血の粛清
アルフラム「フッ、何だぁ?お前達?・・・エカルト、そんなに引き連れてどうした?」
エカルト「アルフラム3世。玉座から降りろ。」
アルフラム「何?」
エカルト「後は私が引き継ぐ。」
アルフラム「はっ!生意気な。・・・貴様の差し金だな?宰相!」
宰相「フフッ、滅相も無い。殿下は国を想い自ら立ち上がったのです。」
エカルトは剣を抜くと、真っ直ぐ父であるアルフラムへと近付いて行く。
アルフラム「フン!まさか、ここまでとは。真面目なのも大概にしろ!」
エカルト「何が言いたい。」
アルフラム「馬鹿者め!この後、何が起きるか分かっているのか!」
エカルトはアルフラムへ顔を近付ける。
エカルト「分かっているさ。だから、後は"任せろ"と言っている。」
アルフラムは考える。そしてハッとなりエカルトを見つめた。エカルトの強い意志を感じると、何故か自然と覚悟が決まる。
アルフラム「あはははっ!良いだろう!やってみろ。・・・"任せる"ぞ。」
エカルト「ええ。・・・お別れです。父上。」
エカルトは父、アルフラムの心臓を一突きにする。そしてエカルトは、宰相を始め7人の上位貴族達が見守る中で玉座へ座る。
エカルト「はぁ、漸くだ。」
宰相「ええ、そうですな。」
宰相は心の中で笑う。この愚かな皇子のお陰で漸く天下が取れたと。革命は成され、これからは自分達が全てを享受する番だ。そう考えていた。
エカルト「これで漸く・・・貴様の首を刎ねる事が出来る。」
宰相「へ?」
エカルトが顎を動かすと、入り口の前にいる兵士は扉を開ける。扉が開かれると兵士達が雪崩れ込み、直ぐに宰相達を取り押さえて行く。
宰相「な、何っ!どういう事だ!えぇい!触るな!殿下っ!一体何をしているのですか!」
エカルト「分からないか?ここまで来れば、貴様達は用済みだ。」
宰相「ふざけるな!我々無しでどうやって国を動かすのだ!貴様だけで何が出来る!」
エカルト「無論。私だけではこの国を護れん。だから協力者を集めたのだ。」
宰相「何だと!」
エカルトの合図で今度は身なりの良い者達が謁見の間へ入って来る。
宰相「お前は!」
エカルト「紹介しよう。現時点を持って新宰相として就任するフォルカス・ルグスだ。」
フォルカス「お久しぶりですね。父上。」
宰相「馬鹿な!愚かにも程がある!何の教育も受けていない者に務まるか!それに真面目過ぎる!他国の喰い物にされるぞ!」
フォルカス「ご安心下さい、父上。既に陛下より必要な事は賜っております。それに世の中は綺麗事で済まないと、誰よりも父上から学んでいます。」
宰相「貴様!・・・だが、儂には長男がいる!儂を排除してもあいつが黙ってはいないぞ!」
エカルト「フッ、心配には及ばん。貴様の阿保息子ならば先日、私が直々にあの世へ送った。」
宰相「ふ、ふざけるなぁ!こんな事をして!どうなるか分かっているのか!」
エカルト「全ては想定内だ。安心して逝くが良い。それに他の者の子息達も既に手は打ってある。」
宰相「ぐっ!この小僧ぉぉ!」
伯爵「へ、陛下!」
エカルト「何だ?」
拘束されている1人の貴族が堪らず話し掛ける。
伯爵「わ、私の所は息子しかおりませぬ。息子は?息子はどうなったのです?」
エカルト「皆、一律に退場して貰った。」
伯爵「そ、そんなぁ!我が一族はお終いだぁ!」
エカルト「嘆くな。後継ぎならば見つけてある。」
伯爵「え?」
エカルト「後ろだ。」
伯爵「はぁ?お前は、アシュリー!何故、ここにいる!」
伯爵令嬢「お父様。お久しぶりです。スレート伯爵家は今後、私が引き継ぎます。」
伯爵「馬鹿な!お前は女だぞ!・・・陛下!この娘は私の次女です!」
エカルト「知っている。」
伯爵「女性で伯爵など聞いた事がありません!」
