日々を生きる一人の転生者 ヤラれたらヤリかえす、気の向くままにぶっ潰す
@Pomusuke
第1話
死の間際…今までの人生が走馬灯として脳裏に広がるというのは聞いたことがある。
確かに汚ぇ浮浪児生活、短い数年間の人生が映画のように流れていたが…まさか、前世まで頭の中に蘇るとは思ってもいなかった。
「……………」
くだらねえ前世を見終わり、腹の痛みが消え…青空を見上げているのが今の状況。
知識もロクに無い底辺のガキから、クズな大人の精神が詰まったガキの出来上がり…底辺の新しき第二の生、反吐が出る。
「チッ……」
惨めな人生、豪華二本立てのロードショーを頭の中に上映された気分は最悪に等しい。
正直苛立ちで精神が逝っちまいそうな気分だが、陽の光が邪魔してそこまで馬鹿になれない。
鬱陶しいまでの陽の光を遮ろうと右手を目の前にかざすが、視界に入る赤黒い跡に尚更気分が悪くなり、苛立ちが湧き上がる…。が、それと同時に疑問も浮かぶ。
「そういや、刺されたんだよな…」
下に向けた視線の先にはおびただしい量の血に塗れた服に、何回も刺された跡が残っているが、不思議なことに服の下は無傷。
斬り裂いた服に鉄の匂い香る我が御体、マジシャンも驚きの手品だ。
「神様の慈悲ってか……?クソが…」
何でもありの神様チートに対して、込み上げてくる溜め息を吐き出しながら痛む体で立ち上がると、視界に血がついた短剣が目に入る。
「お、凶器ゲットだな……。あ?」
自分の血に染まった短剣を手に取ると、耳に聞き覚えのある騒がしい声が聞こえてきた。
「クソッ!!あのガキ!大きい鞄持ってると思いきや中身はガラクタばかりじゃねえか!!」
怒鳴り声につられて歩き進むと、行き止まりの壁に囲まれた場所で血塗れの男が背を向けて、これも見覚えある鞄を漁ってる。
「ククッ…こりゃ、最高の瞬間じゃねえか」
記憶の中にどっぺりと刻まれたクソ野郎、何も知らねえガキの時は随分と甚振られた…そんな記憶が残っている場合何するか、それはもちろん一択よ。
鞄の中身を乱暴にかき混ぜてるクソ野郎の背後に抜き足、忍び足と近づくたび、自分の口元が笑顔に変わっていくのが分かる。
「おいおい…それは俺のじゃねえか?」
「…あぁ?」
「よっ!」
「!?なッ!て、てめぇは殺したはっ、ずッ」
腹の肉を刺す感覚とともに男の腹に差し込んだ短剣を抜いて、もう一度素早く刺すと男の悲鳴が路地裏に響き、男は後ろに転がり倒れた。
「がああぁァァッ!い、いてぇ!いてぇよ!」
「俺はよ!ヤラれたらヤリかえさねえと気が収まらなくてよ!だから、苦しんで死ねや!!」
自分の手に重なるようにした男の手を無理やり払いのけ、泣き喚く男の瞳を覗きながら短剣をじっくりと肉に捩じ込む。
「ああァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァァァッッ!!!!!」
「あの世でもちゃんと詫びてくれよなッ!」
短剣に力を込め、腹から上にかけて斬り裂き、臓物を撒き散らす男から離れる。
「ぐぶぇッ……ぐぁ、ぁ、ぁ…ぁ………」
顔から地面にぐちゃりと倒れ、微かな声とともに静けさが路地裏に広がる。
「ふぅ〜スッキリしたぜ」
そんな空間のなか無機質な女の声が頭の中で一言、響いて広がる…『レベルアップ』と。
「あ?………………ステータス」
Level 2
魔力 9
筋力 7
守り 4
速さ 5
スキルポイント50
視界に映り込む薄っすらと空中に浮かんでいる文字は確かに現実に起こっていることだ。
「殺して強くなる…ね。RPGは好きだぜ」
空腹が満たされたような満腹気分はこの奇妙な横槍のせいで勿体なく失せちまった。
「ま、面白くなってきた。とりあえず荷物だ」
肩掛け鞄を手に取り周囲に散らばった物を拾いながら中身を確認していく。
枯れた花、大人の服が2着、中身が読めない手帳、短い鉛筆一本、銀の十字架のシンプルなネックレス、銀のくすんだ指輪が二つ。
病で死んだ親の遺品を馬鹿みたいに肌見放さず抱えてる姿が脳裏によぎってくる。
「……………くだらねぇ、がしょうがねぇ」
二つの指輪をネックレスの左右から紐に通して首に掛け、抜き身の短剣を鞄にしまい、鞄を肩に掛けその場を後にする。
「……ったく、汚え場所だな」
