつつ、家に帰った……。


 玄関は先ほど出掛ける時に施錠したはずなのに何故か鍵が開いていた。


 玄関ホールに入った私は玄関ドアーの鍵と掛けがねを閉め、傍らの洗面台で手洗いなどを済ませると、そのまま父には何も告げずに寝室へと滑り込んだ……。




 翌日、私達親子は


『おはよう』


の一言で直ぐに仲直りした……。


 時が解決してくれた……。

なんでも無いこと……。




 これが私がクリスマスイルミネーションを観に行った理由……。

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