3話「内側から浮上する者」

これは、銀河の海。星々が海上に散らばり、黒い液体が砂のように海を囲む。

その上を私は裸足で一歩ずつ…………海中の中心にある■の心臓を目指して歩いて行く。

それは何の為なのかはもう忘れてしまった。何故なら、私は永遠に同じ行動をし続けているからだ。


それが、私が罪を償う唯一の方法なのだ。




海を眺めている。波の引きを眺めている。

引いては押され、押されては引く。それはまるで私の身体を潰して遊ぶ神の指を思わせた。

(………………………………なもの思い出した。)

昔は仲間がいた。砂漠を共に歩く仲間が。

昔は共に歩いた。砂漠から、それが終わる終わる境界線まで。

…………しかし、歩き続けるだけでは親しくはなれない。だって仲間は仲間でもただの仕事仲間なのだから。

その中の誰かが何をしようが他の者は気にしない。…………そうだろう?



ごぽごぽと口から泡を出しながら海底へと歩き続ける………………………………。





ごぽり、と1つ。音が鳴った。




ごぽり、と1つ。先程よりも大きな音が鳴った。

その音で瞼を上げてみた。

……………………なぜ、私は地上にいる?

…………………………なぜ






________________________私は刃物を腕で受け止めた。

「危ういな、小僧。」

「わたくしは女ですわ。」

「あぁ、そう。」

(……女とか男とかどうでもいいな。)

「貴女…………その身なりは奴隷かしら?」

「……まぁ、確かに奴隷だな。」

「…………私は両性だ。女では無い。」

「……それは失礼したわ。」

「貴方、どこの奴隷なの?ご主人様がいないなら私がなってあげてもいいわよ?」

「…………お前、名前は。」

「……奴隷の分際でわたくしをお前と呼ばないで頂戴よ。」

「確かに私は奴隷の分際だが、仕えている主はお前よりも地位が高いだろうな。だから構わないのだよ。」

「…………まぁいいわ。わたくしはタロット家の令嬢。ワンドといいますわ。貴方は?」

「私は【神の奴隷】だ。宜しくな。」






「神の奴隷?それは名前ではなく立場じゃないのかしら……??」

「…………名前だ。そう名乗れと言われた。」

「へ……へぇ………………。」

自分はこれから樹へと向かおうとしているのに、ワンドは野次として来たという事を【神の奴隷】は雰囲気で察した。

「私はこれから樹へと向かうが、来ないか?」

「…………行かないわ。だって死んでしまうでしょう?」

「どんな身分の者でも戦に出すというのに、樹が対象なら何もしないのか。戦よりも世界の方が大切だとは思わないのだな。」

【神の奴隷】はここからかなり離れた樹へと向かう為に歩き始めた。



が、少し立ち止まる。

「じゃあ、さよならだ。」

「私達はお前に喧嘩を売ろうがお前に恨まれようが別にいい。」

「その程度、皆撃ち墜とせる。」

【神の奴隷】はそう言ってまた歩き始めた。









ワンドは帰り道にて空から墜ちた岩に潰され血肉と成った。

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