第13話 明未に寄り添う3人3(明未の視点)

2028/10/22(日)AM8:50 (明未の視点)


 レコーディング当日。わたしは朝食の洗い物を終えて鶴牧家に向かうとあびるお姉ちゃんが出迎えてくれた。


「おはようあびるお姉ちゃん。ていうかゴメンね、送迎させてしまって…。」

「気にしなくてもイイよ~♪。2人送るのも3人送るのも大して変わんないし」

「てか、小6女児を1人で歩かせる訳にも行かねえだろ?。気にしないで乗りな!」


 と蒼絵お姉ちゃんに促されて車に乗せて貰い、氷の里ホールの駐車場に到着すると、既に桂お兄ちゃんとBerryenの他のメンバーが待っていた。


「おはよう桂お兄ちゃん、今日は宜しくお願いします」

「こちらこそ、俺も今日のレコーディング楽しみにしてたんだよ実は。じゃ、スタジオに入ろうか?」

「その前に皆にお礼が言いたいんだけど…。」


 と言って一呼吸置いて、こう切り出す。


「皆、智枝がわがまま言って、本当にごめんなさい!。特に桂お兄ちゃんにはこの間、うちの家族が奢らせまくった、って智枝から聞いたよ…。」


 こんな感じであの一家に代わって謝ると、桂お兄ちゃんが。


「気にするな。ここ迄来たからには、とことん付き合ってやる!」

「そうだよー、めいみんが謝る事無いよ~♪」

「まあウチらも、他のボーカルのバックバンドを1回は経験してみたいと想てたトコやし」

「瑠実お姉様の言う通りですわ!」

「くくく。せいぜい頑張るが良い、我が眷属達よ!」

「お前も手伝うんだよ、ザック」


 と蒼絵お姉ちゃんとざくろお姉ちゃんが言い合う中、わたし達はスタジオに入って行った。早速スタジオに入って出来立てほやほやの新曲を聞くと、あまりにも良い曲だったので感動しながら。


「素敵!。これが、わたしの曲になるんだ…。」

「てか凄いやないけ桂兄!。これで東京に居た時プロになれへんかったんか?、どんだけレベル高いねん東京!」

「瑠実お姉様の言う通りですわ!」

「まさに闇の都、パンデモニウムではないか?、東京という所は!」

「な、アタシの言った通りだろ?。こんな感じでアタシらの曲もアレンジされんだぞ!」


 とBerryenの皆んなが絶賛してくれていた。そんな中レコーディングも滞りなく終わり、不安そうに「ど、どうかな…。」と尋ねると、あびるお姉ちゃんが胸元で祈りのポーズのように両手を組みながら涙を流して。


「凄いよめいみん。あーし感動しちゃった!」

「あびるお姉様の言う通りですわ!」

「確かに、メミーの想いがダイレクトに伝わって来たぜ!」

「明未姉のバックバンドなら喜んでやってあげたいわ!」

「くくく。我が眷属の為に骨を折ってくれたまえ諸君!」

「いやだからお前もだザック」


 蒼絵お姉ちゃんがざくろお姉ちゃんにそう言うと桂お兄ちゃんが「まあまあまあ」と宥めながら。


「後はこの曲を編集して、MyTubeやニッコリ動画にアップするぞ!、あと各種ストリーミングサービスにも。これでレコーディングは終わりだ!。さあ皆、今日はこの近くにあるファミレスで親睦会をやろう、勿論俺の奢りだ!」と言った瞬間。


「わーい、アリガトなー桂兄!」

「瑠実お姉様の言う通りですわ!」

「くくく。今回は庶民の食べる食物を所望するとしようか」

「最高にロックだぜ、ラッズ!」

「あーしも毎回作るのは流石に大変だから、今回はずらっちの好意に甘えさせて貰うよ」

「いつもごめんね、桂お兄ちゃん…。」


 と皆大喜びした。こうしてわたし達は急遽、Berryenのメンバーと親睦会を行ないつつ、ファミレスのご馳走に皆で舌鼓みし合い、その日は解散となった…。


 午後5時頃、あびるお姉ちゃんがわたしの家の少し前迄送ってくれて、わたしが家の敷地内に入った瞬間、誰かとぶつかった。わたしは敷地内の前で軽く吹っ飛んだ。相手の男性は、身長は桂お兄ちゃんより少し大きい位で同年代くらいだった。又お父さんのお客さんなのかな?


「痛って~…。」と言いながらその男性が右の太ももをさすってると、玄関先に居たお父さんが「智加お前、金谷に何してくれてんだこの野郎!」と怒鳴りながらすっ飛んで来て、叩こうとした。咄嗟に「ごめんなさい!」と言いながら両手で顔を守るように構えたら、寸での所であびるお姉ちゃんがわたしを抱きしめながら身を盾にして庇ってくれた。


「どけあび助、邪魔すんな!」とお父さんはあびるお姉ちゃんを、殴ったり蹴ったりしながら暴言を吐き続けた。


「お父さん、助けなくて良いの?」と金谷さんの奥さんがそう聞くと「無理だ、俺にあの国太を止められる訳無い!」と両手を振りながら慌てて断った。確かに、身長170代前半で中肉中背の金谷さんでは、183cmで筋骨隆々のお父さんを止めるのは無理そうだ…。


 金谷さんの息子さんも「お父さん、早く帰ろう」と言うとすぐさま金谷さんの娘さんも「あたしも早く帰りたい。それに国太さんって、何か怖い…。」と言った。その気持ち、よ~く解るよ…。


「じゃ、じゃあ国太、俺ら帰っから…。」と金谷さんがそう言いながら家族全員車に乗ると、お父さんはあびるお姉ちゃんの背中を蹴りながら「金谷、この事誰にも言うなよ!。でないとどうなるか解ってるよな?」と釘刺した。金谷さん達は了承つつ、バツが悪そうに帰って行った…。


 約1分後、お父さんも「おめえもこの事、誰にも言うなよ!、でないと後で智加がどうなるか解ってるよな?、あび助!」と言うとすかさず智枝も「んだぞおめえ、このあひる!」と言いながら家の中に入って行った。


「ごめんなさいあびるお姉ちゃん、私のせいで…。」わたしが泣きながら謝ると、あびるお姉ちゃんは「大丈夫だよ。むしろめいみんと同じ体験が出来て嬉しいよ…。」と言ってくれたけど…。


「兎に角一旦家に帰ろう。歩ける?」と言うとあびるお姉ちゃんは「肩貸してくれると助かるよ…。」と言われたので、わたしは肩を貸しながらあびるお姉ちゃん家に行くと、蒼絵お姉ちゃんが出た。


「姉貴、ってどうした!。そんなボロボロになって?」明らかに驚いていた。わたしは事情を説明して、すぐさま手当てを始めた。


「姉貴、無茶し過ぎ」と蒼絵お姉ちゃんが言うと、わたしはすかさず「ゴメン、わたしのせいだよ…。」と言うとあびるお姉ちゃんが「違うよ、全部国太達が悪いんだよ、痛てて!。それより、めいみんがあいつらから1日でも早く解放される為にも、一緒に音楽活動頑張ろう!」と言ってくれた、本当に頑張らないと…。

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