5話「【標識】と標識(2)」

「降りなよ。上から一方的に攻撃するなんて不平等だから。」

「………………確かに。じゃあ」

誕生日標識は乗っていた標識ごと地面に降りてきた___________甲高い音を響かせながら脳震盪属性の攻撃を周囲に散らしながら

(…………さっきの人も、誕生日標識も脳震盪属性…………。)

この戦いにはきっと負ける。なんとなくそんな気がする。だって属性の相性はこちらが不利。でも、頑張ってみようと思う。

だって私はあの時の事を理解してほしいから。



私は君の代わりに君の名を名乗った。けれども、周りの人達はそれを私の名だと認識した。

ただそれだけの事だった。

………………正直に言ってしまうなら、少し嬉しかった。だって、自分が注目を浴びた。他人からの視線を独り占め出来た。誕生日標識の能力から予想するなら注目や視線を浴びるという客観的なものを大切にしているように…………後で思えた。だから別に君の名を名乗ったままでいるのもいい気がしたんだ。だからこのままがいいな。このままにしてもらってもいいかな。



「一発で決めてあげたら?そっちの方が早く終わるよ、【標識】。」

「…………そうだね〜、そうする〜。」

【標識】は自分が乗っていた標識を地面から拾い、両手で持ち、構える。

それを見て、自分も手元に剣を出しそれを構える。

「【」

「【Showtime】」


【標識】がそう唱えると、脳震盪属性特有の煌めきに混じって色とりどりで赤黒いものが見えた。

(あぁ……………………この人標識は…………ただの振動属性じゃない……。)

「【Performance】」



更に強まったその煌めきに確信を持てた。

(………………世界型の脳震盪属性だ。)

その煌めきは周囲を周り、標識の頭上をヘイローであると言わんばかりに回る。

…………少しして、突然自分の視界が部屋の明かりを消しドアを閉めた時のように暗くなった。






「【Finale】」







その煌めきは知らぬ間に【標識】の頭上から離れパッと、まるでスポットライトのように目の前の人物の全身を赤黒いライトで照らす。

【標識】の名を騙った人物は、名を知られる事無く標識に肉体を縦に貫かれて死んでいた。




その場には【標識】も、共にいたであろう模索ももう居ない。2人共もう既に【菩薩】の元に向かった後だ。

ひょう、と音を立ててそれは花火のように空へと打ち上げられ、灰となって雨のように真下にある土を汚す。

_____________そうして、この人物は名を知られる事もなく死んだのだ。

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