早葬 side文花

第8話 花哉の死

 ──花哉が……死んだ? そんな馬鹿な。

 

 それを知らされたときに、いきなり信じることなど到底無理だった。もとから父さんに似てグレーがかった色のオーラを纏ったやつだったけど。


 そう、私には人の感情のオーラが見える。平々凡々な私が持っている唯一の特技だ。原理は⋯⋯知らない。


 とはいえ、弟が自分より早く死ぬのは、彼が不慮の事故──例えば交通事故とか──に遭ったときぐらいだろうと思っていた。それなのに家の中であっさり逝くなんて。


 母に連れられて、恐る恐る花哉の部屋に足を踏み入れる。ベッドに花哉が寝ている。その顔色は、生きているという希望を抱かせるほど──ではなく、明らかに悪かった。


 血の気がなく、疲れ切った表情でベッドに倒れこんでいる。というのが客観的な見方だろうが、気を失っているだけじゃないの? なんで死んでると言えるの? 


 そんな風に、言葉で現実と戦おうとする私がいた。

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