エカルト「だが、貴様より優秀だ。何より民を想っている。貴様が何と言おうとこの決定は覆らん。」
伯爵「ああ、そんな。」
エカルト「皆の者!時間だ!剣を待て!」
宰相「何をする気だ!」
フォルカス「我等は陛下への忠誠を示す為、貴様等を処刑する。」
宰相「何だと!」
全員が剣を構え、拘束された貴族達は逃れようと暴れる。
宰相「待て!止めろ!お前は騙されているんだ!忠誠の証と言うならこんな事をする必要は無い筈だ!」
フォルカス「陛下は、ご自分の父君と我等の兄達を自らの手で処刑する事により覚悟を示して下さいました。今度は我等の覚悟を示す時なのです。」
宰相「止めろぉ!」
エカルト「やれ。」
全員がそれぞれ、自分の父親の心臓へ剣を突き立てる。
エカルト「大丈夫か?」
フォルカス「ええ。これで国を護る事が出来ますね。陛下。」
エカルト「ああ。・・・・皆、聞いてくれ。今日、我等は同じ罪を犯した。それはある意味では、恥ずべき事だろう。しかし、私は後悔などしない。これからの帝国を想うならばこの程度、痛痒にならない。だが、これは私の意見だ。私の考えの為にお前達が罪を犯した。それについてこの場で謝罪する。済まなかった。」
その場にいた者達全員が動揺する。
フォルカス「顔を上げて下さい。我等も皆、同じ考えです。」
エカルトが1人1人と目を合わせると皆が頷く。
エカルト「ありがとう。諸君。我等は同じ日に同じ罪を背負いし同志、兄弟だ。そして共犯者だ。・・・・皆!この国の為、私に付いて来い!」
フォルカス「はっ!」
その場の全員が膝を突き、頭を下げる。
男「そうして現政権が誕生したって訳よ。」
俺「はぁ、何か壮大なドラマって感じ。」
男「は?どらま?」
俺「いや、芝居掛かってるって話さ。」
男「ふ〜ん。でもあの場にいた全員が真剣に国を想ってるって感じたぞ?皇帝陛下なんて格好良かったぜ。」
俺「へぇ。やっぱりあんたもその革命の時、現場にいたのか。」
男「え?・・な、何で?」
俺「あんたの話し方、感想になってる。その場にいたって事だろ?自分で見てなきゃそんな話し方にはならないと思うけど?」
男「いやいや、知り合いから聞いたんだよ。」
そんな場面に立ち会う事が出来る人間。かなり特殊だろう。そんなのと知り合いって、どんな確率だよ。
男「そう言えば、お前さんが捕まった理由ってのはすれ違った女の子達が原因だろ?何処に行ったんだ?」
俺「何で俺に聞く?」
男「え?え〜っと、何となく?」
エカルトの半生を一通り聞き終え、色々と気になる事が出て来た。そもそもこのクーデターの話を知らない。まぁ、俺の本体がまともに聞いて無かった可能性もある。理由は分からないけど、初出し情報満載だった。それにもう1つ気になった事がある。隣りの男だ。さっきから声に聞き覚えがあった。そう、こいつは主人公達のパーティに入るメインキャラの1人。帝国騎士団の5番隊隊長、ストラス・ラット。帝国騎士団1番隊隊長にして軍部総司令官、リード・ハラスの親友でもある。
ただ、俺が気にしているのはそこじゃない。このストラス・ラット、主人公達のパーティへ入った目的は姫さんを攫う事だ。結果、クリスが大怪我をしてその大事な姫さんも命を落とす。
ゲームでは姫さんの悲劇後、王国との戦争が直ぐに起きる。そこからは一気にエンディングに向かうから結局、騎士団が姫さんを狙った理由は分からない。
攫って何かに利用するのか?それとも彼女の死そのものが必要だったのか?情報を引き出したいけど、そんなに簡単では無いだろう。それ所か逆に情報を取られる可能性もある。これ以上は話さない方が良いかもな。
となると俺もそろそろ外に出る事を考えるか。・・・・どうしよう?
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