路地裏を歩いて、人が多い道を選び進んで行くと段々騒がしい喧騒がこちらに響いてくる。
曲がり角を曲がると路地裏には変わりない広い路地裏に露店などが存在して、武装した人間がごっちゃになっているのが見えた。
周囲にも人が多いなか、歩みを進めようとするとしわがれて低い声が自分の歩みを止める。
「おい…血塗れのガキがこんなとこ来るな」
「あん?…俺のことか、爺さんよ」
「そうだ。お前みてぇなガキは一度ゴミ山に行け」
地面に座りながら壁にもたれかかる爺は骨が浮かびあがり、皮だけの状態の癖に…やけに迫力ある暗い瞳が自分を見据える。
「…はッ、…どこにあるんだ?」
「………向こうの道を真っ直ぐ行きゃいい」
指を差している場所は来た道を戻り曲がり角の手前辺りに一つの道があるのが見えた。
爺の方に向き直るとこちらを一瞥もせず下を向き、手で追い払う動作をしていた。
(随分とお人好しな爺もいたもんだ)
他の奴等は俺のことを視界に入れたらゴミを見るような目か、警戒するかのどっちかだ。
なのにこの爺の視線、言葉にはまるで気にかけてるような素振りで対応しやがった。
「助かったぜ爺さん」
「…………………ふん、さっさと行け」
背後から爺の声が聞こえたが振り返らず人混みを掻き分け爺に言われた道を進んで行く。
そこは更に道が細い路地裏で大人一人通るのが限界なほど狭い道だがすいすいと進む。
「………血の匂い」
そんな狭い路地裏を進みきった途端に餓死したのか殺されたのかも分からない死体が目を開けながら死んでいた。
腐った匂いと血の匂いが混ざり、辺りに漂い始めたの感じつつ小さな部屋からまた、真っ直ぐ続く路地裏を進んで行く。
「…今度は焼ける匂いね」
ようやく通り抜けた先には大きく広けた場所にゴミと呼べるような物がいくつもの山になって存在していた。
時折死体が転がっていることで使えるものがないか視線を送りながら歩いていると、まだ使えそうな衣服や武器になるものが落ちていた。
「………?」
ふと足音が聞こえ、ゴミ山に隠れながら音のした方向を見ると何かを引き摺りながらこの場所に一人、誰かが来たようだった。
「ったくもうこんなに溜まってんのか!早いとこ処理してくほしいもんだ、匂いがキツイぜ」
腰に剣を下げ、皮鎧を身に着けた男が愚痴のようなことを吐き捨てると、肩に乗っていた布の塊を叩きつけるよう投げ捨てた。
「ボスに逆らうからこうなんだよまぬけ!!」
その言葉を最後に男はその場から去っていく、男の姿が見えなくなるのを確認してゴミ山から這い出て布の塊に近づく。
170cmはある塊の布を短剣で一枚一枚切り裂いていくと、泡を噴いている青白い男の顔がそこにはあった。
「毒殺か、陰謀の匂いがプンプンするな」
布を全部斬り裂いた衝撃で大柄な男の腹は脂肪の塊がバルンバルンと、明らかに贅沢してましたと言わんばかりの揺れだ。
そんな肥満の男の服装は神官が着るような上等な服を纏っていた。
「宗教の関係者か」
黒を基調としたシャツとスラックスに茶色のベルト、高値がつきそうな黒を基調としたコートには両胸に銀の十字架が装飾されていた。
「………うしッ、頂くとしますか!」
その場で血に塗れた服は放り捨て、ブーツだけの姿で男からコートと黒の革靴をはぎ取って鞄にしまい、シャツ、ベルト、スラックスは袖と裾を折りながら無理矢理身に着けていく。
「…………」
背中まで伸びている黒髪をシャツの中から取り出し、視線を周囲に向け使えそうなものを改めて探し始める。
ゴミの上を歩いていると損傷がない少し大きめな茶色のローブを地面から拾い上げ、ローブを軽く叩いて汚れを落とし、そのまま袖を通す。
「不格好だな」
更にゴミ山を探索していると自分の身長ほどの革の鞘に入ったままの剣を見つけた。
「おおっ!……んだよ…チッ」
ようやく破損していない武器が手に入るかもと内心浮かれながら剣を手に取り鞘を引き抜くと、切っ先が折れていた。
「…………重っ」
振れないことはないがやはり重い。とはいえ他にありそうな様子もなく、剣を鞘に戻して左手で肩に担ぐように持つ。
ローブの下は多少綺麗な服と右肩にある鞄も含め、これで少しはマシな格好になっただろう。
「あの爺さんに稼ぎ方でも教わるか」
