ど忘れ
痛みから意識が段々と蘇る。意識が戻ると周りの声が聞こえて来る。
シエル「本当!こんなおっさんに負けるなんて信じられない!」
男3「はぁ?お前の為に命懸けで戦ったんだぞ!もっと優しくしろよ!」
シエル「はいはい。で?ロゼに気絶させられたおっさんが、あんたをどう殺そうとしたの?」
男3「むぅ。」
男1「庇う訳じゃないがこの男、半端なく強かったぞ。」
男2「俺なんか、殴り掛かった次の瞬間には全部終わってた。」
シエル「ダサっ!」
ロゼ「シエル、落ち着いて下さい。皆さんのお陰で私達は無事なんですから。」
シエル「そうかも知れないけど・・・。」
気が付くと俺は何処かの部屋の一室に放り込まれていた。手も拘束されている。後ろ手じゃないのが幸いだな。
俺「はぁ、帝国ってこんなのばっかりだな。」
男1「気が付いたか。」
男3「変態野郎!観念するんだな!お前は終わりだ!」
シエル「変態って、どういう意味よ?」
男3「こいつ、シエルに変な事する気だったんだよ!」
シエル「はぁ?本当に?だったらもう少し頑張りなさいよ!」
男3「だから命懸けで戦ったって言ったろ?」
ロゼ「お2人共、落ち着いて下さい。」
男1「そうだ。大体、まだこいつから何の情報も聞き出して無いのに決め付けるのは早い。」
男3「だけど、敵だろ?俺達に襲い掛かって来たんだからな。」
俺「いや、大した話もしないで殴り掛かって来たのはお前だろ?」
男3「お前!自分の立場が分かって無いらしいな!今から理解させてやる!」
男2「待てよ。」
男3「何だよ?」
男2「こういう時はアズールの許可を取るって決めたろ?」
男3「アズールは妹の為なら文句は言わないだろ!」
シエル「私を免罪符にしないでよ。」
男2「今はアズールがいない。いない時の纏め役はお前だろ?」
男1「分かってる。とにかく処分は保留だ。情報を聞き出し、どうするかはアズールが戻って来てから考える。」
"アズールがいない。"
確か今は第4島に向かってるんだっけ?何か貴族の動きが不穏だとかそんな話をゲームでしてた様な?アズールは義賊の筈だけど、その義賊のアズールが行って何をするのか。ある程度の話の流れと結果は覚えてるけど、途中経過が思い出せない。シエルとロゼもこの後、ここを出るんだけど他の島に移動した理由も思い出せない。何だっけな?う〜ん?
男3「おい!おっさん!」
俺「だからまだそんな歳じゃないって!」
男2「あんた、何者だ?何しにここに来た?」
そう聞かれてもな。俺の目的は姫なんだけど。今、その事を言うと騒ぎになりそう。
男1「答える気は無いって事か。」
いや、どう答えるのが正解なのか考えてるんだけど。そんな事を考えていた時だ。不意に爆発音が鳴る。
ロゼ「きゃ!」
シエル「ちょっと!今度は何!」
俺「あ!」
思い出した。イベントだ。しかも今の俺に取って一番不味い類いの。
男3「おい!おっさん!あんた、何か知ってんだろ!」
俺「え?いや、さぁ?」
男3「嘘吐け!さっき"あ!"って言ったじゃないか!」
シエル「私も聞いた!」
チッ。こいつ等、耳聡いな。しかし、説明が難しい。ゲームで見たなんて言っても何の事か分からないだろうし、未来で決まってると言っても納得しないだろう。どうしよう?
俺「純粋に敵襲じゃない?」
男1「貴様の仲間がお前を助けに来たんじゃないのか?」
仲間?確かにいるけど、俺がここにいるのは知らない。助けになんて来れないだろうな。それに今自由に動けるのはジェイドだけだ。そのジェイドが率先して助けてくれるとは思えない。
男2「なぁ、状況は分からないけど、本当に敵ならこのままだと不味いんじゃないか?」
男1「仕方ない。お前はシエルと姫を連れてここから脱出しろ。」
男3「分かった!任せろ!」
男1「お前はその男を見張れ。怪しい動きをしたら直ぐに息の根を止めろ。」
男2「おう。分かった。」
俺「それってかなり理不尽じゃないか?」
男2「黙れ!」
男1「俺はとにかく状況を確認して来る。皆んな気を付けろよ!」
皆んながそれぞれ行動を開始する。俺は男2と取り残される。
俺「なぁ、これ、外してくれない?」
男2「ふざけるな!何で自分でわざわざ敵を増やすんだ!」
俺「いやいや、もう1回言うけど。襲われたから迎撃したの。先に敵認定したのはそっちだろ?何で俺が悪いみたいに言われなきゃならないんだ?」
この部屋で2人だけになりしばらく経つ。
男2「皆んなどうした?大丈夫だよな?」
一応、ゲーム通りだと男2が感じているこの嫌な予感は当たる。この奇襲でシエルとロゼ以外の人間は全員死ぬ。シエルとロゼの2人は男3人の助けで無事に脱出するんだけど、それにしてもゲームの時よりゴタゴタしてるな。何かあったっけ?
