第32話 荒れる成人式1(明未の視点)

2029/1/7(日)AM7:00


 この日の朝、蘭お姉ちゃんが「眠いっす…。」と言いながら身支度をして、東京駅から新幹線に乗り、粟駒高原駅に着くとすぐさま、ママが迎えてくれて、わたしはこう聞いてみた。


「これから地元に行くんでしょパパ?」

「ああ、やっとご挨拶に行けるけど、どっちから先に行く?」

「あーし先にパパの実家に行きたい!。行ってとっとと追い返されたい!」


 と言い出すとパパが気まずそうに。


「母さんなら本当にやりそうだ…。」と俯きながらそう言った。わたし達は先に、パパの実家に挨拶しに行く事になったんだけど、玄関先で悦子さんがセールスマンを追い返すような顔をしながら。


「何しに来たの?、あんた達の顔なんか見たくないって言ったでしょ、早く帰りなさい!」と、パパの予想通り怒鳴って来た。横に居た敏郎さんが「母さん、そんな言い方しなくても、折角東京から来てくれたのに…。」と宥めていた。パパが(やっぱりこうなるか…。)と言う顔をしてる中、蘭お姉ちゃんが何を思ってか!。


「あの~、一応ダメ元でお願いがあるんすけど、ボクお年玉欲しいっす!」

「あっ、あーしにも下さい、一応まだ未成年なんで。後めいみんにも!」

「あんた達にあげるムダ金なんか無いわよ、二度と来ないで頂戴!」


 と悦子さんに怒鳴り返され、ドアを閉められた…。すぐさま、パパが呆れながらこう切り出す。


「お前ら『お年玉下さい』とか言うなよ、しかもよりにもよってあの母さんに…。」と言うとママが「だって欲しかったんだも~ん♪」と言うと蘭お姉ちゃんも「ボクもっす!」と、2人共反省してない感じだった。わたしとパパが呆れてる中、後方から「兄さ~ん!」と女性の声がした。


「おお克恵、去年のお盆以来だな。悠介君も」とパパが言うと、悠介さんも「お久し振りです、お義兄さん」と続けた。パパが2人を差しながら。「皆、紹介する。妹の克恵と、その旦那の悠介君。恵介君3歳半と、悠克(ゆうか)ちゃん1歳半だ。」と紹介してくれた。


「初めまして皆、『小寺克恵こでらかつえ』です。ごめんね皆、母さんが色々酷い事を言って…。」と言うとパパが「いや、最初から想定済みだから…。」と力無く答えた。


「所で兄さん達、これからどうするの?」と克恵さんが聞くとパパが「ママのご両親にご挨拶しに行く所なんだ」と言うと克恵さんが「もしお邪魔でなければ、あたし達も伺っても良いかな?」と言うとママが「是非来て下さい、大歓迎ですよ!」と言うと蘭お姉ちゃんも「ボクもっす!」と同調した。


「わたしもパパの妹さんと話をしてみたいと想ってたんだよ」と言うとママが「じゃあ皆であーしん家にレッツゴー!」と言ってそれぞれの車に乗ろうとしたその時、「あれ、もしかしてヅラヅラさん?」と身長180cm位ある30歳位の男性がパパに話し掛けて来た。


「島泉さん?、お久し振りです」とパパがそう言いながら会釈した。わたしが「パパの知り合い?」と尋ねると「デビュー直前迄勤めてた職場の同期さんだよ」と言うと蘭お姉ちゃんが「ああ、例のブラック企業すか?」と言うと島泉さんが。


「そうなんだよ。ヅラヅラさんがバックレた後に俺が正社員にさせられて、毎日定時残業や板挟み地獄なんだよ…。」

「ははは、そうなんですね…。じゃあ俺達はこれから妻の実家に、新年のご挨拶に行くのでこれで失礼します…。」


 とパパがそう言ってわたし達は車に乗り込んで出発した。出発直後、わたしは頭に来て。


「何なのあの人?。パパの事を『ヅラヅラさん』とか呼んでるのを聞いてて、段々怒りが込み上げて来たよ!」

「ボクもっす!。てかパパの居た職場って、あんな人ばっかりだったんすか?、そりゃ辞めたくもなるっすよ!」

「周りに流されて惰性だけで生きてると、ああなっちゃうんだねえ~…。」

「俺は運が良かっただけだよママ」

「わたし、ああならないように頑張るよ!」

「ボクもっす!」


 こんな感じで語り合いながら、ママの実家へと向かった。到着後、蒼乃さんが「いらっしゃい、皆東京からわざわざ来てくれて有り難う」と出迎えてくれた。アビーさんが「ところでそちらの皆さんは?」との問いにママが「パパの妹さん一家」と紹介してくれた。


「すみません、急に押し掛けて来てしまって、しかも子供達まで連れて来て…。」と挨拶してすぐさま悠介さんが「あの~これ、つまらない物ですが…。」と差し入れを渡すと蒼乃さんが「あら~すみません。さあどうぞ、上がって下さい、ただ…。」と言った後、一呼吸置いてママに。


「丁度今、ざくろちゃん、初ちゃん、そして瑠実ちゃんも居るけど、それでも良い?」と言われ、数秒間の沈黙後。


「構わないぜ、ルミーもそう言ってるし」と蒼絵お姉ちゃんが現れて、そう言うと蘭お姉ちゃんが。


「蒼絵お姉さん、お久し振りっす!」

「わたし達3人は学芸会以来だね、蒼絵お姉ちゃん」

「そっか、俺達と違ってママはこっちの高校に通う為に帰ってたからな…。」

「皆、立ち話も難だし、取り敢えず中に入ろーよ?」


 ママのその言葉に促され、わたし達はお邪魔した。蒼乃さんがわたし達をもてなす準備をしていると、ざくろお姉ちゃん、初お姉ちゃん、そして瑠実お姉ちゃんも現れ、わたしも含め皆で手伝った。準備が終わり、乾杯してすぐさま、克恵さんが。


「瑠実ちゃん、兄さんが色々申し訳ない事をしてごめんなさい…。」と開口一番、瑠実お姉ちゃんに謝罪した。パパもすぐさま「俺も本当に済まなかった!」と深々と頭を下げると瑠実お姉ちゃんが。


「もう謝らんでええ。あびる姉の宣言通り、ホンマに大ブレイクしたから許したるわ」

「瑠実お姉様の言う通りですわ!」

「くくく。流石我が眷属、我の千里眼に狂いは無かった…。」


 こんな感じで、皆で楽しく語り合いながらお昼ご飯を頂いた。ていうか、何かこのやり取りも久し振りで嬉しいよ…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る