第16話タコパ

 水谷さんと咲夜の着替えを覗いてしまった。


 ブルーの可愛いブラをしていた水谷さん。

 黒のセクシー寄りなパンツを穿いていた咲夜。


 二人の魅力的な下着姿を見てしまったのが気まずくてしょうがない。

 それはコンビニまでガスボンベを買いに行き、たこ焼きを焼き始めるすべての準備を終えた今もだ。

 俺のぎこちなさはバレバレなようで、咲夜がクスっと俺のことを笑った。


「なんで下着姿を見られた私達よりも見た側の輝明が、まだもじもじしてるのよ」

「いや、だって……、二人とも顔が真っ赤だったし」

「っていうけどね、下着姿を見られた私達よりもさ、輝明君の方がお顔が真っ赤だったと思うよ?」

「……まじ?」

「ええ、面白いくらいにね」


 二人ともちょっとは気にしていそうなものの、それでもすでにほぼ通常運転だ。

 俺だけが気まずくなってるのが、なんか恥ずかしくなってきたな。



「……よしっ、焼くか!」


 

 気まずさを振り切って、俺はガス式のたこ焼き器に火をつけた。

 たこ焼き器が熱くなったのを確認し、まずは少なめの量の生地を流しいれてその中にタコを入れ、ネギと天かすと紅しょうがをまんべんなく散らした。

 で、具材をすべて入れ終えたら、その上からさらにたっぷりと生地を注いでいく。


「まん丸なところから溢れてるけどいいの?」


 水谷さんは家でたこ焼きを焼いたことがないようだ。

 俺はどこか上級者っぽい感じで教えてあげる。


「丸める際にこの周りの生地を巻き込むんだよ。そうしないとたこ焼きが綺麗に丸くならないから」


 さて、十分に生地も注いだことだし、ここからはちょっとの待ち時間だ。

 たこ焼きがひっくり返せるようになるまで焼けるのを待ち始めたのだが……


「まだ触っちゃダメ?」


 たこ焼きをひっくり返すタイミングを、まだかまだかと水谷さんが可愛く待ちわびている。


「うん、楽しんでもらえてそうで良かったよ」

「えへへ。ねえねえ、輝明君はたこ焼きってよくやるの?」

「そんなにしないな。せいぜい、年に3回あるか? ってくらいだな」

「いや、人はそれをよくやるっていうんだよ?」


 年3回でもたこ焼きを焼くのは多いらしい。

 うちでは当たり前でも、よそだと色々と違うようだ。

 っと、いい感じに焼けてきたな。


「水谷さんの出番だぞ?」


 たこ焼きをひっくり返すための竹串をそわそわとしている水谷さんに渡した。

 水谷さんは竹串を受け取るや否や得意げに笑う。


「ふふふ、私の華麗な手さばきをみせてあげるね!」


 ノリノリでたこ焼きをひっくり返そうとする水谷さん。 

 だったのだが……、ひっくり返すのを始めてから数分後。

 水谷さんはとても悲しげな顔で嘆いた。



「……なんでぇ?」



 たこ焼き器の上はぐちゃぐちゃで大惨事である。

 フワフワとろとろの美味しいたこ焼きをと思い、少し生地の固さを緩めにした。

 生地が緩いと、慣れるまでは綺麗にたこ焼きを焼くの難しいんだよな。

 さてと、まだまだリカバリーはできるし、助けてあげるとしますか。

 

   ※


 たこ焼きを焼いては食べを何度も繰り返した。

 俺も咲夜も水谷さんもお腹がパンパンで苦しそうにしている中、咲夜が俺に1000円札を渡してきた。

 俺は咲夜がお金を渡してきた理由を知っている。

 

「アイスだよな?」

「ええ、たこ焼きを食べた後のしめはアイスってのが私の決まりよ。だらしない部屋着だから外にでたくないのよね。まあ、頼むからには輝明と水谷さんの分も買っていいからお願いできる?」

「ん、わかった。それにしても、ほんとに昔から変わらないよな」


 たこ焼きをたらふく食べた後にアイスを食べる。

 それが咲夜のルーティンだ。

 小さい頃なんて、たこ焼きの後にアイスがなくて泣いたこともあったっけ。

 思い出に浸っていると、水谷さんが唇を尖らせて俺に言う。


「二人の関係ってなんかいいな~、幼なじみっぽくて」

「まあ、確かに俺と咲夜は親戚でもあり家族であり幼なじみみたいなもんだな。水谷さんは幼なじみは……その反応からするといないんだな」

「うん。というかさ、二人ってやっぱり仲良しだよね?」

「……まあ、そうだな」

「はいはい、どうせまた仲良くないって……って、えぇぇ!?」


 思わぬ俺の発言に水谷さんは目を真ん丸にして驚いた。

 いやいや、そう驚くことか?

 俺は苦笑いで水谷さんに説明をする。


「いや、前は仲悪かったとおもう。でもさ、最近の俺と咲夜はどうみても仲良しってのは否定できないだろ」

「ええ、輝明の言う通りね。水谷さんと出会ってからは、かなり仲良くできてる気がするわ」


 前までは、ちょっとしたことで喧嘩するほど仲が悪かった。

 でも、今のこの感じで俺達が仲良しではないと言うのは無理がありすぎる。


「あははは、二人ともやっと認めたね?」

「さすがに今日みたく遊びに行っておいて、咲夜と不仲って言えないよ」

「うんうん、仲良きことは良きかなだね!」

「んじゃ、俺はそろそろコンビニに行ってくるな」


 俺はアイスを買いにコンビニへと走ろうとしたのだが……。


「私も行ってもいい?」


 水谷さんが一緒に来たいと言ってくる。

 今の水谷さんはちょっとくたびれた俺のTシャツにハーフパンツ。

 ギリギリ外に出れるレベルでもあり、ギリギリ外にでたくないような服装だ。


「その格好で大丈夫?」

「うん、コンビニまでなら大丈夫!」

「それにしても、家で待ってればいいのになんで一緒に来たいんだ?」

「別に何となくだよ。だれかコンビニ行く~ってなったら、なんか一緒に着いていきたいって時ないかな?」

「ん~、わかるようなわからないような気もする」


 まあ、細かいことはいいか。

 断る通りもないので、俺は水谷さんと一緒にコンビニ行くことにした。

 水谷さんと一緒に玄関の方へ向かおうとしたら、咲夜もまた立ち上がる。


「一人だけ置いてけぼりは酷いと思わないの?」


 結局、咲夜も一緒にコンビニに来るようだ。

 ということは、家には誰も残らない。


「一応、ちゃんと戸締りしないとだから、先にコンビニに行っててくれ。あとから追いかけるからさ」


 二人にそう言って、俺は戸締りを始めた。

 そして、それを終えて玄関に行くとそこには……


「んじゃ、行こっか」

「ええ、行きましょうか」


 先にコンビニに行っててくれと言った後、俺の前から姿を消した二人が居た。 

 まあ、それもそうか。

 こういうときに一人だけ置いてけぼりにして、先に行くのはなんか違うよな。

 俺達は3人仲良くコンビニへとアイスを買いに歩き出すのであった。


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