一歩踏み出すと重心がぶれて体が左右に揺れるが気にせず、あのぶっきらぼうな爺さんのところへと出発した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「稼ぎ方を知りたいだぁ?なんで儂が」
「優しいから」
「………この通りにバナルという男が商売をやっとる。詳しい内容は行って確かめろ」
「商売ね…」
「こんなマークの看板があったらバナルの店だ」
地面に林檎の絵を描くと、爺さんはそっぽを向いて目を合わさずにさっさと行けと手を払う。何だか可愛らしい爺に見えなくもない。
「また来る…じゃあな爺さん」
「ふん、もう来るな。ガキ」
爺さんのもとから離れて人混み溢れる道に戻り、道の端を歩きながら林檎のマークが描かれた看板を探す。
道中いろんな露店を見かけるが、その誰もが顔をローブで隠して、素性がバレない様にしているのがこの場所の特異性を物語っている。
ふと、大通りなこの道から見える横の路地裏には自分と同じぐらいの年代が固まって生活しているのを見かけたりもした。
ただ、子供とは思えないほど目をギラつかせている彼らとは仲良く出来るとは思えない。
(おっかねえ……全部剥ぎ取られそうだ)
見たことないものばかりであっちやこっちやと目移りしながらもとうとう目的の看板を掲げた木造の一軒家に辿り着いた。
外見はただの民家にしか見えないが、ドアの前に立ち、数回ノックを試みる。
「………………いないのかよ」
踵を返しその場から立ち去ろうとすると、ドアノブが回る音がしてもう一度振り返る。
そこには中肉中背のおっさんと呼べる年代の男が立っていた。若干機嫌が悪そうに見えるが要件を素早く言い出す。
「稼ぎたい」
「……………………入れ」
無愛想に一言告げると男は引っ込み、ドアが閉まる前に自分も急いで中に進む。
家の中は日用品やちょっとした武器や防具が置かれ、自分が周囲を見ている間に男はカウンターの椅子に座り煙草を吸い始めた。
「うちは何でも買い取る。売れそうな物や表に出せない物は持ってこい」
「分かった」
「……最近ここいらは鼠が多い」
「……?あ〜はいはい、行ってくるわ」
「ああ」
あの爺さんもだが、この男もかなりの口下手な気がする。一応助言をくれたりと面倒は見てくれるらしいがなかなか分かりづらい。
(ガキには優しいだけか…?)
さっそく鼠を探しに、買い取り屋から外に出るがどこら辺を探そうかと悩む。
「そういやスキルポイントがあったな」
今一度脳内でステータスと唱えると半透明な板が出てくる。ゲームのような仕様で自分の強さ?を表してくれるのはありがたいもんだ。
スキルポイントという表記に意識を集中させると画面が変わり、沢山の文字が現れ始めた。
取得可能なスキル一覧
気配察知Lv1、剛力、短剣術Lv1、毒耐性Lv1、
どうやら今取得出来るのは4つしかないようだ。一つ一つに意識を集中させると必要なスキルポイントの数字が表れる。
気配察知15、剛力15、短剣術10、毒耐性10
「全部とるか」
スキルポイントが減るのを横目に自分のステータスに表記が増える。
Level 2
魔力 9
筋力 57
守り 4
速さ 5
スキルポイント 0
気配察知Lv1、剛力、短剣術Lv1、毒耐性Lv1
筋力の上がり幅が凄まじく、力が湧いてくるのを感じながらも周囲の気配を感じ取れるか試すと、微かに何かがいるというのは分かる。
大体自分を中心に10mの範囲で気配を感じ取れるようで、対象によっては気配の大きさなども感知出来るようだ。
「襲う時も襲われる時も有利に立てる。最高」
始めての感覚に楽しさを感じていると、近場の気配にとても小さく、動きが鼠のような気がする動きを捉えた。
(透視みてぇだな…)
どうやら買い取り屋の裏にいるらしく、その場所へと駆け出して移動する。
辿り着いた裏には大きめな一匹の鼠が、よく分からない物を食べるのに夢中になっていた。
「……蹴りでいけるか?」
気付いているのか分からない鼠に向けて走り出す。駆け出す音にビクッと鼠は反応したが時すでに遅く、自分の蹴りが頭にヒットする。
宙に吹き飛び壁に叩きつけられた鼠は地面に落ちた。口から血が流れ動きがない様子を見るに仕留めたというのが分かる。
「うへぇ…これを持って行くのかよ」
