タイトルのない本

悠人は学校の放課後、図書室に寄った。本棚をぼんやり眺めながら歩いていく。一つ気になる本を見つけた。タイトルのない黒い本だった。悠人はその本を手に取って、ページをめくった。突然、悲鳴が聞こえてくる。どこからかは分からないが、図書室の中だ。もう一回ページをめくる。悲鳴が、今度はさっきより近くから聞こえた。悠人は不思議な気持ちになりながら、ページをさらにめくっていく。その瞬間、悠人はめくる手を止めた。凄い速さで悠人に向かって何かが悲鳴をあげながら近づいて来たからだ。確実に悠人の横には何かが立っている。怖くて悠人はその存在を見ることが出来ない。そのまま本を閉じて、本棚に戻すと横の気配は消えた。その日以降、悠人はタイトルのない黒い本を見つけても無視することにした。

(おわり)

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