No.5 薄明穹

 目次

 薄明穹とは

 市民薄明

 航海薄明

 天文薄明

 薄明と薄暮の違い

 マジックアワー

 ブルーアワー

 薄明が観測できる理由


 ■【薄明穹とは】

 薄明穹はくめいきゅうとは、宮沢賢治の作品に頻出する言葉です。

 薄明とは太陽が地平線の下にあり、直接は見えずとも部分的に空を照らしている時間帯です。穹とは深く高い空という意味です。

 薄明のタイプは3種類あり、太陽の中心が地平線の下にある角度によって異なります。


 ・市民薄明(civil twilight):0度〜6度

 ・航海薄明(nautical twilight):6度〜12度

 ・天文薄明(astronomical twilight):12度〜18度以上


 天文薄明の間の時間帯は、「夜」または「真っ暗間」と呼ばれます。

 太陽が地平線の上にあるほど明るく、地平線の下にあるほど暗くなります。

 薄明穹とは、これらの時間帯の空を表現する際に使われます。

 また、日没間際の太陽が放出する光が帯のように広がって見える現象を、薄明光線と呼びます。


 ■【市民薄明】

 市民薄明の時間帯が空が最も明るいです。一般的な夕暮れの時間帯が市民薄明です。日の出の直前または日没の直後、太陽が地平線のすぐ下にあるときに始まります。

 この間に地平線はよく見えるはずで、最も明るい星と惑星だけが見えます。

 日没直後の空はとても明るく、色鮮やかです。

 日没直後、だいたい30分間は市民薄明を観測できます。


 ■【航海薄明】

 航海薄明の時間帯は、地平線を区別するのが困難になります。元々の語源は、船員が星を使っていた航海時代に由来しています。

 航海薄明時には多くの星が見え、星の位置に合わせて自分のいる位置を特定することが出来ます。空はまだ太陽の残光がありますが、ほとんど沈んだ状態です。


 ■【天文薄明】

 暗闇がほぼ完成して、地平線が識別できなくなる時間帯です。天文薄明では天の川が現れ始め、天体観測に最適です。月が空を照らさない限り、最も暗い星や惑星を肉眼で観察することができます。ただし、銀河、星雲、球状星団の観測には、太陽が地平線の下に18度以上ある場合、完全な暗闇となります。

 日没後1時間後の時間帯が天文薄明です。


 ■【薄明と薄暮の違い】

 薄暮または払暁ふつぎょう(明け方)は、太陽の中心が、地平線の下の、ある正確な特定の地点にあるときに発生します。例えば、太陽が地平線からちょうど18度下にある時は天文薄暮(または明け方)と呼ばれますが、12度から18度までの期間は天文薄明です。


 ・地平線0度:日没または日の出

 ・地平線6度:市民薄暮または市民明け方

 ・地平線12度:航海薄暮または航海明け方

 ・地平線18度:天文明け方


 ■【マジックアワー】

 マジックアワーとは日没後、日の出前に数十分だけ観測できる薄明の時間帯をのことです。光源となる太陽からの光線が日中より赤く、淡い状態となり、暖かく、金色に輝いて見える状態です。空全体がオレンジ色に覆われます。

 一般的にはマジックアワーとは、太陽が地平線から0度から6度の間にある期間のことを言います。しかし実際の正確なタイミングは日光の量と性質によって異なります。


 ■【ブルーアワー】

 ブルーアワーとは太陽が地平線の下に沈み、残りの太陽光が青色に変わる時間帯です。空全体が深い青色に覆われます。

 ブルーアワーの時間帯は太陽が地平線下4度にあるときに始まり、8度で終わる市民薄明と航海薄明の両方の薄明と重なる時間帯です。観測する地域によっては、太陽が地平線から4度~6度下にある市民薄明の時間帯のみを指す場合もあります。


 ■【薄明が観測できる理由】

 日没後の空を見上げると、空は暗いのに高い雲だけが光って見えていることがあります。これは地球が丸いので、地上に太陽の光が届かない状態でも、高いところには日の光が届いているために見られる現象です。

 薄明の時間帯では、太陽は地平線下にあるので太陽の姿を直接見ることはできません。しかし頭上を眺めてみればまだ空には太陽の光が当たっています。

 太陽の光は地球大気によって散乱されます。これをレイリー散乱と言います。散乱された光は四方八方に向かうので、その一部が地上へも降り注ぎ、このためうっすらと明るい状態になるのです。


 薄明が継続する時間は季節によって変化します。夏至の頃は薄明の継続時間は長く、冬場は夏に比べると短めです。

 そして最も薄明の継続時間が短いのは春分・秋分の頃です。「秋の日はつるべ落とし」という言葉がありますが、秋は日没後に空が暗くなるのが早いのです。


 払暁、薄暮の空の色は刻々と変化します。一言に特定の色の名前でその空の色を表現することは出来ないくらいに千変万化です。

 ちなみに、様々に変化してとらえることの出来ない色の名として、「至極色しごくいろ」という言葉があります。極めて黒に近い深い赤紫色で、非常に高貴な色として知られ、天皇の装束にも至極色が使われます。


■【参考文献】

・star walk

https://starwalk.space/ja


・こよみのページ

https://koyomi8.com/index.php

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