ゴミのように鼠の尻尾を摘み上げ、買い取り屋の所に直行する。店の前に着くぐらいには鼠の口から血はほとんど流れなくなっていた。
ドアノブを捻り扉を開けると先程と変わらずに無愛想な男が煙草を吹かしていた。
男は自分の姿を視界に入れると手元に注目しているのが分かった。
「早いな…そこの桶に入れとけ」
カウンターの下にある木の桶に入れると、男がカウンター内から鉄の硬貨を一枚机に置いて、何かを自分に投げてきた。
難なく受け取り手のひらを開くと、小さな青い結晶がそこにはあった。
「外に出たら
「なんだこれ…?」
「この鉄貨で向かいの飯が買える…行け」
机に置いてある鉄貨を手に取り、買い取り屋を出て行くと、確かに向かいには何かを売ってる屋台がそこにはあった。
買い取り屋の店主に言われた通りに外で結晶を握り、
すると、最初は何だか手のひらが冷たく感じてきたなと思いきや握る手からかなりの水が流れ出してきた。
手を開いて水晶を見ると、発光しながら水が流れ出る様子にさっさと手を洗う。
「冷た」
手を洗い終わり、少しの間屋台を眺めていたが客が入ってる様子はなく、暇そうに椅子に座って何かを読んでいる店主へと近づいていく。
「飯が欲しい」
「ん…?なら鉄貨一枚だ、嬢ちゃん」
言われた通りに屋台の台に鉄貨を置くと、店主が屋台の引き出しから黒いパンを取り出して、台の鉄貨を回収すると拳以上の大きさはあるパンをそのまま手渡してきた。
「硬いから気ぃつけて食うといいぞ」
「ああ」
パンを受け取ると、触った手の感触からとても硬いというのが伝わり、少し微妙な気持ちだ。
(いや…まぁ……打倒な食い物だろうよ)
微妙な気持ちを表に出さないよう、温かくもなく冷たくもないパンを手に持ちながら自分はあるところを目指して歩き出す。
「硬くても食べられるだろう」
まだまだ強い太陽の光が下を照らすなか、建物の壁に寄りかかり座り込んでいる爺さんに近付く。
「またお前か…」
やれやれといった感じで出迎えた爺さんは自分の手にあるパンを見てフッと小さく笑った。
「どうやら上手くいったみたいだな」
「…………おう」
剣を壁に立て掛け、黒パンを両手で握り締め徐々に力を籠めていくとミシミシといった音がパンから鳴り、次の瞬間二つに引き千切れた。
勢いが強すぎて自分の体が左右に揺らぐが何とか態勢を立て直してパンの半分を爺さんの顔に持っていく。
「…ガキの施しなんぞ要らんわ。自分で食え」
片方のパンを口に咥えて爺さんに差し出していたパンを更に半分に割り、また爺さんの口元に押しつける。
「爺さんの口が触れたから、それいらねえよ」
「………………フンッ」
しょうがないといった様子で口元に触れていたパンを一口で頬張ると眉間にシワが寄る。
「硬えパンだよ…まったく」
「…マジで硬ぇ」
自分も無理矢理一口で食べると、咀嚼するたびにガリガリといった食感が口の中を襲い、顎も疲れて食欲が失せてくる。
それでもかなりの空腹を感じていた胃袋はまだ子供サイズということもあり、腹に溜まっている感覚が満腹に近しくなってきた。
口の中のパンを少し飲み込んで残ったパンを口に放り込み、鞄から水が出る水晶を爺さんの口元手前に準備する。
「あん?何をしようとし…!?」
「
一瞬喉に詰まりそうだったが最後まで唱え、爺さんの口目掛けて水を流し込む。
チョロチョロと流れ出る水は爺さんの口元に注がれゴボゴボといった音が聞こえた。
「ヴォ゙っ、こんのクソガキ!溺れちまうわ!」
「………………はっ」
「おいこら!どこ行くんだ!…ったく」
水晶を懐に仕舞い、剣を右手に持ち、騒がしい爺さんを無視して金になる鼠の姿を捉えながらその場所へと歩いて行く。
今の無一文状況を打破するには現状、鼠を狩って狩りまくるしか金の稼ぎ方が無い。
「……………………………フッ」
だが、かなり切迫した状況にもかかわらず、見慣れぬ中世の路地裏を進んでいることに冒険心が疼いて仕方がない。
「楽しみながら生きてやるよ」
思いの外やる気が溢れてきている自分に驚きながらも、目的地へと歩を進めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ヂュッ…!」
蹴り飛ばした鼠の尻尾を摘んで、左手にあるピンクの束に鼠の尻尾を加える。
