第2話 何だかちぐはぐな家族

 コン、コン、コン。


 「花哉、起きてる? 朝ごはんよ」


 いつの間にか二度寝していたのだろう。母さんが起こしにきた。ゆっくりと起き上がり、名残惜しいが掛け布団を畳む。何も考えずに、このまま寝ていたいのだが。


 ふと、ベッドの横のカレンダーを見ると、今日は二〇一三年五月一日であることを示していた。


「今行く」


 ドアを開けると、もう母さんはいなかった。


 食卓に向かうと、既に僕以外全員揃っていた。


 いつものようにぼんやりと考えごとをしている父さん。まあ、小説家ってなんか浮世離れしてるよな。というか、小説って、現実から逃げるためにあるんじゃ……?


 みんなのコップにお茶を注いでいる母さん。古びたエプロンから、彼女の年齢を感じてしまう。確か、もう五十代後半だった気が……。


 一人だけ無表情な姉さん。昔はもっと感情のままに生きていたのに、母さんから店主を継いでから急に、というかようやく大人になったようだ。まあ、姉さんが我儘だったのなんて、いつの話だよ、ってことではあるけどな。

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