俺「・・・・あ!」
男2「な、何だ!」
俺「俺の所為か!」
男2「やっぱりこの奇襲に関係してたのか!」
俺「いや、そうじゃねぇよ。・・・ん?そういう話か?」
ゲームだともう少し警戒していた。それが俺の登場で、今日はこれ以上の騒ぎは起きないと全員が思ったんだ。俺が囮の役割を果たし、メインイベントのこの奇襲が無警戒で起きた。
このイベント、サポートキャラとして仲間の盗賊がシエルとロゼを助けながらこのアジトを脱出させる。しかも攻めて来た騎士達は、姫であるロゼ以外は必要無いって事で皆殺しスタイルで動く。要するに今、こうして拘束されてる俺も殺される可能性があるって話だ。
俺「なぁ、もう良いだろ?この手枷を外せよ!」
男2「駄目だと言っているだろ!大人しくしろ!」
俺「大人しくしてる場合じゃないって!このままだとマジでヤバいの!」
男2「そんな話!誰が・・・!はっ!」
会話の途中で扉が勢い良く開く。男2も誰だこいつって顔をする。ただ、思い出した俺はこいつが何処の所属か知っている。第6騎士団。皇帝と敵対している旧貴族派閥の連中だ。
騎士1「姫は?いたか?」
騎士2「いや、害獣が2匹いるだけだ。」
害獣とは酷い。
男2「う、動くな!こいつがどうなっても良いのか!」
騎士2「好きにしろ。」
男2「な、何?」
俺「俺の知らない所で俺の命を勝手に扱うなよ。俺だって生きてるよ。」
騎士2「貴様など知らん。」
俺「でしょうね。」
男2「黙れ!お、お前等!俺を無視するんじゃない!」
騎士2「もう話は終わった。そして貴様等の命運もな。」
俺「勝手に終わらせるなっての!俺はまだ死にたく無い!」
男2「お前もう黙れ!話が進まないだろ!」
俺「あいつ、あんたと話す気は無いみたいよ?」
騎士はナイフを抜く。やる気、満々だ。
男2「くそっ!」
騎士2「もう殺して良いな。」
騎士1「ああ。姫以外は要らない。目撃者を残す訳にも行かないからな。我々は姫を探す。手早く済ませてお前も合流しろ。」
騎士2「分かった。」
男2「お前等!ふざけるな!まだ話は終わってないぞ!」
俺「だから、あいつ等お前の話は聞かないって!早くこの手枷を外せよ!」
男2「五月蝿い!お前は黙れ!お・・・!」
俺「あ!チッ!」
胸元にナイフが刺さり男2が倒れる。振り向くと既に騎士2以外の姿は無い。
騎士2「猿共が!騒がしい!死ぬ事は既に確定している。大人しく待つのが礼儀だろう。我が剣の錆びにする価値も無い。」
俺「フッ、直接仕掛ける根性も無いのによく吠えるな。」
騎士2「何だと!」
男と同じくナイフで遠距離ってなると厄介だ。挑発したお陰か片手剣を手に騎士2が近付く。
俺「おいおい、手枷で動きが制限されてる上に丸腰の俺をそのまま殺すってのはどうなんだ?」
騎士2「フンッ。気にするな元より貴様の様な猿に人権等、存在しない。こうして直接、私が始末する栄誉を賜るんだ。それを誇りにあの世に逝け。」
俺「一体それの何処が"誇れる"事なんだよ?」
騎士2が俺を射程距離に捉え1歩踏み込み、俺に向かって突きを放つ。
俺は相変わらず手枷を嵌められている。この体勢でどう対処するのか。そう考えた瞬間、昔に見た時代劇を思い出す。俺はタイミングを見極め、片手剣を白刃取りで受け止めた。
騎士2「な、何だとぉ!」
俺「良し!止めたぁ!」
何とか出来た。でも俺が思い出した技はこの後だ。
騎士2「チッ!・・・うおぉぉ!」
俺「おりゃ!」
騎士2が改めて剣を押し込みに来る。俺は騎士2の重心移動に合わせ、右脚を退き身体を半身にする。剣を受け止めたまま腕を引き、右脇に引き込む形で剣を引っ張る。
騎士2「な!くそっ!」
流石は騎士だ。引き摺り込まれると判断し、直ぐに剣を手放す。そして、距離を取る為に素早く跳び退いた。ただ、俺が狙ったのはこの状況だった。
俺は剣を持ったままの手を反転させ、跳び退き空中に浮いた騎士の喉へ目掛け剣を投げ返す。
騎士2「はぁ?ふぐっ!がはぁ!」
騎士は着地すると血を吐きながら倒れる。
俺「危ねぇ。この状態で出来る技があって良かった。とは言えドラマのだから成功するかは五分五分だったけど。はぁ、だから手枷を外せって言ったろ。・・・鍵、鍵。」
俺は手枷の鍵を見つけ外す。不可抗力だが、俺の所為でシナリオが変更になったなら挽回するしか無い。
俺「姫、探すか。」
俺はここからガッツリとメインシナリオに介入する事になった。
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