ウメチカの原点。――語りは、灯りになるまで――

大創 淳

Episode 000 語りの始まり。


 ――語りは、疼きから始まる。



 まだ言葉にならない痛みが、心の奥で揺れている。


 八月三十一日、あの日、踏切の手前で、語りは静かに灯った。絶望の淵から命を繋ぎ止めた不思議な出会いから、この物語は始まったのだ。



 風鈴の音……


 出会いの、あの時に聞こえた、その音色……



 でも、それが何なのか、まだわからなかった。


 けれど、手元には一冊のノートがあった……



 それは、十歳の少女・千佳ちかの目に映る世界が、静かに描かれてゆく語りのノート。開けば、誰かの願いが染み込んでいるから。そう――不思議なトモダチと交わした、灯りのような願いが静かに染み込んでいるから。



 この物語は、語りが灯りになるまでの記録。


 語りは、終わっていない。あの日の灯りが、今、君に届きますように。


 そう――君と一緒に。

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