「………絵面は良く無ぇな」
最初に目をつけた鼠を追っていたがその道中に他の鼠が近付いてきたりと、自分の左手には複数の尻尾を束ねて鷲掴みしていた。
「袋があれば良かったんだが…戻るか」
「お、おい…」
いざ帰ろうと来た道を戻るその時、幼い少年の声が離れたところから聞こえてきた。
「ああ…?んだよ、ガキ」
路地裏の影からボロい服を着た九歳ぐらいの少年がおどろおどろと現れた。
少し前から人が近付いてきていたのは分かっていたが、話掛けられるとは思わなかったな。
「それ、ど、どうやって獲ったんだ?」
少年がゆびを指す先は鼠の死体たち、その質問で他の子供達もあの買取屋に世話になっていると分かる。
「これか?蹴り飛ばしたんだよ」
「け、蹴り飛ばした!?」
こうもすばしっこい鼠を乱獲が出来るのは殆どスキルポイントのおかげなんだが、少年の驚きも分からない訳では無い。
確かに同年代の奴がこんなにも金になる物を左手に持っていたらそりゃ驚くわな。
「あんた…凄いんだな。見つけづらいのに…」
「…そうだな…。質問に答えたら半分やるよ」
「!?は、はぁ!?な、何だよ急に」
そんな身を縮こませてこっちを見るんじゃない、俺が虐めてるように見えるだろう。
「雨風を凌げる場所、知ってるか?」
丁度寝れる場所も確保したいと思っていたからな、コイツが答えなきゃ別を探すまでよ。
「…本当にくれるの?」
「ああ」
「……僕が住んでる場所でいいなら」
「決まりだ。行くぞ」
「え…?」
もじもじとした少年の後ろに行き、剣を持った手で優しく押し出しながら買取屋への道を早歩きで進んで行く。
「ち、ちょっと!買取屋の場所は分かるよ!」
「そうかい」
「…うん」
押し出すのを止めて少年の横に並び、歩く速度に合わせる。横に並んでいるのが気になるのか自分の方をチラチラと横目に見てくる。
「………………」
「………………」
「前見ろ」
「わ、分かってる」
子供に対して何を話せばいいのか分からないのは分かりきっていたことだが、会話したそうなガキの視線が鬱陶しくてしょうがない。
(めんどくせえ…)
結局買取屋までの道中は特に喋ることもなく黙々と進み、お互いのことなど何も分からないまま買取屋に辿り着いた。
扉を開けて中に入ると、バナル?かもしれない男が店の中の商品を布で擦るよう手入れをしていた。
入ってきた自分達に目を向けると手を止め、自然とカウンター台付近の椅子に戻って行った。
「……随分獲ったな」
「ああ」
「鉄貨九枚だ」
店主がカウンター内下で金を準備している間に鼠を木の桶に血が飛び散らないよう置く。
チャリンと金属が擦れる音が聞こえカウンター台の上を見ると鉄貨が十枚置かれていた。
「一枚多い」
「持ってけ」
そう一言だけ発したかと思えばまた店の商品の手入れを始めていた。
店に入った時に少年の姿を見ていたからなのか、ただの気まぐれなのか自分には分からないがこの店主が最高というのは正しいだろう。
「鉄貨をしまう場所はあるのか」
「…ないよ」
「着いたら渡す」
「本当にいいの?」
「そういう約束だろ。行くぞ」
カウンター台にある鉄貨を鞄の中に入れて外へと出ると剣を胸に立て掛け、鞄から水晶を取り出して手を洗う。
「おい」
後から出て来た少年の手を引き、お互いの手を入念に擦って汚れをしっかりと落とす。
「ちょ、フフッ、くすぐったいよ」
黒ずんだ手は消え綺麗になったのを確認して水晶を鞄に戻し、少年の手を取ると少年は驚きを含みながらも力強く握り返してきた。
「家はどこだ」
「…こっちだよ」
力強く手を掴んだかと思いきや今度は逆に自分が引っ張られるように路地裏を進んで行く。
前を歩く少年の背中は、自分より小さくて幼い姿につい手を掴んでしまうのは不可抗力だ。
「チッ………転んだら殴るぞ」
「う、うん」
ともあれ突然の異世界?だったが最初は出会いに恵まれて今のところは順調だと思う。
これからどのように生活するかは自分次第、第二の人生として受け入れようじゃないか。
力強く手を引く少年に身を任せながら、くだらねえ人生をより良くしようと、ちっぽけな想いを胸に薄暗い路地裏を歩いて行く。
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